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騒動があった次の日、学園内はその騒動の話題でいっぱいだった。それはミコトのクラスでもあるBクラスも例外ではなく。朝から誰もがその話題を話していた。
「えぇ!?昨日そんな騒動があったの!!??見たかった〜!!」
「あ、そっか。イクスとラメは昨日家の用事で居なかったから知らなかったわね」
「そうだよぅ……もぉ〜〜、そんなビックリ面白騒動があるって知ってたら、つまんない用事蹴ってこっち来てたのに…」
「ね〜!」
数少ない、昨日の騒動を知らないイクスとラメリアが心底悔しそうにそう言う。
「しかしねぇ、学園長とレオン君が知り合いってだけでもびっくり驚きなのに、そこに更にあの『黒薔薇庭園』まで知り合いってくれば、そりゃあこんなに騒ぎになるかぁ」
「しかも出てきたのはトップのスペードって…学園長の人脈の広さは知ってたけど、レオンくんの人脈の広さも凄いにゃあ…ミコトっちは知ってたの?」
「名前とかは知らなかったけど、何となくはね。学園長とスペードさんが知り合いなのはつい最近知ったけど…何度も助けてくれた人がスペードさんだっていうのは初めて知ったかな」
次の授業の準備をしながらそういうミコト。
何となく、助けてくれた人が普通では無いことは薄々気づいてはいたが、まさか本当にすごい人物だとは想定していなかった。
「ね、ね、それでスペードさんってどんな人だった?筋肉ムキムキ?大きかった?」
「出た、イっちゃんの強い=筋肉ムキムキ予想」
「だってだって、強さが目に見えるじゃない?」
「当たった試し一回もないじゃない、それ」
いつもと変わらず元気なイクスに思わず笑ってしまう。そんな期待をしている彼女にこれから事実を突きつけるのは酷かな、とミコトは思いつつも、気になっている様子が見て取れる為、教える事にする。
「私より背は小さかったよ。あと多分筋肉ムキムキではないと思う」
「ウソ!?ミコトっちよりちっちゃいのに強いの!!??」
「強かったわよ。あと、強面、とかではなく可愛いタイプの顔つきだったわね」
予想通りにショックを受けるイクスに、エトワールが更に追い討ちをかけるように言う。イクスはぷるぷると震えながら、混乱を絵に描いたような表情になっていく。
「えっ……ミコトっちより小さくて、筋肉ムキムキじゃなくて、可愛いのに強い……?そんな人、この世に存在するの……?」
「してるじゃない」
「待って、可愛い?可愛いって言った?」
「ラメも落ち着いて」
いつも通り賑やかな3人を見ながら、授業の準備を終えるミコト。そんな3人に、呼び出しを受けて離れていたミュゼリネが笑いながら声を掛ける。
「何の話をしていたの、みんな?」
「おかえりミュゼさん。呼び出しはもういいの?」
「えぇ、まぁね。それで、なんの話で盛り上がってたの?」
「昨日の騒動よ。話を聞いたイクスとラメがそれぞれ別方向で気になりだしちゃってね」
「なるほどね。じゃあ、次の授業で解決するんじゃないかしら。次の授業の魔術科合同授業、新しい先生が担当するって、さっき先生達が話してたから」
ふふ、と笑いながら授業の準備を始めるミュゼリネ。それを聞いた2人は手早く準備を終わらせると、早く大講堂行こう!と3人を急かすように引っ張り出す。その勢いに押されつつ、彼女たちは大講堂へ向かった。
授業の開始を知らせるチャイムが鳴る。鳴り終わったあと、程なくして大講堂に入ってきたのは学園長であるマギアだった。予想外の人物の入室に驚いたのだろう、生徒たちはざわつき始める。そんなざわつきを気にもしない様子で、マギアは喋りだした。
「魔術科1年のみんな、集まっているね。よろしい」
どこか威圧感のあるような、この学園の最高権力者らしい堂々とした声に、ザワついていた生徒達は途端に静かになる。そんな様子にマギアは笑いながら、言葉を続けた。
「そう固く緊張しなくてもいいさ。皆、昨日の一件で本来この授業を受け持つ先生が居なくなってしまったことは知っているだろう。そこで私の方で、新たに先生を任命をした。まぁ、皆何となく察しているだろうし、あまり焦らすのも酷だろうから、手早く紹介しよう」
その言葉と共に、大講堂の扉が開く。入ってきたのは、白髪の小柄な人物。話題の中心である人物だった。
「今日からキミたち魔術科の合同授業を担当してもらう、スペードくんだ」
「アハハ、みんなよろしくねー」
再びざわつき始める生徒達。それはミコトの隣に座るラメリアも同じく。
「え、本当に可愛い!?ミコっちゃんとは違う可愛さがあるんだけど!!??ロリータ服とか着ないかなあの人!!??いや、パンク系でもいいかも!?」
「落ち着きなさい、ラメ。ミコトちゃんとミュゼちゃんが引いてるから」
「アハハ…」
周りとは多少違う反応ではあるが。傍にはいないが似たような反応をしているであろうイクスを想像して、乾いた笑みが零れる。
ザワつく生徒達を見ながら、マギアは楽しそうに笑うと、スペードに会話のバトンをパスする。
「私は今日はただ紹介をしに来ただけだからね。ここからはスペードくんに任せよう」
そう言って大講堂を出ていくマギア。パスを回されたスペードはアハハ、と1度笑うと、わざとらしく咳払いをする。そして、生徒達の方を見ると、口を開いた。
「まぁ、紹介にもあった通り、今日からこの授業の担当をするスペードだよ。先生なんてした事ないけど頑張るから、みんなよろしくね」
質問とかは授業が終わってから受け付けるよー。
呑気にそういうスペードにザワついていた生徒の声に笑い声が混ざる。マギアが入ってきた当初の緊張した空気が完全に無くなったことを確認したスペードは、ざわつきをそのままに授業を始めた。
「さて、内容は自由だけど、授業はやれって言われてるから、一先ず授業をするね。今日は、皆に自分の名前について、向き合って貰おうと思う」
そう言いながらスペードは、空中に向かって指をクルリと回す。すると、そこには幾つかの名前が文字として浮かび上がってくる。
「なんで名前?って思っただろうけど、名前には情報がつまってるからね。自身を伝えるための、一番の情報源となる」
いつの間にか静まり返った空間で、スペードは言葉を、授業を続ける。
「わかりやすいものとしてはまず、固有の名前だね。例えばボクの名前。スペードはボクそのものを指すわけだけど、スペードと聞いてみんな何を想像したかな?」
スペードのその言葉で生徒たちは思い思いに言葉を紡ぐ。それをスペードはうんうん、と頷きながら聞く。
「大抵はこう思うよね。黒薔薇庭園に所属してる強い奴。他にもダイヤとか、クラブとか、ハートとかも同じように思うだろう。実際、ボクの仲間はみんな優秀だからね。すっごく強い」
ドヤ顔でそう言いきったスペードに、生徒たちは笑いが零れる。ある程度笑いが落ち着いたところで、スペードは徐に口を開いた。
「ね?名前に情報があっただろう?因みに、ボクら以外にも固有の名前をもつ人物は何人か存在している。例えばここの学園長のマギアとかもそうだね。それから…」
そう話しながら空中に浮かぶ文字は、ある文字を刻む。
「アイーダ。この名前もまた、固有の名前で、ある女をさす名前だ。まぁ、この名前をもつ女は正しくは人間ではないんだけどね」
スペードはそう言って笑うと、その名前の人物について語り出す。
「アイーダ。運命に愛された女。神が造った人形の一体とされていて、世界のあらゆる瞬間を目撃するための目としての役割を持っている。皆が知ってるようなことだと、つい最近までやってた第5次大戦とか、ね。世界の歴史が動く瞬間を捉える神専用のカメラってところかな。そんな役割を持つたった1人の女が、アイーダという名の女だ。悪い奴ではないけど、元は人形として造られてるからねぇ、ちょっと変わり者でもあるよ」
「スペード先生は会ったことあるんですか?」
「あるよぉ。なんだったら会おうと思えばキミたちも会える。因みに超美人。うちのハートやミツキに負けず劣らずのいい女だよ」
さりげなく入ったスペードの自慢にざわつきと笑いが起こる。
「おっとごめんごめん、ボクは仲間の事が大好きでねー、何かと自慢したくなるんだよ」
生徒達と笑いつつも話を戻すね、といい、スペードは再び空中に向かってくるりと指を回す。すると、文字列は新たな文字を紡ぎ始めた。
「こんな感じで、固有の名前というものはより情報をくれる。でも、みんなの名前は違う。みんなの名前でまず1番に情報をくれるのは家名だ」
そう言うと、スペードは自身の目の前に半透明のパネルを表示させる。
「今のマギアは有名な家名の子も結構多いみたいだね。大国で有名なのは……この辺りかな」
そう言うと文字列は、いくつかの家名を並べ出した。
「例えばフレイル。これはアルベーヌで有名な家名の1つだね。アルベーヌの王族で、火の魔術を得意としている。それからコータス。これはヨドで1番名が知れてる家名だろう。魔術属性に歴代的には偏りはあるが、大抵は2属性以上の魔術を使う。決まった組み合わせは特にないみたいだけど、多い組み合わせは地と水、光と闇かな。それからラミエレナ。これははじまりの一族のうちの1つで、光の魔術の始まりと言われてる。実際、光の魔術に関しては世界でもトップクラスだろうね」
まじですっごいな、今の学園。
そう言いながら半透明のパネルを閉じたスペードは指をくるりと回す。文字列は指の動きに合わせて1周すると、パン、と弾けた。
「こんな感じで、家名もまた、ボクらに情報をくれる。じゃあ家名のない人は?分からない?そんなことないさ。名前が教えてくれる」
ニコ、と笑みを浮かべたスペードはそのまま言葉を続ける。
「家名がなくとも、有名になれば名前を聞いただけでどんな人かなんてすぐ想像できるからね。そういう面では、固有の名前と近い性質を持つことになるかな」
そういスペードの言葉に、生徒たちは成程といった納得の言葉をあげる。
「何より、キミたちの名前はキミたちのご両親が、家族が、大切に考えて付けてくれたものだ。名前には願いと思いが込められている。我が子の幸せを、健康を、とかね。産まれてきてくれたキミ達に『想い』を込める。そして想いは何れ、キミたちの歩む道の1つになる」
そう話すスペードは優しい顔で、生徒達をみる。
「だからこそ、ボクからの最初の課題は、自分の名前に向き合う事だ。名付けた本人からどうしてって直接聞いてもいいし、こうじゃないかな、って予想したものでもいい。やり方は自由だ。この1年の間に皆何かしらの成果を持ってくること。それがボクが出す最初の課題だよ」
その言葉と同時に、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。
「お、ちょうどよく終われたね。ボクは普段は第1会議室にいるから、何か気になることとかあったらそこにおいで。お喋りをしに来てもいいよ」
課題はちゃんとやるんだよー。パチリと綺麗にウィンクをしながら、スペードは大講堂を後にした。
「えぇ!?昨日そんな騒動があったの!!??見たかった〜!!」
「あ、そっか。イクスとラメは昨日家の用事で居なかったから知らなかったわね」
「そうだよぅ……もぉ〜〜、そんなビックリ面白騒動があるって知ってたら、つまんない用事蹴ってこっち来てたのに…」
「ね〜!」
数少ない、昨日の騒動を知らないイクスとラメリアが心底悔しそうにそう言う。
「しかしねぇ、学園長とレオン君が知り合いってだけでもびっくり驚きなのに、そこに更にあの『黒薔薇庭園』まで知り合いってくれば、そりゃあこんなに騒ぎになるかぁ」
「しかも出てきたのはトップのスペードって…学園長の人脈の広さは知ってたけど、レオンくんの人脈の広さも凄いにゃあ…ミコトっちは知ってたの?」
「名前とかは知らなかったけど、何となくはね。学園長とスペードさんが知り合いなのはつい最近知ったけど…何度も助けてくれた人がスペードさんだっていうのは初めて知ったかな」
次の授業の準備をしながらそういうミコト。
何となく、助けてくれた人が普通では無いことは薄々気づいてはいたが、まさか本当にすごい人物だとは想定していなかった。
「ね、ね、それでスペードさんってどんな人だった?筋肉ムキムキ?大きかった?」
「出た、イっちゃんの強い=筋肉ムキムキ予想」
「だってだって、強さが目に見えるじゃない?」
「当たった試し一回もないじゃない、それ」
いつもと変わらず元気なイクスに思わず笑ってしまう。そんな期待をしている彼女にこれから事実を突きつけるのは酷かな、とミコトは思いつつも、気になっている様子が見て取れる為、教える事にする。
「私より背は小さかったよ。あと多分筋肉ムキムキではないと思う」
「ウソ!?ミコトっちよりちっちゃいのに強いの!!??」
「強かったわよ。あと、強面、とかではなく可愛いタイプの顔つきだったわね」
予想通りにショックを受けるイクスに、エトワールが更に追い討ちをかけるように言う。イクスはぷるぷると震えながら、混乱を絵に描いたような表情になっていく。
「えっ……ミコトっちより小さくて、筋肉ムキムキじゃなくて、可愛いのに強い……?そんな人、この世に存在するの……?」
「してるじゃない」
「待って、可愛い?可愛いって言った?」
「ラメも落ち着いて」
いつも通り賑やかな3人を見ながら、授業の準備を終えるミコト。そんな3人に、呼び出しを受けて離れていたミュゼリネが笑いながら声を掛ける。
「何の話をしていたの、みんな?」
「おかえりミュゼさん。呼び出しはもういいの?」
「えぇ、まぁね。それで、なんの話で盛り上がってたの?」
「昨日の騒動よ。話を聞いたイクスとラメがそれぞれ別方向で気になりだしちゃってね」
「なるほどね。じゃあ、次の授業で解決するんじゃないかしら。次の授業の魔術科合同授業、新しい先生が担当するって、さっき先生達が話してたから」
ふふ、と笑いながら授業の準備を始めるミュゼリネ。それを聞いた2人は手早く準備を終わらせると、早く大講堂行こう!と3人を急かすように引っ張り出す。その勢いに押されつつ、彼女たちは大講堂へ向かった。
授業の開始を知らせるチャイムが鳴る。鳴り終わったあと、程なくして大講堂に入ってきたのは学園長であるマギアだった。予想外の人物の入室に驚いたのだろう、生徒たちはざわつき始める。そんなざわつきを気にもしない様子で、マギアは喋りだした。
「魔術科1年のみんな、集まっているね。よろしい」
どこか威圧感のあるような、この学園の最高権力者らしい堂々とした声に、ザワついていた生徒達は途端に静かになる。そんな様子にマギアは笑いながら、言葉を続けた。
「そう固く緊張しなくてもいいさ。皆、昨日の一件で本来この授業を受け持つ先生が居なくなってしまったことは知っているだろう。そこで私の方で、新たに先生を任命をした。まぁ、皆何となく察しているだろうし、あまり焦らすのも酷だろうから、手早く紹介しよう」
その言葉と共に、大講堂の扉が開く。入ってきたのは、白髪の小柄な人物。話題の中心である人物だった。
「今日からキミたち魔術科の合同授業を担当してもらう、スペードくんだ」
「アハハ、みんなよろしくねー」
再びざわつき始める生徒達。それはミコトの隣に座るラメリアも同じく。
「え、本当に可愛い!?ミコっちゃんとは違う可愛さがあるんだけど!!??ロリータ服とか着ないかなあの人!!??いや、パンク系でもいいかも!?」
「落ち着きなさい、ラメ。ミコトちゃんとミュゼちゃんが引いてるから」
「アハハ…」
周りとは多少違う反応ではあるが。傍にはいないが似たような反応をしているであろうイクスを想像して、乾いた笑みが零れる。
ザワつく生徒達を見ながら、マギアは楽しそうに笑うと、スペードに会話のバトンをパスする。
「私は今日はただ紹介をしに来ただけだからね。ここからはスペードくんに任せよう」
そう言って大講堂を出ていくマギア。パスを回されたスペードはアハハ、と1度笑うと、わざとらしく咳払いをする。そして、生徒達の方を見ると、口を開いた。
「まぁ、紹介にもあった通り、今日からこの授業の担当をするスペードだよ。先生なんてした事ないけど頑張るから、みんなよろしくね」
質問とかは授業が終わってから受け付けるよー。
呑気にそういうスペードにザワついていた生徒の声に笑い声が混ざる。マギアが入ってきた当初の緊張した空気が完全に無くなったことを確認したスペードは、ざわつきをそのままに授業を始めた。
「さて、内容は自由だけど、授業はやれって言われてるから、一先ず授業をするね。今日は、皆に自分の名前について、向き合って貰おうと思う」
そう言いながらスペードは、空中に向かって指をクルリと回す。すると、そこには幾つかの名前が文字として浮かび上がってくる。
「なんで名前?って思っただろうけど、名前には情報がつまってるからね。自身を伝えるための、一番の情報源となる」
いつの間にか静まり返った空間で、スペードは言葉を、授業を続ける。
「わかりやすいものとしてはまず、固有の名前だね。例えばボクの名前。スペードはボクそのものを指すわけだけど、スペードと聞いてみんな何を想像したかな?」
スペードのその言葉で生徒たちは思い思いに言葉を紡ぐ。それをスペードはうんうん、と頷きながら聞く。
「大抵はこう思うよね。黒薔薇庭園に所属してる強い奴。他にもダイヤとか、クラブとか、ハートとかも同じように思うだろう。実際、ボクの仲間はみんな優秀だからね。すっごく強い」
ドヤ顔でそう言いきったスペードに、生徒たちは笑いが零れる。ある程度笑いが落ち着いたところで、スペードは徐に口を開いた。
「ね?名前に情報があっただろう?因みに、ボクら以外にも固有の名前をもつ人物は何人か存在している。例えばここの学園長のマギアとかもそうだね。それから…」
そう話しながら空中に浮かぶ文字は、ある文字を刻む。
「アイーダ。この名前もまた、固有の名前で、ある女をさす名前だ。まぁ、この名前をもつ女は正しくは人間ではないんだけどね」
スペードはそう言って笑うと、その名前の人物について語り出す。
「アイーダ。運命に愛された女。神が造った人形の一体とされていて、世界のあらゆる瞬間を目撃するための目としての役割を持っている。皆が知ってるようなことだと、つい最近までやってた第5次大戦とか、ね。世界の歴史が動く瞬間を捉える神専用のカメラってところかな。そんな役割を持つたった1人の女が、アイーダという名の女だ。悪い奴ではないけど、元は人形として造られてるからねぇ、ちょっと変わり者でもあるよ」
「スペード先生は会ったことあるんですか?」
「あるよぉ。なんだったら会おうと思えばキミたちも会える。因みに超美人。うちのハートやミツキに負けず劣らずのいい女だよ」
さりげなく入ったスペードの自慢にざわつきと笑いが起こる。
「おっとごめんごめん、ボクは仲間の事が大好きでねー、何かと自慢したくなるんだよ」
生徒達と笑いつつも話を戻すね、といい、スペードは再び空中に向かってくるりと指を回す。すると、文字列は新たな文字を紡ぎ始めた。
「こんな感じで、固有の名前というものはより情報をくれる。でも、みんなの名前は違う。みんなの名前でまず1番に情報をくれるのは家名だ」
そう言うと、スペードは自身の目の前に半透明のパネルを表示させる。
「今のマギアは有名な家名の子も結構多いみたいだね。大国で有名なのは……この辺りかな」
そう言うと文字列は、いくつかの家名を並べ出した。
「例えばフレイル。これはアルベーヌで有名な家名の1つだね。アルベーヌの王族で、火の魔術を得意としている。それからコータス。これはヨドで1番名が知れてる家名だろう。魔術属性に歴代的には偏りはあるが、大抵は2属性以上の魔術を使う。決まった組み合わせは特にないみたいだけど、多い組み合わせは地と水、光と闇かな。それからラミエレナ。これははじまりの一族のうちの1つで、光の魔術の始まりと言われてる。実際、光の魔術に関しては世界でもトップクラスだろうね」
まじですっごいな、今の学園。
そう言いながら半透明のパネルを閉じたスペードは指をくるりと回す。文字列は指の動きに合わせて1周すると、パン、と弾けた。
「こんな感じで、家名もまた、ボクらに情報をくれる。じゃあ家名のない人は?分からない?そんなことないさ。名前が教えてくれる」
ニコ、と笑みを浮かべたスペードはそのまま言葉を続ける。
「家名がなくとも、有名になれば名前を聞いただけでどんな人かなんてすぐ想像できるからね。そういう面では、固有の名前と近い性質を持つことになるかな」
そういスペードの言葉に、生徒たちは成程といった納得の言葉をあげる。
「何より、キミたちの名前はキミたちのご両親が、家族が、大切に考えて付けてくれたものだ。名前には願いと思いが込められている。我が子の幸せを、健康を、とかね。産まれてきてくれたキミ達に『想い』を込める。そして想いは何れ、キミたちの歩む道の1つになる」
そう話すスペードは優しい顔で、生徒達をみる。
「だからこそ、ボクからの最初の課題は、自分の名前に向き合う事だ。名付けた本人からどうしてって直接聞いてもいいし、こうじゃないかな、って予想したものでもいい。やり方は自由だ。この1年の間に皆何かしらの成果を持ってくること。それがボクが出す最初の課題だよ」
その言葉と同時に、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。
「お、ちょうどよく終われたね。ボクは普段は第1会議室にいるから、何か気になることとかあったらそこにおいで。お喋りをしに来てもいいよ」
課題はちゃんとやるんだよー。パチリと綺麗にウィンクをしながら、スペードは大講堂を後にした。
