break cafe(トリコ/オールキャラ)
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赤や黄色に染まっていた木々は裸になり、その寒そうな佇まいに青を基調とした多くの電飾を巻き付ければ数ヶ月前とはまた違う色とりどりの装いをした木々達を見つると、今年もこの季節が来たな。と実感する
特別都会でもないこの街もこの時期ばっかりは少し人が増える。うちの店の前にある筋を一本向こうに行けば駅から続く大通りに出る。そこは普段よりもきらびやかな賑わいを見せていて、店頭には赤、白、緑を基調とした電飾や飾りが施されている。
そして普段はない露店を各店舗、店の前に立てれば様々なものを売っている。ローストチキン、ホットワイン、クリスマスをイメージしたサンドイッチからカラフルなアイスまで。
本当にいろいろなものを売って、いろいろな人たちが買っていく。
因みに大通りから一本入った当店は露店を出すことはないが、普段からケーキも扱っている為時期にあわせてクリスマスケーキの予約も承ってる。そして心優しい常連さんに支えられてるうちはその予約数を今年も八割方埋まっており何とか赤字は回避できそうだ。と思っているいつも通りのクリスマスシーズン。
店内の緩やかな時間と共にケーキに必要な材料を書き出していると来店を知らせるベルが鳴る。
「やぁ」
「ココさん、お久しぶりです」
そこには予想していなかった来客の姿。
忙しいココさんの事だから次来られるのは年が明けてからだと思っていたから驚く。しかもこんなクリスマス前に、いや。それは関係ないか?
「予定より早く片付いてね、君に会いたかったんだ。」
何とまぁ爽やかな笑顔と共に素敵なことを仰られるのか。こんな物言いしていたらいつか絶対勘違いされると思うのは私だけ?なんてココさんのリップサービスを嬉しく受け取りながらお話をする。
「それは…ありがとうごさまいます。」
「あ、本心じゃないと思ってるだろう」
「そんなそんな、お客様を疑うなんて事致しません」
「そう?それだといいんだけど。」
「お話も楽しいですが、ご注文はいかがなさいますか」
「あぁ、ごめんよ。それじゃあ君のオススメでお願いするよ」
「かしこまりました。」
その言葉を聞いてシーズン物の豆に手を伸ばす。
スノージュエリー、冬限定の珈琲豆。
普通に栽培すればそれは只の毒の豆として食用には適さない食材だが
最低気温は氷点下まで下がると言われる地域でのみ栽培が可能とされてる特別な豆。冬の雪割りキャベツと同じ原理なのか、その過酷な環境下で育てたこの豆は毒性を失い他の豆より深い味わいと香り高さ、そして癖の少なさによる美味さから特殊栽培食材及び希少食材とも言われている。
とある伝でこの時期になると仕入れさせてくれる人が居るから出せる代物、これも何かの縁だと思いこの子を選ぶ。
少し粗めに砕いてる私の手元を見ながらカウンターに腰を掛けるココさん。珍しい、いつもならテーブル席に行かれるのに。
これは本格的に私とお話をしに来たのかしら、そう考えながらミルを回す手は止めない。
するとココさんが声をかけられる
「因みに君はクリスマスの予定決まってるのかな」
この時期では高確率で知人にかけられる言葉に他の人と同じ返しをする。
「今年のクリスマスも例年通りお店に居ますよ」
「その後の予定は?」
「その後…?」
「うん。お店の閉店後」
大体の知り合いはお店の営業だと言えば話が終わるがココさんにはそうはいかなかった。
正直、営業後に予定はない。
しかしそのことを素直に言えば何かしらの誘いを断ることが叶わない為少し言い淀む。
私は仕事上の付き合いの人とプライベートに会う事がとても苦手だ、この間だって鉄平さんにディナーに誘われたのを断った所なのだから。
よく勘違いされるが私は一方的に(あ、この豆好きそうだな。みたいに)相手のことを考えることはあっても実際にその人物へ時間を割いてコミュニケーションを取ることはとてもとても苦手だ。叶うことならしたくない。
だって相手は仕事中の私を好んで居るのだから。
そこまで心の中で葛藤を繰り広げながらも手元は動きを覚えているもので、珈琲豆にお湯を注ぎ香りを楽しみながらひと呼吸してココさんの顔を見る
「閉店後は…」
仕事がある。そう続けようとした私の目の前にココさんは2枚のチケットを見せる。
頭の上にハテナを浮かべる私はその一枚を受け取り、目を通す。
私はバッと顔を上げてココさんの目を見て確認を取る。
「これ、これ、本物ですか!?」
「あぁ、勿論。君がその日、その時間が空いていれば…と思っていたんだけど」
そのチケットとは…
「劇団クリスタルのクリスマス限定公演のチケット…」
私の愛してやまない劇団がホテルグルメのレストランで行うクリスマス限定公演のチケット。しかもS席である。
劇団の人気もさることながら六星レストランで行われる為客席数も極少数と言う発売と同時に字列通り“秒”で売り切れた超プレミアムチケット…ファンとしては喉から手が出るほど欲しい代物。
こんな物を出されては仕事だなんだと言えない。
しかしやはり相手はあくまでとお客様、ううん。と唸り声を上げてる私をココさんはクスクスと笑いながら眺めている。
ちゃぽん。
とフィルターから最後の雫が落ちた時私はコーヒーをカップに注いで出す。
するとココさんは微笑みながら言う
「あげるよ。それ」
は?なんて失礼な言葉を溢しながらココさんを見つめる。
「あわよくば、と思っただけだよ。君が客とのデートを頑なに避けてるのは知ってたから断れない餌を差し出しただけ。」
ごめんね、卑怯で。なんて少し悲しそうに言いながらもう一枚のチケットも差し出してくるものだから私はつい口走ってしまった。
「卑怯だなんて思いません!わ、私で良ければ一緒に行きましょう!」
言ってからハッとしたが時すでに遅し。
ココさんは「いいの?」と尋ねてくるがそれを跳ね除けるような事は言えない。
私はゆっくりと頷いた。
するとココさんは安堵したように「ありがとう」と言う。
その後ココさんはコーヒーを飲み終えれば
クリスマスの夜、迎えに行くね。と言って店を出て行った。
その日の営業を終えて家についた私は頭を抱える
「ホテルグルメに着ていくような服持ってない。」
しかも約束の日まで時間は少ない上に予約のケーキの準備をしていれば買いに行く暇なんてない。
マナー違反だと咎められるのを承知でスーツを着て行く事にして用意した当日、迎えに来たココさんの手元には大きなブランドの袋が携えられていた。
中身はお察しの通り。
サイズも寸分違わぬ代物、そこで私はふと思う。
(そういば私、劇団クリスタルが好きだ。なんて話したっけ…)
…何だか考えるのが怖くなった私は何も考えずそれに袖を通せばココさんの手を取った。
特別都会でもないこの街もこの時期ばっかりは少し人が増える。うちの店の前にある筋を一本向こうに行けば駅から続く大通りに出る。そこは普段よりもきらびやかな賑わいを見せていて、店頭には赤、白、緑を基調とした電飾や飾りが施されている。
そして普段はない露店を各店舗、店の前に立てれば様々なものを売っている。ローストチキン、ホットワイン、クリスマスをイメージしたサンドイッチからカラフルなアイスまで。
本当にいろいろなものを売って、いろいろな人たちが買っていく。
因みに大通りから一本入った当店は露店を出すことはないが、普段からケーキも扱っている為時期にあわせてクリスマスケーキの予約も承ってる。そして心優しい常連さんに支えられてるうちはその予約数を今年も八割方埋まっており何とか赤字は回避できそうだ。と思っているいつも通りのクリスマスシーズン。
店内の緩やかな時間と共にケーキに必要な材料を書き出していると来店を知らせるベルが鳴る。
「やぁ」
「ココさん、お久しぶりです」
そこには予想していなかった来客の姿。
忙しいココさんの事だから次来られるのは年が明けてからだと思っていたから驚く。しかもこんなクリスマス前に、いや。それは関係ないか?
「予定より早く片付いてね、君に会いたかったんだ。」
何とまぁ爽やかな笑顔と共に素敵なことを仰られるのか。こんな物言いしていたらいつか絶対勘違いされると思うのは私だけ?なんてココさんのリップサービスを嬉しく受け取りながらお話をする。
「それは…ありがとうごさまいます。」
「あ、本心じゃないと思ってるだろう」
「そんなそんな、お客様を疑うなんて事致しません」
「そう?それだといいんだけど。」
「お話も楽しいですが、ご注文はいかがなさいますか」
「あぁ、ごめんよ。それじゃあ君のオススメでお願いするよ」
「かしこまりました。」
その言葉を聞いてシーズン物の豆に手を伸ばす。
スノージュエリー、冬限定の珈琲豆。
普通に栽培すればそれは只の毒の豆として食用には適さない食材だが
最低気温は氷点下まで下がると言われる地域でのみ栽培が可能とされてる特別な豆。冬の雪割りキャベツと同じ原理なのか、その過酷な環境下で育てたこの豆は毒性を失い他の豆より深い味わいと香り高さ、そして癖の少なさによる美味さから特殊栽培食材及び希少食材とも言われている。
とある伝でこの時期になると仕入れさせてくれる人が居るから出せる代物、これも何かの縁だと思いこの子を選ぶ。
少し粗めに砕いてる私の手元を見ながらカウンターに腰を掛けるココさん。珍しい、いつもならテーブル席に行かれるのに。
これは本格的に私とお話をしに来たのかしら、そう考えながらミルを回す手は止めない。
するとココさんが声をかけられる
「因みに君はクリスマスの予定決まってるのかな」
この時期では高確率で知人にかけられる言葉に他の人と同じ返しをする。
「今年のクリスマスも例年通りお店に居ますよ」
「その後の予定は?」
「その後…?」
「うん。お店の閉店後」
大体の知り合いはお店の営業だと言えば話が終わるがココさんにはそうはいかなかった。
正直、営業後に予定はない。
しかしそのことを素直に言えば何かしらの誘いを断ることが叶わない為少し言い淀む。
私は仕事上の付き合いの人とプライベートに会う事がとても苦手だ、この間だって鉄平さんにディナーに誘われたのを断った所なのだから。
よく勘違いされるが私は一方的に(あ、この豆好きそうだな。みたいに)相手のことを考えることはあっても実際にその人物へ時間を割いてコミュニケーションを取ることはとてもとても苦手だ。叶うことならしたくない。
だって相手は仕事中の私を好んで居るのだから。
そこまで心の中で葛藤を繰り広げながらも手元は動きを覚えているもので、珈琲豆にお湯を注ぎ香りを楽しみながらひと呼吸してココさんの顔を見る
「閉店後は…」
仕事がある。そう続けようとした私の目の前にココさんは2枚のチケットを見せる。
頭の上にハテナを浮かべる私はその一枚を受け取り、目を通す。
私はバッと顔を上げてココさんの目を見て確認を取る。
「これ、これ、本物ですか!?」
「あぁ、勿論。君がその日、その時間が空いていれば…と思っていたんだけど」
そのチケットとは…
「劇団クリスタルのクリスマス限定公演のチケット…」
私の愛してやまない劇団がホテルグルメのレストランで行うクリスマス限定公演のチケット。しかもS席である。
劇団の人気もさることながら六星レストランで行われる為客席数も極少数と言う発売と同時に字列通り“秒”で売り切れた超プレミアムチケット…ファンとしては喉から手が出るほど欲しい代物。
こんな物を出されては仕事だなんだと言えない。
しかしやはり相手はあくまでとお客様、ううん。と唸り声を上げてる私をココさんはクスクスと笑いながら眺めている。
ちゃぽん。
とフィルターから最後の雫が落ちた時私はコーヒーをカップに注いで出す。
するとココさんは微笑みながら言う
「あげるよ。それ」
は?なんて失礼な言葉を溢しながらココさんを見つめる。
「あわよくば、と思っただけだよ。君が客とのデートを頑なに避けてるのは知ってたから断れない餌を差し出しただけ。」
ごめんね、卑怯で。なんて少し悲しそうに言いながらもう一枚のチケットも差し出してくるものだから私はつい口走ってしまった。
「卑怯だなんて思いません!わ、私で良ければ一緒に行きましょう!」
言ってからハッとしたが時すでに遅し。
ココさんは「いいの?」と尋ねてくるがそれを跳ね除けるような事は言えない。
私はゆっくりと頷いた。
するとココさんは安堵したように「ありがとう」と言う。
その後ココさんはコーヒーを飲み終えれば
クリスマスの夜、迎えに行くね。と言って店を出て行った。
その日の営業を終えて家についた私は頭を抱える
「ホテルグルメに着ていくような服持ってない。」
しかも約束の日まで時間は少ない上に予約のケーキの準備をしていれば買いに行く暇なんてない。
マナー違反だと咎められるのを承知でスーツを着て行く事にして用意した当日、迎えに来たココさんの手元には大きなブランドの袋が携えられていた。
中身はお察しの通り。
サイズも寸分違わぬ代物、そこで私はふと思う。
(そういば私、劇団クリスタルが好きだ。なんて話したっけ…)
…何だか考えるのが怖くなった私は何も考えずそれに袖を通せばココさんの手を取った。
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