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謎の人物と別れ、彼或いは彼女の言う通りに黒い蝶を追いかけて数分。確かに居住エリアにある学生寮へとたどり着く。たどり着いたタイミングで、黒い蝶はミコトの周りを1周したかと思うと、自分の役目は終わったと言わんばかりにゆらりと消えた。
結局あの人は何だったんだろう。そう考えるミコトに、いつもよりやや焦った声色で声が掛けられる。
「やっと見つけた。気付いたら居なくなってたし…どこに居たの、ミコト」
声の方に振り返ると、そこに居たのはレオンだった。ミコトの事を探し回ってくれたのだろう。やや汗が滴る彼の表情は、変わらず分かりづらいが、心配の色が仄かに見える。
「ちゃんと着いてきてって言ったのに、いつの間にか居なくなってて…心配したよ」
「ごめん、レオ…なんか気付いたら森にいて…」
「まぁいつも通り迷ってるんだろうとは思ってたんだけど…よく1人でここまで来れたね」
「あ、いや、1人じゃなくて、親切な知らない人が助けてくれたって言うか…」
「親切な知らない人?」
そう、と答えてからここに来るまでの経緯をざっと説明する。一通りの説明を聞いたレオンは、何か心当たりがあるのか、その人ってさ、と口を開いた。
「白髪で片方に眼鏡掛けてて、黒い服着て、片方の耳に変わった耳飾りしてた?」
「うん。もしかして知ってる人?」
「あー……うん、まぁ。今日の入学式見に来るって言ってたから、それでだろうとは思うけど…傍に他の人とかいた?」
「いや、誰も居なかったけど…」
ミコトがそう答えると、レオンは頭を抱える。何かまずいことでもあったのだろうか。そう聞くより前にレオンはため息を1つ零し、今までで見た事ないような表情を見せる。
「あの人はまた……小言を言われるこっちの身にもなれってんだ…」
「レオ…?」
「あー、いや、こっちの話だから気にしないでいいよ」
「え、あ、うん。わかった」
ぱ、といつもの無表情に近い表情に戻りながらそういうレオンに思わず頷く。
でも、それでもやっぱり1つ、思う。
「…昔みたいに、表情ちゃんと表に出るようになってきたんだね」
「え」
「さっきさ、今の表情と違ったから。幼馴染の私としては嬉しいなって」
「…僕、なんか表情出てた?」
「え、うん。出てたよ。こう、呆れと怒りと混ざってはいたけど」
「………そっか」
そう言うレオンの声はどこか嬉しそうな気もして。思わずミコトは笑いが零れる。
まだスクールの話が出るより前。突然、まるで感情を失ったかのように、表情1つ動かさなくなってしまったレオン。昔からよくあるのかと言われると、答えは否だ。幼少期の彼は、他の誰より表情豊かな子だった。何があったのか、その理由はミコトは未だに聞いていないし、本人も話そうとしないが、こうやって少しずつ、また表情を出してくれるようになったのは嬉しく思う。
「案内してくれたその人には、僕の方からお礼を伝えておくよ」
「ありがと」
「とりあえず、ミコトは部屋行って、荷物片付けてきなよ。待ってるから」
「あ、そうだ、買い物に行くんだったっけ。すぐ片付けてくる」
「焦らなくてもいいから、流石に部屋までで迷子にはならないでね」
「な、ならないよ!失礼だな!」
荷物を片付けたら、足りないものの買い出し。そうレオンと約束したのを思い出し、ミコトは今日から自分が住む部屋へと向かっていった。
無事に部屋にたどり着き、簡単に荷解きをしながらふと思い出す。
「そういえば…今日2人の入学式見に来るのって、2人の両親だけだってレナ言ってたような…?」
何度も会っている2人の両親を忘れるわけも無いし、当然わかるがあの案内してくれた人物とは別人である。急遽来れなくなったのだろうか。まぁ、いくら幼馴染とはいえ、他の家の事情に首を突っ込むのは野暮というものか。
そう思ったミコトは、それ以降特に思い返す訳でもなく、荷解きの作業を再開するのだった。
結局あの人は何だったんだろう。そう考えるミコトに、いつもよりやや焦った声色で声が掛けられる。
「やっと見つけた。気付いたら居なくなってたし…どこに居たの、ミコト」
声の方に振り返ると、そこに居たのはレオンだった。ミコトの事を探し回ってくれたのだろう。やや汗が滴る彼の表情は、変わらず分かりづらいが、心配の色が仄かに見える。
「ちゃんと着いてきてって言ったのに、いつの間にか居なくなってて…心配したよ」
「ごめん、レオ…なんか気付いたら森にいて…」
「まぁいつも通り迷ってるんだろうとは思ってたんだけど…よく1人でここまで来れたね」
「あ、いや、1人じゃなくて、親切な知らない人が助けてくれたって言うか…」
「親切な知らない人?」
そう、と答えてからここに来るまでの経緯をざっと説明する。一通りの説明を聞いたレオンは、何か心当たりがあるのか、その人ってさ、と口を開いた。
「白髪で片方に眼鏡掛けてて、黒い服着て、片方の耳に変わった耳飾りしてた?」
「うん。もしかして知ってる人?」
「あー……うん、まぁ。今日の入学式見に来るって言ってたから、それでだろうとは思うけど…傍に他の人とかいた?」
「いや、誰も居なかったけど…」
ミコトがそう答えると、レオンは頭を抱える。何かまずいことでもあったのだろうか。そう聞くより前にレオンはため息を1つ零し、今までで見た事ないような表情を見せる。
「あの人はまた……小言を言われるこっちの身にもなれってんだ…」
「レオ…?」
「あー、いや、こっちの話だから気にしないでいいよ」
「え、あ、うん。わかった」
ぱ、といつもの無表情に近い表情に戻りながらそういうレオンに思わず頷く。
でも、それでもやっぱり1つ、思う。
「…昔みたいに、表情ちゃんと表に出るようになってきたんだね」
「え」
「さっきさ、今の表情と違ったから。幼馴染の私としては嬉しいなって」
「…僕、なんか表情出てた?」
「え、うん。出てたよ。こう、呆れと怒りと混ざってはいたけど」
「………そっか」
そう言うレオンの声はどこか嬉しそうな気もして。思わずミコトは笑いが零れる。
まだスクールの話が出るより前。突然、まるで感情を失ったかのように、表情1つ動かさなくなってしまったレオン。昔からよくあるのかと言われると、答えは否だ。幼少期の彼は、他の誰より表情豊かな子だった。何があったのか、その理由はミコトは未だに聞いていないし、本人も話そうとしないが、こうやって少しずつ、また表情を出してくれるようになったのは嬉しく思う。
「案内してくれたその人には、僕の方からお礼を伝えておくよ」
「ありがと」
「とりあえず、ミコトは部屋行って、荷物片付けてきなよ。待ってるから」
「あ、そうだ、買い物に行くんだったっけ。すぐ片付けてくる」
「焦らなくてもいいから、流石に部屋までで迷子にはならないでね」
「な、ならないよ!失礼だな!」
荷物を片付けたら、足りないものの買い出し。そうレオンと約束したのを思い出し、ミコトは今日から自分が住む部屋へと向かっていった。
無事に部屋にたどり着き、簡単に荷解きをしながらふと思い出す。
「そういえば…今日2人の入学式見に来るのって、2人の両親だけだってレナ言ってたような…?」
何度も会っている2人の両親を忘れるわけも無いし、当然わかるがあの案内してくれた人物とは別人である。急遽来れなくなったのだろうか。まぁ、いくら幼馴染とはいえ、他の家の事情に首を突っ込むのは野暮というものか。
そう思ったミコトは、それ以降特に思い返す訳でもなく、荷解きの作業を再開するのだった。
