御真祖様の使い魔
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ランタンを手に薄暗い廊下を進む。
慣れた廊下に躓くことはないがやはり他の人たちと違って自分はそこまで夜目が効かない。多少は慣れているけどそれでも彼らとは決定的に違う。
だからコケないよう丁寧に進んでいると気配もなく突然後ろから声をかけられる。
「(名前)」
「はい、ご主人様」
「これからドラルクのところ行くけど、一緒行く?」
特に驚くこともなく振り返りながら返事をすればご主人様は少しウキウキされた様子で私に声をかける。
本日の雑事も粗方終わってそろそろお休みを頂こうとしたところだったがこの嬉しそうな顔…このまま送り出してはきっとドラルク様がお困りになるのは目に見てわかったため私は今日の睡眠を諦めて頷いた。
それを見たご主人様は軽々と私を抱きかかえ近くの窓に足をかける。
慣れた手付きで私はご主人様の腰に腕を回してしがみつく、するとふわりとした浮遊感と共に強い風が身体に当たる。顔は動かせない。ひたすらにご主人様のベストに顔を押し付けて落ちないように気をつける。
暫く強風に耐えていれば優しい声が頭上から下りてくる。
「(名前)、もう平気なはずだよ」
その声に従って私はご主人様の懐から顔を上げる。
先程までの強風はなく穏やかな飛行によって目下に広がる景色を見渡せた。
「綺麗……」
「(名前)は好きだよね、この景色」
「はい、とても好きです」
ただの人間としての人生では見ることの出来なかったこの景色が、風景が、堪らなく私は好きなのです。ご主人様は私が何を思っているのか、知っているかどうかは分からないけれど、ただこの景色を私が好きだということは覚えていてくださってるのが、私の頬を緩めるには充分すぎる要素だった。
「嬉しそうだね」
ご主人様が私の顔を覗きながら少し口角を上げて微笑む。
そうこうしているうちに夜景が段々と近づいてくる。
バサリと大きな羽をはためかせながらご主人様は降り立ち私をゆっくりと下ろす。
久方ぶりの故郷の土に足を下ろせば少し変な感じだな、と思いつつ結局は他と同じ地面であることは変わらないのだからこれは私に思い込みだと気づく。
感傷に浸るのもそこそこにご主人様は歩みを進める。
私はその後ろをついていきながら大きく変わった故郷の景色に目移りさせる。
「あまりハグレないようにね」
そう言ってご主人様は私の手を優しく引いてくださっった。
▽△▽△▽△▽△
「お祖父様!今回は急にどうされたのですか!」
「ハロー、ドラルク。暇だから会いに来た。」
ご主人様暇だからドラルク様に会いに行かれたんだ……
あれから暫く街を歩いてご主人様の後ろを着いていけばたどり着いたのは雑居ビルの一室。
表の看板には“ロナルド吸血鬼退治事務所”の文字、あれ?ここって退治人のいる場所なのでは……?そう思っている間にご主人様はノックをする。
扉から聞こえた声と姿は、その銀髪とは対象的な色のマントジャケットを身に纏った青年だった。
青年はご主人様を視界に入れた途端薄っすらと顔が青ざめていくのがわかった。
彼のさらに後ろから見知った顔が姿を現し、先程の台詞に至る。
ドラルク様は「暇ではないので、」そう、口を動かそうとした瞬間私を視界に捉えた。
「(名前)まで連れてきたのですか!?」
驚いた顔でこちらを見るドラルク様に私はスカートの裾を持ち上げ丁寧にお辞儀をした。
ヌヌー!と声を上げながら私の方に飛びついてくるジョンくんを抱えながら銀髪の彼と目が合う。軽く微笑めば顔を少し赤くしたので、とてもウブな子のようだった。
私が居たことに想定外だったらしいドラルク様はそのままご主人様と私を中に招き入れてくれた。
「ロナルド君、彼女は(名前)。(名前)、彼はロナルド君。件の退治人だよ」
「はじめましてロナルド様、私の名前は(名前)。御主人様の使い魔です。」
あぁ、どうも。と握手をしようとしてくれたロナルド様は私の台詞に首を捻らせる。
「ロナルド君、(名前)の言うご主人様はお祖父様のことだよ」
「あぁなるほど、ってなんねぇだろ?!え、この人は人間なんだよな?」
「何を失礼なこと言ってるんだね、(名前)はどこからどう見ても人間だろうが。」
私の姿をまじまじと見つめるロナルド様に一笑しながら私も口を開く。
「どうも私には使い魔になる才能があったみたいでして、」
「使い魔になる才能?!」
「はい、なので私はご主人様の血を飲ませて頂いた列記とした使い魔です。」
ジョンくんと同じ様にね、と言いながら私はジョンくんの小さな頭を撫でる。
ジョンくんとは使い魔仲間としてとても仲良くさせてもらっている。ヌンヌッヌンヌ!と嬉しそうに声を上げてくれるジョンくんは本当に愛らしい。
「その、お応えしたくなければ良いんですが……人間って使い魔になれるんですか?」
ロナルド様はおずおずと私に聞いてくる。
「基本的には有りえません。」
そう、有りえないのだ。人間は吸血鬼かグールになることはできる、グールになって使役されれば一時の形式として確かに使い魔になれるがそれは【人間がグールになって使役される】という人間だったものが人間でないものになるという工程を経る、【人間が吸血鬼に使役される】のとは根本的に話が違う。
本来知能の高い生物を使役するのはとても困難で、狼を使役するのも極限られた吸血鬼にしか出来ない。
その為私がご主人様の使い魔になるなど不可能、あり得るとすればそれは私に『人間のまま使い魔にされている』と言う催眠術をかけていると考えるほうが極自然的で可能性のある話なのです。
でもそれでは説明できない現実があるのもまた一つ。
「だからです、私には“使い魔になる才能”があったのです」
ロナルド様は少し不思議そうな顔をされたままそれ以上は言及なさませんでした。
「因みに言っておくが(名前)は私より、いやお父様より年上だからな。」
「は!?」
「今でも鮮明に覚えております。ドラウス様がお生まれになった瞬間、ドラルク様が初めて言葉を話された瞬間、ジョンくんがドラルク様の使い魔になられた日のことを」
そう私が言うとジョンくんは少し照れくさそうにヌーと鳴いた。
ロナルド様はその話を聞いて有りえないことだが、実際に目の前で繰り広げられてる現実をひとまずは受け入れることにしたのか一度深く瞬きをされた。
すると窓が勢いよく開いたと思えばまたそこには記憶に懐かしくない姿。
「お父様!急にドラルクのところに行くと言われれば驚くじゃないですか!」
「ハロードラウス、早かったね」
「何を呑気にお茶を……」
あわあわさせながらご主人様とお話するドラウス様を横目にミルクティーに口をつける。
「(名前)まで連れ出して何をお考えで?!」
私を視界に入れたと思ったらまた驚いた様子でご主人様に問いただすドラウス様。
「深い意味はないよ、ドラルクの友人と(名前)を会わせておきたかっただけだから」
ゴフッと飲んでいたミルクティが器官に入って咽る。
え……私がメインだったんですかご主人様。
やりたかったことは終わったし何して遊ぼうか。そう仰るご主人様の瞳はそこはかとなく嬉しそうに私には見えました。
他の方々達のお顔は少し血の気が引いてますが、まぁきっと大丈夫でしょう。
私はその後ひらりと上手いことご主人様との遊びを回避したドラルク様、ロナルド様と共にマントの裾が少し焦げたドラウス様と少し焦臭くなったご主人様がこの事務所に帰ってくるまでお邪魔させていただきました。
そのときにもまた少し愉快なことが有りましたが、それはここに記すほどのことではないのでまた私が“覚えていれば”書き記すことにします。
それでは皆様、おやすみなさいませ。
慣れた廊下に躓くことはないがやはり他の人たちと違って自分はそこまで夜目が効かない。多少は慣れているけどそれでも彼らとは決定的に違う。
だからコケないよう丁寧に進んでいると気配もなく突然後ろから声をかけられる。
「(名前)」
「はい、ご主人様」
「これからドラルクのところ行くけど、一緒行く?」
特に驚くこともなく振り返りながら返事をすればご主人様は少しウキウキされた様子で私に声をかける。
本日の雑事も粗方終わってそろそろお休みを頂こうとしたところだったがこの嬉しそうな顔…このまま送り出してはきっとドラルク様がお困りになるのは目に見てわかったため私は今日の睡眠を諦めて頷いた。
それを見たご主人様は軽々と私を抱きかかえ近くの窓に足をかける。
慣れた手付きで私はご主人様の腰に腕を回してしがみつく、するとふわりとした浮遊感と共に強い風が身体に当たる。顔は動かせない。ひたすらにご主人様のベストに顔を押し付けて落ちないように気をつける。
暫く強風に耐えていれば優しい声が頭上から下りてくる。
「(名前)、もう平気なはずだよ」
その声に従って私はご主人様の懐から顔を上げる。
先程までの強風はなく穏やかな飛行によって目下に広がる景色を見渡せた。
「綺麗……」
「(名前)は好きだよね、この景色」
「はい、とても好きです」
ただの人間としての人生では見ることの出来なかったこの景色が、風景が、堪らなく私は好きなのです。ご主人様は私が何を思っているのか、知っているかどうかは分からないけれど、ただこの景色を私が好きだということは覚えていてくださってるのが、私の頬を緩めるには充分すぎる要素だった。
「嬉しそうだね」
ご主人様が私の顔を覗きながら少し口角を上げて微笑む。
そうこうしているうちに夜景が段々と近づいてくる。
バサリと大きな羽をはためかせながらご主人様は降り立ち私をゆっくりと下ろす。
久方ぶりの故郷の土に足を下ろせば少し変な感じだな、と思いつつ結局は他と同じ地面であることは変わらないのだからこれは私に思い込みだと気づく。
感傷に浸るのもそこそこにご主人様は歩みを進める。
私はその後ろをついていきながら大きく変わった故郷の景色に目移りさせる。
「あまりハグレないようにね」
そう言ってご主人様は私の手を優しく引いてくださっった。
▽△▽△▽△▽△
「お祖父様!今回は急にどうされたのですか!」
「ハロー、ドラルク。暇だから会いに来た。」
ご主人様暇だからドラルク様に会いに行かれたんだ……
あれから暫く街を歩いてご主人様の後ろを着いていけばたどり着いたのは雑居ビルの一室。
表の看板には“ロナルド吸血鬼退治事務所”の文字、あれ?ここって退治人のいる場所なのでは……?そう思っている間にご主人様はノックをする。
扉から聞こえた声と姿は、その銀髪とは対象的な色のマントジャケットを身に纏った青年だった。
青年はご主人様を視界に入れた途端薄っすらと顔が青ざめていくのがわかった。
彼のさらに後ろから見知った顔が姿を現し、先程の台詞に至る。
ドラルク様は「暇ではないので、」そう、口を動かそうとした瞬間私を視界に捉えた。
「(名前)まで連れてきたのですか!?」
驚いた顔でこちらを見るドラルク様に私はスカートの裾を持ち上げ丁寧にお辞儀をした。
ヌヌー!と声を上げながら私の方に飛びついてくるジョンくんを抱えながら銀髪の彼と目が合う。軽く微笑めば顔を少し赤くしたので、とてもウブな子のようだった。
私が居たことに想定外だったらしいドラルク様はそのままご主人様と私を中に招き入れてくれた。
「ロナルド君、彼女は(名前)。(名前)、彼はロナルド君。件の退治人だよ」
「はじめましてロナルド様、私の名前は(名前)。御主人様の使い魔です。」
あぁ、どうも。と握手をしようとしてくれたロナルド様は私の台詞に首を捻らせる。
「ロナルド君、(名前)の言うご主人様はお祖父様のことだよ」
「あぁなるほど、ってなんねぇだろ?!え、この人は人間なんだよな?」
「何を失礼なこと言ってるんだね、(名前)はどこからどう見ても人間だろうが。」
私の姿をまじまじと見つめるロナルド様に一笑しながら私も口を開く。
「どうも私には使い魔になる才能があったみたいでして、」
「使い魔になる才能?!」
「はい、なので私はご主人様の血を飲ませて頂いた列記とした使い魔です。」
ジョンくんと同じ様にね、と言いながら私はジョンくんの小さな頭を撫でる。
ジョンくんとは使い魔仲間としてとても仲良くさせてもらっている。ヌンヌッヌンヌ!と嬉しそうに声を上げてくれるジョンくんは本当に愛らしい。
「その、お応えしたくなければ良いんですが……人間って使い魔になれるんですか?」
ロナルド様はおずおずと私に聞いてくる。
「基本的には有りえません。」
そう、有りえないのだ。人間は吸血鬼かグールになることはできる、グールになって使役されれば一時の形式として確かに使い魔になれるがそれは【人間がグールになって使役される】という人間だったものが人間でないものになるという工程を経る、【人間が吸血鬼に使役される】のとは根本的に話が違う。
本来知能の高い生物を使役するのはとても困難で、狼を使役するのも極限られた吸血鬼にしか出来ない。
その為私がご主人様の使い魔になるなど不可能、あり得るとすればそれは私に『人間のまま使い魔にされている』と言う催眠術をかけていると考えるほうが極自然的で可能性のある話なのです。
でもそれでは説明できない現実があるのもまた一つ。
「だからです、私には“使い魔になる才能”があったのです」
ロナルド様は少し不思議そうな顔をされたままそれ以上は言及なさませんでした。
「因みに言っておくが(名前)は私より、いやお父様より年上だからな。」
「は!?」
「今でも鮮明に覚えております。ドラウス様がお生まれになった瞬間、ドラルク様が初めて言葉を話された瞬間、ジョンくんがドラルク様の使い魔になられた日のことを」
そう私が言うとジョンくんは少し照れくさそうにヌーと鳴いた。
ロナルド様はその話を聞いて有りえないことだが、実際に目の前で繰り広げられてる現実をひとまずは受け入れることにしたのか一度深く瞬きをされた。
すると窓が勢いよく開いたと思えばまたそこには記憶に懐かしくない姿。
「お父様!急にドラルクのところに行くと言われれば驚くじゃないですか!」
「ハロードラウス、早かったね」
「何を呑気にお茶を……」
あわあわさせながらご主人様とお話するドラウス様を横目にミルクティーに口をつける。
「(名前)まで連れ出して何をお考えで?!」
私を視界に入れたと思ったらまた驚いた様子でご主人様に問いただすドラウス様。
「深い意味はないよ、ドラルクの友人と(名前)を会わせておきたかっただけだから」
ゴフッと飲んでいたミルクティが器官に入って咽る。
え……私がメインだったんですかご主人様。
やりたかったことは終わったし何して遊ぼうか。そう仰るご主人様の瞳はそこはかとなく嬉しそうに私には見えました。
他の方々達のお顔は少し血の気が引いてますが、まぁきっと大丈夫でしょう。
私はその後ひらりと上手いことご主人様との遊びを回避したドラルク様、ロナルド様と共にマントの裾が少し焦げたドラウス様と少し焦臭くなったご主人様がこの事務所に帰ってくるまでお邪魔させていただきました。
そのときにもまた少し愉快なことが有りましたが、それはここに記すほどのことではないのでまた私が“覚えていれば”書き記すことにします。
それでは皆様、おやすみなさいませ。
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