このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

1ページ

ピピピピピピっ!ピピピピピピっ!

けたたましいアラームの音が聞こえて、目を覚ました。音を鳴らし続けるそれを止めて、大きく伸びを1つ。そのまま何気なくカレンダーを見ると、今日の日付に大きく赤い丸と『入学式』の文字。傍には真新しい真っ白な制服が掛けられている。それを見て思い出す。

──そうだ、今日から学園生活が始まるんだ。

そのタイミングで部屋の扉がノックされ、エプロン姿の父さんが顔を覗かせた。

「ミコト?起きてるかな?」
「うん、起きてる。おはよう、父さん」
「おはよう。朝ご飯出来てるから、支度が出来たら降りておいで」
「分かった。着替えたら行く」

そう父さんに返答を返せば、焦らなくてもいいからね、と優しい言葉と共に戻っていった。私も私で、父さんに言った通り支度を済ませてから、ダイニングへと向かう。キッチンでは、父さんが朝食の準備をしていて、美味しそうな匂いがする。
私が幼い頃に母さんが亡くなり、男手ひとつで育ててくれた父さんは、だからこそなのか、少し過保護な部分がある。例えば、対人関係とか。誰か知らない人と会ったら、必ずなにかされなかった?ってすぐに聞いてきたりする。あと、どこのお家の子?とか。ちなみにこれは現在進行形である。
今日から始まる学園生活も、決まるまでに本当に色々あった。けど、最後はお互い納得のいく結果に収まっている。最初は学校に通えるか怪しかった程だったけど。いやぁ、説得に付き合って貰った幼馴染には感謝しなきゃな。
そんな事を思いつつ、父さんが作ってくれた朝食を食べる。そしてふと、さっきまで見ていたような夢の事を思い返した。何か変わった夢を見た気がするんだけど、どんな夢だったっけ?まぁ、夢を覚えてる事の方が割と珍しいし、そもそも夢は結局夢だ。正直気にするだけ無駄な気もしている。
でも、確かに変わった夢ではあったような気はするんだけど、悪い夢では無かった気もするんだよなぁ。寧ろあったかいとかの方があっている気がする。
そんな私の思考は父さんの淹れる特製コーヒーの匂いと、優しい声にかき消されたのだった。


「あ、おはよ、ミコトー」
「おはよ、レナ」

準備も終えて、入学式見に行くからね、という父さんの見送りを受けながら家を出ると、丁度幼馴染も出て来たようで。向かいの家のドアからひょっこりと顔を出した。
自分と同じ制服に身を包んだ彼女に挨拶を返しつつ、もう1人の幼馴染が居ない事に気がついた。

「あれ、レオは?」
「多分、先にマギアに行ったわ。今頃商業エリアじゃないかしら」
「商業エリアってことはもしかして仕事関係?大人気タレントは大変だね」

私には生まれた時から一緒な幼馴染が2人居る。
1人は今話しているレナ。レイナ・クラウンドール。クラウンドールの次期当主で、持ってる魔力も、魔術の腕もそこら辺の大人たちより多分上じゃないか、っていうくらい凄い。あと、すごい美人。私が男だったら惚れちゃうんじゃないかってくらい美人。普通だったら、周りの男の子から告白されたり、他の女の子とかから妬みとか貰ってても可笑しくないと思うけど、不思議とそういった事を聞かないのは、レナが誰にでも分け隔てなく接してくるからじゃないかな、と思う。
もう1人はレオ。レオン・クラウンドール。レナの弟で、多分この世界でレオの名前を知らない人は居ないんじゃないかってくらい有名なタレントでもある。小さい頃からタレントとして活躍してて、表情があまり変わらないけどイケメンなレオは、クールだなんだって言われて人気が高い。今じゃテレビや雑誌で見ない日は無いんじゃないか、ってくらい引っ張りだこだ。毎日忙しそうなのに、勉強も運動も卒なくこなす天才気質な面も持ってる。
そんな2人の自慢の幼馴染の説得のお陰で、私もスクールにこうやって通う事が出来るわけだったりする。父さんの中のクラウンドール家への信頼度合いが高すぎやしないかなんて思ったことは1度や2度ではない。

「朝早くに出ていったみたいだけど、戻ってこなかったし、多分学園で合流することになるわね」
「そっか…3人で一緒に行きたかったけど、仕事は仕方ないね。あ、そう言えば今日の新入生挨拶ってレオがするんだっけ?」
「そうよ。入学テストで唯一の筆記試験満点合格で首席入学。そりゃあ代表に選ばれるわよねー。我が弟ながら嫉妬しちゃう」

クスクスとそう言いながら笑うレナに私もつい笑ってしまう。
だってレナが本当に嫉妬してないって分かってるから。口では嫉妬するなんて言って、本当は逆で、自慢の弟って言いたいんだなって、分かってるから。
全く、昔から本当に仲が良い双子だ。

「でも、ミコトの言う通り、3人で一緒に行きたかったわよね。ミコトとレオは寮に入るわけだから、こうやって家から登校できるのなんて今日くらいだし」
「そうだね、今日くらい……って、レオも寮なんだ?てっきりレナと一緒で家からだと思ってたのに」
「寮の方が仕事的にも通いやすいからじゃない?」

詳しくは聞いてないけど、そういうレナは少し寂しそう。14年一緒に過ごしてきたわけだし、離れるのはやっぱり寂しいよね。私も寮に入る訳だし。

「あー…えっと、でもほら、休みの日とかは家に戻ったりしてもいい訳だし、学科は違うけどずっと離れてるって訳でもないから…」
「フフ、ミコトって、励ますの少し苦手よね」
「ゔっ……し、仕方ないじゃん。私あんまり2人以外と喋ったりとかしてないんだから。知ってるでしょ」
「ごめんごめん、拗ねないで〜ミコト」

つんつんと突きながらそういうレナにどうしようかな、なんて少し意地悪を返す。そうやって他愛のない会話を挟みつつ、私たちは入学先でもある学園都市『マギア』に繋がる転移門テレポートゲートに向かった。
私がこれから生活する学園都市『マギア』について、少し説明しようと思う。
周りを山や森に囲まれた都市国家で、中は4つの区分に分けられている。
1つはこれから通う事になる学園がある『学園エリア』。この学園都市において、1番広大なエリアでもある。学園自体は4年制の学園で、全校生徒は約4000人。他の学園や学校と違う特徴は同じ学年だからといって、全員が同い年だとは限らない、という点だろう。最低年齢こそ制限があれど、それ以上の制限がない。だからか、年々希望者が増えているらしい。
次に広いエリアは『居住エリア』。学生寮や教師寮のあるエリア。この学園都市の秩序を守る『警備隊』と呼ばれる組織の本部もここにあるし、警備隊に所属する人達の寮もあるんだとか。あと、他のエリアで生活してる人達の家とかも大抵はここにある。
そんなエリアより少し小さいのが『商業エリア』。生活に必要なものを揃えるためのお店があったり、それ以外にも娯楽関係やその他の多くのお店が並んでいる。有名な芸能事務所も何社かあるらしい。
そして最後に『ギルドエリア』。他と比べると小さなエリアで、ギルド活動をしてる人達が主に活動拠点に使っているエリア、らしい。なんでギルドが、って思うけど、この都市は元々水没国家で暮らしていた人達の避難先として作られた都市らしく、学園が大きくなることは想定外だったとかなんとか。それの名残りなのか、学園都市『マギア』の転移門はこのエリアに繋がってる。
転移門を潜った私たちはそのまま学園エリア行きの無人の路面電車に乗って学園エリアに向かっていく。
数分程して着いた学園エリアは、後から広げられたエリアとは思えない程大きく、そしてマンモス校らしく賑わっていた。というか、普通に想像以上に広い。めちゃくちゃ広い。

「新入生のみなさーん!各自クラスを確認して教室に入って下さいねー!」

拡声機能を持つ魔具を使ってそう声を掛ける先生達。傍にはクラスが記されているらしい掲示板と、確認する為に集まっている生徒達。もちろん私とレナもそれぞれクラスを確認をしに向かう。

「えっと…ミコト……ミコト…」

私が選択した『一般魔術科』は他の科と比べて人数が倍以上に多い。というより、入学生の約半数がこの科に入る。その為、自分の名前を探すのさえ苦労するのだ。

「あ、あった。Bクラス……って、え?」

漸くみつけた自分の名前と同じクラスに、数少ない知っている名前が並んでいる。なんで、そう思って隣を見たけど、どうやら彼女も初知りみたいで。

「…レオが、魔術科…?」

隣で一緒に見てたレナも呆然としていた。

「レナ、聞いてなかったの?」
「…え、あ、うん。知らなかったわ…」

ぱちくりとさせるレナは本当に知らなかったみたい。なんで、って思ったけどまぁ、全部教えあってるってわけじゃないってこと…かな。
一先ずお互いクラスも確認したし、入学式もあるからって事で、それぞれのクラスへ向かう。
教室に入ると半分くらいの生徒が既に来ているみたいで、賑やかだった。黒板パネルには席は自由と書かれていて、実際皆自由に座ってるみたい。何処にしようか、そう思いながらクラスを見渡してると後ろから声をかけられる。

「おはよう、ミコト」

振り返ると、そこに居たのは私がよく知るもう1人の幼馴染。

「おはよ、レオ」
「同じクラスだね。よろしく」
「うん、よろしく」

有名人なレオが来たことで周りが一層ザワついてるけど、本人はお構い無しに席どこにするか決めた?なんて私に話しかけてくる。まだ、と答えればあそこら辺にしようと窓際の後ろの方を指さした。

「レオも魔術科だったんだ」
「そう。教えなかったっけ?」
「聞いてない。てっきりレナと一緒で特魔科だと思ってたんだけど」

レオが指定した窓際の席に向かいながらそう言うと、相も変わらず冷静な声でレオは答えた。

「特魔科より魔術科の方が僕に向いてると思ったから。それに…」
「それに?」
「…いや、なんでもない」

え、何?……あ、もしかして。

「レナと喧嘩でもした?」
「してない」
「でもレナもクラス表見て初めて知った顔してたよ」
「アイツには言ってないから」

変わらず無表情に近い顔でそう言うレオ。けど、なんか、ちょっとだけ怒ってるような、悲しんでるような…そんな気もする。どうしたんだろ。
そういえば朝だって、レナはレオがいつ出ていったのか知らなかったみたいだし。何かあったのだろうか。昔から仲良しの双子なのに。

「僕はミコトが魔術科に居ることの方が驚きだけど。てっきり技術科だと思ってた」
「あー…父さんの仕事を手伝うって面では確かに技術科でもよかったんだけど…」
「けど?」
「父さん、偶に見てて危なっかしい時あるから…そういう面でもサポートできるように魔術科にしたんだ」
「あぁ…確かにおじさん、色々と危なっかしい時があるね。それを考えたら魔術科が1番か」

そう、父さんは優しくて仕事もできるし、大好きで尊敬する人なんだけど、色々危なっかしい部分も多い。本当に。いつか絶対詐欺にあうか騙される気がするくらい。主に金銭面関係で。そんな父さんを守る為にも、選択科目が1番多い魔術科に入ったわけで。
…というか、何か話題をはぐらかされた気もするんだけど。まぁいいか。仲が良いとはいえ、姉弟ゲンカも割としょっちゅうある2人だし。何とかなる、だろう。多分。わかんないけど。

「あ、そうだ。新入生代表挨拶するんだよね。頑張って」
「…まぁ、頑張るよ」
「レオ、昔からあんまりそういうのやりたがらないタイプだもんね」
「分かってるなら今から変わってもいいんだよ」
「無理」

そんな話をしていると、いつの間にか時間が近付いていたみたいで。入ってきた先生の指示に従いながら、入学式に望むのだった。
1/9ページ
スキ