(名前)の後ろを通る時ふわりと最近じゃ嗅ぎなれない香りがする
「香水？」
思ったことをそのまま口に出すと振り返りながら家事をする(名前)が応える
「あ、匂いきつかった？ごめん」
「いや、珍しいな。と思って」
「そう？確かに最近つけてなかったからね」
普段つけないものを身に纏い始めたり、容姿に関して変化が出ると伴侶の不貞を疑え。なんて事を昔聞いたことがあるがあいにく俺は自分の奥さんが香水を付け始めたからと言ってそんな事言い出すつもりは毛頭ない。
それはきっと彼女の自室の棚に置いてある香水瓶の数を知っているから
むしろ最近まで付けてなかったことのほうが少し気になるくらい。なんて思ってたら俺の心が読めるのか(名前)は続ける

「仕事で最近つけれなかったのもあるけど…今朝ね、起きたら鉄平と同じ匂いがしたから」
……そりゃ、同じ布団で一緒に寝て同じシャンプー使って同じ柔軟剤使ってたらそうなるだろうし
むしろそう言うのは幸せを感じるワンシーンじゃないのかな。と思いながら、俺自身の匂いってそんなにきつかったのかと少し考えこむ。
すると考え込んでいた俺をそのままに(名前)は少し楽しそうな声でそう言う。

「出会った時みたいじゃない？」

髪を掛けた耳が真っ赤なのを見て俺は後ろから(名前)を抱きしめた。

驚いた声を出すが抵抗はしない、
こんなにも可愛いくて愛おしい彼女、なんでこんなに可愛いことが出来るんだろう。なんて思いながら真っ赤な耳にキスをする。
セットしてない俺の前髪がハラリと(名前)の頬を撫でると少しくすぐったそうに、でも嬉しそうにくすくすと笑う。

少し懐かしい、まだこんな事が出来ない関係だった時の匂いを胸いっぱいに貯めながら
今だから見れる(名前)の顔を見つめてキスをする。

あぁ、俺って凄い贅沢なことしてる気がする。