リーブ
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ケット・シーの機嫌が悪い、様に見える。
まぁ、実際あまり機嫌は良くない。それは私が一番良くわかっている。
その理由も、勿論知っている。
ケット・シーの視線の先はベッドで昼寝をしている(名前)さん…が抱きしめてる大きな鮫のぬいぐるみ。
尾ヒレを足の間に挟んで頭を抱きしめて眠っている(名前)さんの姿はとても可愛らしい、
私はそっとベッドの縁に腰を掛け頬を撫でる。
オフの時の(名前)さんは眠りが深い為これくらいじゃ起きたりはしない。
するとケット・シーが私の足元に来てベッドに飛び乗る、視線は以前として(名前)さんの腕の中にある鮫だ。
「なんでなん…」
「なんで、なんで僕やないんや………」
零す様に呟くケット・シーを横目にその気持ちが私には分かるようでわからない。
先日までこの鮫がいたところはケット・シーの定位置だった、この間買い物に出た時(名前)さんがこの鮫のぬいぐるみを見つけ嬉々として売場に掛けていったを見た私としては買ってあげる以外の選択肢は無かったし
実際買ってみたらこれ程までに愛用しているので買ってよかったと今でも思っている。
が、そうでないのがここに。
今迄家の中にいる時は片時も離れる事なくテレビを見ているときもお昼寝の時も両手で抱かれていたのはケット・シーだった。
それが今ではこれである。
「僕の事、どうでも良くなったんか…」
傍観に徹しているが傍から見て普通に面倒くさい。がある意味自分の半身とも言える彼にそれを言うとブーメランになりそうなので私は黙る。
少し可哀想に思えた私はケット・シーを抱えようと手を伸ばした時だった
ピリリリリリリリリリ
電子音が鳴り響く
寝ていた(名前)さんはパチッと目を覚まし起きていたんじゃないかと思うスピードで起き上がるとクローゼット前に掛けていた黒スーツのポケットへ手を突っ込み携帯を取り出す。
「はい。」
「あ"?寝てたのよ。うっさいわね」
「それで?任務?どこ?」
耳に携帯をはさみながら若干寝起き特有の喉が開いてない声で悪態をつきながら着替えを始める(名前)さん。
「は?そんなこと?」
はぁ、と溜め息を吐いたかと思うと片足突っ込んでいたスラックスから足を引き抜きハンガーに簡単に引っ掛ければ私とは反対側のベッドの縁に背を向けるように座る。
「あー、それなら私のデスクの引き出し。………ヤダ、勝手に違う所開けないでよ。右側の一番下の、そう。」
「ちょっと勝手にそこ以外開けないでよ」
「青の付箋をつけてる。それそれ」
「それがまとめたやつ。うん、役立つはずだよ」
「私は本当に行かなくていいのね?」
「そうよ、“せっかくの”休暇中に睡眠を貪ってたらこの電話で起こされたのよ。」
電話相手へなのはわかっているが(名前)さんの機嫌が少し悪い。言葉への棘がある。
感情をあまり隠さない様子から話し相手がレノ君だということは私でも容易に想像がついた。
「話はそれだけ?わかった、じゃあね。」
ピッと通話終了ボタンの音と共に少し携帯を操作してブーッとバイブレーションの音を一度させると静かになった携帯を枕の下に突っ込んだ。
再び睡眠を貪ろうと携帯を敷いた枕に頭を預けてこちらに目をやる(名前)さん、その目はもう眠そうだ。
「あれ、リーブさん…」
「お仕事、いいんですか?」
「ん、平気です…私いなくてもいいらしんで…」
半分目を閉じてる(名前)さんの頬を撫でれば気持ち良さそうに擦り寄りながら私の質問に答えてくれる。
そのまま手を周りにバシバシと何か探す様に回しているが捜し物は無いようで寂しそうにその腕はダランと身体の上に落ち着いた、すると何を探してるのか分かったケット・シーがそっと…とても悔しそうに鮫のぬいぐるみを(名前)さんの手に添える。
「んっ…ち、がう。」
そう言いながらも鮫を抱きしめつつ閉じかけてた目を開けケット・シーを捉えると鮫を左腕に絡め、少し仰向けになり両手を広げて右腕側の空間を見せる。
「んぅ………おいで?」
「ええ、の…??」
おずおずと近寄るケット・シーに有無を言わせず腕を引きその懐へと抱え込まれる。
「うわぁ!」
「んー、ケット・シーかわいいねぇ」
眠さのあまり若干の舌足らずでそう言いながらケット・シーの頭を撫でながら額にキスをする。…羨ましい。
「(名前)はん、僕に飽きたんやないの…?」
「んー?何言ってんの?ケット・シーは変な子だねぇ」
「だって、僕やないぬいぐるみと寝てるし…」
さながら彼女に振られたヒモ男のような発言である。
「んぅー別にこの子はケット・シーの代わりなんじゃなくて可愛いから連れて帰ってきただけだしぃ」
「え、あ…そっかぁ」
「そうそう」
「そっか、うん、そっかぁ…へへ」
何か納得したのかケット・シーは頭をぐりぐりと(名前)さんの胸に頭をこすりつけたら(名前)さんも眠そうに「そうだよぉ」と抱きしめる。
そしてもう目は殆ど閉じられた状態で(名前)さんは言う
「それで、リーブさんは??」
「え?」
急に話を振られらとは思ってなかった私は気の抜けた声が出る
「背中ぁ、寂しいなぁ」
(名前)さんの言わんとする欲求を叶える為私は彼女の背中に周りケット・シーや鮫のぬいぐるみごとぎゅっと抱きしめる。
首を少し後ろに回した(名前)さんの目尻と頬と唇の端にキスをすれば薄っすらと開かれた瞳が私を捉えて再び瞼が下りる。そこで唇に口づけをすれば嬉しそうに口元を緩める(名前)さん
「へへ、幸せぇ…………んぅ…」
その次の瞬間にはすぅ、と寝息が聞こえて来た。
(名前)さん越しに見たケット・シーは以前として嬉しそうに(名前)さんの懐にいた。
携帯はその後鳴らなかった。
─────────────────
「え、携帯?はい。電源切ってましたから」
「電源切ったらダメですよね?!」
「だって安眠妨害でしたし」
「いや、だからって…」
「休みの日は仕事しない。オンとオフを切り替えるのがプロだぞ、と。」
「受け売りですか?」
「いえ、それ分かっててアイツ電話かけてきたので」
「急用だったんですよ」
「んー、微妙なラインの話でしたけど。それに」
「それに?」
「夜に電話鳴った事、ないでしょう?」
「え…………あ、」
「ふふ、皆知ってます。私のオフは携帯繋がらない。って」
「それでいいんですか?」
「いいっていうか、残業は退勤前に言ってくれ。って言ってます」
「………」
「昔は勿論繋がってたんですよ?でも今は、リーブさんとの時間の邪魔されたくないので。」
「(名前)さん、」
「それにかかってきそうだなぁ。って時はちゃんと電源入れてます。そこは弁えてます」
「そうですか、」
「はい……リーブさん」
「????」
「夜は、長いです」
「…そうですね」
「はい、んっ…」