リーブ
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“今日は夜に予定があるので夕飯は大丈夫です。”
簡潔に綴られたメールを確認して私は画面を閉じた。
そういう事なら今日はどこかに食べに行こうか、そういえば五番街の方に美味しい店が出来たとレノとルードがこの間話していた。
ふむ…そうと決まれば今日はさっさと仕事を終えよう。手元にある資料を纏めて先日の報告書を製作してツォンさんに提出、………あ、この製作資料の提出先都市開発部だ。
別に何、と言うわけではないけど多分彼の事だからこう言う会議にも顔出してたりするかもしれない、もしかしたらこの資料を目にするかもしれない。なんて考えて少しだけこの憂鬱な数値と報告文書の制作にやる気が出る私はつくづく現金だ。
ーーー
「根詰め過ぎだぞ、と」
コン、とデスクに置かれたコーヒー缶の手を辿る様に見上げればそこには赤髪の同僚。
「レノ」
「もう夕方だぜ。昼休み終わってからずっとPCに張り付いてルードが心配してたぞ」
「え、そんなに経ってる?」
ディスプレイ右下に記された時間はかれこれ4時間程経過していた。
「他部署に持ってくもんあるならそろそろいけよ、と」
「なんであんたがそんなこと知ってるの」
「主任が言ってた。」
「何を?」
「都市開発への資料、まとめるだけでいいのに(名前)はまだ手をかけてるのか。て」
「いや、別に都市開発部への資料だから手をかけてたわけじゃなくてツォンさんへの報告書とかもやってたからで…!」
バレていないと思っていた自分の行動への恥ずかしさ半分、報告書製作に時間がかかっていた事実半分。
だけどつい口から出てくる言い訳がましい言葉は弁解の意味をなさず“そうだ”と自白しているようなもの、そんな私の言葉を聞きながらニヤニヤして眺めるレノの…玩具を見つけた様な口元が酷く私の癇に障ったので置いてた分厚いバインダーで顔を一発叩いて私は作った資料と報告書を手にオフィスを出た。
地下のオフィスから30階にある都市開発部オフィス迄はエレベーターで数分、封を閉じてしっかりと形式張った形にした書類を胸に抱えて30階で降りる。
彼はここよりもまだ上の統括オフィスに基本居るからここで会えるなんて私は思ってもないからそのまま依頼通りのオフィスに入って担当の子を呼ぶ。
柔らかい栗毛色の髪をキレイな内巻きのボブで整えカジュアル目ながらフェミニンなアイメイクとほんのりピンクのチークにグロスをきれいに載せた唇、纏うスーツもスプリング系カラーの淡いスーツがとても良く似合う彼女は私の大のお気に入りだ。
あぁ、可愛い。そんな邪な感情を懐きながら顔には出さずに書類を手渡せば柔らかな笑顔を私にくれる。タークスの黒スーツを纏う私にも別け隔てのないこの笑顔がとても癒やしだ。
「お疲れ様です!資料ありがとうございます、どうしても調査課の方から提供頂かないといけない情報がないと会議が進まなくて…それと、(名前)さんの資料分かりやすくて私好きなんです!」
そんな可愛い事を言う君が私は好きだよ。
なんて言葉に出さず悟られないようカッコつけながら「どういたしまして」と返せば彼女は思い出したかの様に“あ、”と言葉を続ける。
「そういえば統括、リーブ統括がいらしてますよ。」
「そうなの?」
何故あえてその報告を私にするのか少し疑問に思いながら悟られぬようしれっと応える。
「(名前)さんが今日来られる話をしたらそこの休憩室に居る、と言伝を預かっていたので」
彼女は私が歩いて来た通路の先にある扉に隣接する休憩室を指差した。
そしてそのまま私の袖を少し引っ張ると少し背伸びをしてその可愛い口元を私の耳に寄せる、
「仲、よろしいんですね」
彼女の言わんとしている意味にバッと顔を見れば先程の可愛らしい笑みから一変、少し大人な…いや大人なのだが、何処か秘密めいた笑みでその綺麗な唇の前に人差し指を立てる。
彼女の唇に触れた人差し指がそのまま私の唇に触れればパッと掌を見せていつもの可愛らしい笑みを私に向ける。
「それじゃあ、本当に資料ありがとうございました。またお昼ご一緒させて下さいね」
そう言うと彼女はパタパタとオフィスに戻っていった。
いけない、少し頬が火照ってしまっている…女性というのは本当に怖い、一体どこまで感づかれているのだろう。彼女に聞く以外答えはわからないがついつい考えながら手で頬を仰ぎ彼が待っているらしい休憩室へと足を運んだ。
────
「お疲れ様です。」
休憩室を覗けばコーヒーカップを傾けてるリーブさんの姿を見つけてすぐに声を掛ける。
「お疲れ様です、すみません。呼び出すような形になって」
「いえいえ、むしろいいんですか?統括がこんなところで時間を潰してて」
「今来たところですし、ほんの10分程度席を外しても平気ですよ。それに息抜きも必要ですから」
そう言いながら隣の空席をぽんぽんと叩いて私に座るよう促すものだからお言葉に甘えるように隣に座る。
「すみません、本当なら今日は帰れる予定だったのに」
「お気になさらないで下さい。そんなこと言えば私も先週約束をすっぽかしてしまいました。」
「(名前)さんは任務だったでしょう」
「そんなこと言ったら統括もお仕事でしょう?」
個々の忙しさを比べることは容易ではないが統括部長と言うこの神羅での重役幹部、仕事の大変さは想像に難くない。
急な会議だって入るだろう、護衛班に所属している私がよく知っている。
そんな彼の急用に対して「私と仕事どっちが大事なの?!」なんてセリフが出る程私は恋に恋していない。
あと私もよく任務で予定をすっぽかすこともある、お互い様だ。
「(名前)さんは………」
「????」
「いえ、何でもありません。さて、そろそろ戻らないと秘書に怒られてしまうので私は戻りますね」
「あ、はい。」
カップをダストボックスに捨ててガラスドアのセンサーに手をかざそうとしたリーブさんを引き止めるように声を掛ける。
「リーブさん、」
「え………はい」
社内での名前呼びに一瞬驚いた様子のリーブさんが振り返る。
「────────」
「……本当に貴女って人は」
「ふふ、お仕事頑張って下さい。」
「(名前)さんもあまり無茶はなさらないでくださいね」
「………善処します」
「そこは嘘でも“うん”と言ってほしいですね」
「んー、無理ですね!」
「そんな清々しく、まぁいいです。帰ってきてくれれば」
「それは私もですよ。」
そこで目があってどちらともなく二人から笑いが溢れる。
「それじゃあ、行ってきます」
「はい、いってらっしゃい。」
先程よりも穏やかな顔をしてリーブさんは休憩室を出て行った。
思ったより参っていたらしい、少しでも元気づけれてたらいいな。と思いながら私も休憩室を後にした。
──────────
あの後オフィスに戻ってツォンさんに報告書を提出してタイムカードを、切ろうとしたら切れなかった。
ツォンさんから任務が言い当てられた為私は直に現場に駆けた。
任務の内容は簡単。
前々から目を付けてたイケナイコトをしている奴らが尻尾を出した為その現場の制圧、並びに捕獲。
警備兵と共に私はその現場に辿り着いていた。
現場は五番街スラムにある地下バー。………ってかここ、この間レノとルードが言ってたお店じゃん、なる程そういう事か。
全く持って食えない奴等だと思いながら私は兵士達に指示を出す。
この店の構造は客用出入り口が一箇所、裏口が一箇所。そこに兵をやり私と残った数名は現場突入。
ハンドサインでその事を伝えれば警備兵は頷き行動をする、配置完了の合図を確認後ゆっくりと入り口の階段を降りる。店内への扉一つ隔てて耳をすませば店内は穏やかなジャズが流れている。
「突入します。」
その一声で一緒にいた警備兵達も中に入っていく。
「神羅カンパニー治安維持部です、大人しく両手を上げて頭の後ろで手を組みなさい。」
その瞬間一般客と店内従業員は息を呑みながら大人しく従う、店内を見渡せば白髪交じりの整えられた髭に上等そうなスーツを纏った男と若い小太りな男…今回のターゲットを見つけ席に近づく。
「同行願えますか。」
そのセリフに全てを悟ったスーツの男は大人しく頷いた。が、小太りの男の方がそうは行かなかった。
「な、なんだお前らは!誰に手を出そう怖がってんのか!!お、おい!この女をひっ捕らえろ!」
そう叫んで隣の席にいたボディーガードらしい男数名が私に突っ込んでくる。側にいた兵士達が即座に銃を構えるが今回はONLY ALIVE、生け捕りのみと言われている為銃を降ろさせる。
多分ボディーガード位ならDEADでもいい気はするが念の為だ、力任せのタックルを技で返してまずは一人目を床に落とす。その直後ナイフで来た奴の手元を警棒で叩きそのまま首元に電流を流して麻痺状態にさせる。
「あーあーあー、こんな細っこい女一人に何やってんだよ。」
先程から気になっていたがこの男達と同席していた黒髪オールバックの男が立ち上がる、多分ボディーガード達のまとめ役か。
………こいつ、弱くないな。直感でわかる
まともにやり合うにはこの狭い店内じゃ分が悪い、それは相手も思ったのか一つ提案をしてきた。
「ここじゃあなんだし外行こうや、お嬢ちゃん」
「私にメリットが無いわ」
「んんー、ここでやってもいいが他の客を怪我させちまうかもしれねぇぜ?」
それは神羅様にとっては不都合じゃねぇか?イヤらしい顔でこちらを見ながらそう言う男に虫酸が走るのを感じながら否定は出来なかった。一般市民への被害は最小限に、それは私の基本理念だ。
「………わかった、店の外に行きましょう」
男を先に行かせて後ろを行く前に兵士達に指示を出して私も店外へと向かった。
………
男は倒れていた、その直ぐ側を無傷の(名前)が見下ろす。
「嘘、だろ…あんた一体何者なんだよ」
「言わなかった?タークスよ。」
「ター…クス…そりゃ強い訳だ…」
「分かったら大人しくしてくれるかしら」
「はは、見てわかるだろ俺はもう動けねぇよ」
念には念を、男の首元に警棒を当てる為2歩近づいた瞬間男のが手元に隠し持っていたバタフライナイフを開き(名前)の足を切る。
「っーーー!!!!」
「甘い、甘いねぇ甘すぎて酔っちまいそうなくらいだぜ。」
フラフラと立ち上がる男に(名前)は間髪入れず地面を蹴り距離を縮める。男の振り向きざまに振られたナイフを即座に避け頬を掠める、後ろにずらした重心の足を軸に遠心力を使い警棒を振り喉を打つ。気道の圧迫により怯んだ隙を逃さず再び警棒の先を頸動脈に当ててて電流を流す。
「ツメが甘いのよ。若造が」
根性があるのか虚ろな目になりながら男は辛うじて意識を繋いでいた。
「ガハッ………嬢ちゃんが…何を、」
「嬢ちゃん嬢ちゃんって、私これでも30なの。」
「はっ…!?!?」
その瞬間追加の電流を流し完全に気絶させた(名前)は残りの後始末を待機していた警備兵に任せ止まる気配のない足を引きずりながら一足先に本社ビルに戻ることにした。
────────
目を覚ました時に真っ先に目に入ったのはくしくも見慣れたくはない医務室の天井だった。
「あー…」
うん。声は出る。
手も動く、足も…
「ぐっ、………つぅーー…」
動かそうとした時左足に激痛が走る。
一先ず体を起こして痛みの原因を確認すれば丁寧に外踝上に包帯が巻かれていた。
あぁ、そうだ。油断して切られたんだ、確かにそこそこ血は流したがなぜ自分が医務室にいるのか記憶がない。
と言うかあの後どうやって本社まで帰ってきたかも怪しい。
なにはともあれずっと寝てるわけにもいかない。
ベッドから起き上がろうとした時カーテンが乱暴に開けられる。
「(名前)!!!」
「リーブさん、」
「目覚めたんやね、良かった…心配してたんよ…」
「え…?」
私を抱きしめながらそう言うリーブさんの取り乱し様が夜以外で見ることなんて無い為少し焦る。すると言葉が戻っていた事に気づいたリーブさんは少し咳払いをして距離を起き話を続ける。
「失礼、…(名前)、貴女は3日も寝ていたんですよ。」
「3日!?」
「はい、私の方ではそう聞いています」
いくらなんでも3日も寝てたんて想定外な事に困惑して居ると赤い同僚が顔を出す。
「重かったぞ、と。」
「レノ、え、重かったって」
「お前の帰りが遅いから様子見に行こうとしたら駐車場で倒れてたんだよ、それを医務室まで運んだのは俺だぞ、と」
「あ、えっと、ありがとう?」
「おう。因みにお前厄介なやつの相手してたんだな」
「???」
「切り傷から変種の毒が出てきた、解毒剤の調合も不可能。都度、症状への対処療法のみで後は本人の抗体に頼るしかない。つぅ状態だったんだよ」
「それ結構やばくない?」
「まぁ死んでても不思議じゃねぇよな」
「縁起でもない事言わないでよ。」
「とりあえず生きてんだから良かったじゃねぇか。俺はこれから主任に報告に行ってくるから大人しく寝てろよ、と。」
そう言ってレノは医務室から出て行った。
隣で話を聞いていたリーブさんは想定よりも大変な事になっていた事実にショックを受けてるようだった。
「リーブさ、」
「私は一度仕事に戻ります。」
リーブさんの手首についてる腕時計へちらりと目をやれば16:37、まだ勤務時間中だ。仕事抜け出してきてたのか…しかし自分が同じ立場ならきっと同じ事をしてしまっていた気がするから咎めることもできない為黙って頷く。
「今日は…今日は絶対定時で上がります。」
「え、はい。」
「迎えに来るのでこのままここに居て下さい。絶対です」
有無を言わさないリーブさんの申し出を私はただ受け入れるしか出来なかった。
ーーー
あの後戻ってきたレノから数日は傷の治療に専念しろとのツォンからの言伝を貰い私は大人しく数日の休暇を過ごすことになった。
その連絡を貰ったのが17:07。
リーブさんが迎えに来ると言ってくれてたけど定時までまだ時間はある…正直暇だ。でもこのまま一人で帰るとそれはそれで面倒くさい事になりそうだし、だからって仕事するわけにもいかないし…
どうしようかな、と悩んでいたら治癒の為か強めの眠気が私を襲ってくる。
まだ1時間くらいあるし…そう思った私は少しだけ瞼を閉じた。
再び目を覚ましたのは見慣れたベッドの上だった。
医務室の時に着ていた仕事着のスーツは纏っておらず着ていたのは大きな半袖シャツ…リーブさんの物だ。
ついうっかり襟首を鼻に当てて匂いを嗅いでしまう、…いや変態じゃないよ!不可抗力だよ!
なんて誰に向かってしてるのかわからない弁解を心のなかでして居ると寝室のドアが開く。
「目、覚めましたか」
「リーブさん、私」
「起き上がらなくて大丈夫ですよ、きっと(名前)さんが思ってる以上に身体は疲れてるはずです」
そう言いながらホットミルクを私に手渡してベッドの縁に腰掛ける。
「あの、私…」
「迎えに行ったら寝てらしたので、起きる気配もなかったのでそのまま車で連れて帰ってきました。」
「すみません、重かったですよね」
「いいえ、そんなことありませんよ。レノ君のあれだって本心じゃないでしょう」
いやきっとあいつのあれは半分本心です。
自分で言うのも何だが鍛えて筋肉をつけてるせいで平均的な女の子より体重が重い自覚はある。ルードならともかくレノが私を担いで重い。と感想を感じるのは用意に想像がつく、しかしそれを口に出すと私が悲しくなるので言わない。
軽いと言ってくれてるんだからその優しさに甘える様にホットミルクに口をつけた。
「心臓が…止まるかと思いました」
カップに口をつけてる私を見つめながら私の髪を撫でてそのまま頬の傷を優しく指でなぞりながら言うリーブさんに私はカップをサイドテーブルに置いてリーブさんの手の上から自分の手を重ねて手を頬へ擦り寄せる。
「心配、かけてもうたみたいやね」
「………ホンマやで、(名前)が医務室おる聞いて行ったら目覚ましてない。覚めるかもわからん、言われたこっちの身にもなって…」
「ふふ、ごめんな」
「無事に帰ってきてくれたらええ、言うて別れたから余計にな」
「せやね、でも…」
「…???」
「リーブはんが“帰ってきて”言うてくれたから帰ってこれたんやと思うよ」
「そんな事言わんでも帰ってきてや、………僕の元に」
「うん、帰ってくるよ。何回でも…どこに行っても」
リーブさんの頬に両手を添えてその瞳を正面から捉えればスモーキークォーツの瞳に私が映るのを見ながらそっと唇を重ねる。
「うち、運だけはええから」
「…(名前)にはかなわんな、」
スプリングが傾くと私の背中がベッドに優しく倒される。
「え、ちょ、待って!ほら、うち足怪我してる!な?!」
「うん?分かっとるよ。安心して、(名前)は動かんでええから」
「え、いや、そういう意味じゃ…」
「数日休みなんやろ?」
「え、なんで…」
「ツォン君から聞いた。」
そのまま私の首元に口を寄せればチクッと痛みが走る。え、待って、嘘やん…
「僕も明日休みやから安心して」
待って、それは安心出来やんやつ。
「ーーっ!」
私の言葉を飲み込む様にキスをするリーブさんの顔を見て“あぁ、ホットミルクもう一回温めなきゃ”なんて思いながら私はシーツの波に沈んだ。