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君とはじめての夏

悠河ゆうが、着いたわよ。起きて」


母さんの声。そっか、俺寝ちゃってたのか。


大きく伸びをし、車から降りる。


____もうすぐで夏休みに入る頃、父さんの仕事の関係で、しばらく遠い田舎で暮らすことになった。


あまり詳しいことはわからなかったが、別にそれが大したわけでもなく、興味もないので、聞こうとはしなかった。


俺は目の前にある家を見上げた。


…古くさい。


大きな三角屋根の焦げ茶色の木でできた二階建ての家。


家の目の前には、大きな木が一本たっていた。


思わずため息が出た。今日からここに住むのかと思うとなんだか拍子抜けしてくる。


スマホを握っていた右手にぎゅっと力がこもった。


「アハハ。お前にはちょっと古くさかったか、悠河」


当たり前に背が追いつかないことを少しばかり気に留めながら、声がした方へと顔を向ける。


そうすると案の定、目を細め、微笑んだ父さんと目があった。


悠河「…まあ。いいんじゃない」


ぶっきらぼうにそう答えると父さんは、そのうち慣れるよ、とまた笑った。


「俺の古い友人が譲ってくれた別荘だ。立派だろう?感謝して、大切に使うんだぞ。」


ふーん、と興味なさそうな反応を見せると、後ろから段ボールを抱えた母さんがやって来た


「そうよ、悠河。それにしても本当、寛大なご友人さんよね。こんな素敵な別荘を譲ってくださるなんて…」


二人の話を聞き流しながら、辺りを見渡す。


…それにしても暑い。


そんなことを考えていると、また上から父さんの声がした。


「悠河、荷物は父さん達がやっておくから、その間そこら辺でも見て来ておいで」


ポン、と頭に手を乗せられた。


中学二年生にでもなってやめろよ、と思ったが、何気にそれを心地いいと感じてしまう自分がいて、その手を振り払うことはしなかった。


が、父さんの言葉には不満を感じた。


悠河「…やだ。暑いから俺家の中にいたい」


幼い子供みたく駄々をこねる様に反抗すると


「そうか。そんなこと言うなら父さん家の鍵開けない。それと荷物運びも手伝ってもらうことになるけど、それでもいいか?」


両手で腰を掴み、大人気ない笑顔で顔を覗き込まれた。


そんなの嫌に決まっている。だからわざとそう言ったんだろうけど。


けど父さんの言うことだ。本当に荷物運びをやらされる。だから俺は


悠河「…はぁ。行ってくる」


しょうがなく父さんの言うことを聞くことにした。スマホ片手に、俺は足を動かした。


「ったく…」


父さんは苦笑いをした。


「気をつけて行ってくるのよー」


悠河「あー」


俺は振り返らずに適当に言葉を返した。


木漏れ日を抜けるとムッと暑さが増した。眉間にシワが寄った。


家と同じ色の柵の向こう側は、この家に着くまで車の中で眠ってしまっていた為、どうなっているかは全く知らない。


家の入り口である坂を降りた。


悠河「うわ」


思わず声が出でしまった。
俺は顔を引きつらせた。


悠河「はは…ここ、本当に現代か?」


目に移ったのは、まさしく田舎の風景だった。
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