短編
名前
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「名字、今すぐ家に来い」
作りすぎたんだ、と付け加えて言った。
もちろん自分は降谷さんの部下であって拒否権はない。
時計を見るとまだ短針が五と六の間をさしている。
承知しました。と言って通話を終了させて、急いで着替えて出勤鞄を持って出掛けた。
降谷さんが作りすぎるのはいつものこと。
それを食べて片付けるのが自分と風見さん。
内心、またか…もしかしてわざとなんじゃないか?なんて思ったこともある。
まあそれを口にしたら、大変な事になるのは目に見えているから言わないが。
チャイムを押すと降谷さんがドアを開けて入れと言われ、お邪魔しますと一言。
「髪の毛ボサボサだな」
「まあ、はい。急いで来たので」
「…洗面所に行って、手洗いうがい顔洗ってこい。
その間に盛りつけしておく」
この言葉も何回聞いたか分からない。
自分は迷わず洗面所向かい、事を終えたら、柔軟剤の香りがするタオルを手にとってふいた。
リビングに付いて、椅子に座る。
手を合わせて、いただきます。と言うのは欠かさずに。
降谷さんは私の背後に立ち、手にブラシを持って髪の毛を解かす。
「初めて挑戦してみたんだが、なかなか上手く作れてな。
フランベっていうんだが」
「はい」
「名字の口に合うかどうか心配だったんだが…どうだ?」
「美味しいです」
「そうか。
……ほら、できたぞ」
髪の毛を一つ縛りにして満足したのか、頭を優しく撫でる。
お礼を言うために後ろに振り向いたら、待ったをかけられた。
「米がついてる」
あろうことか顔を近づけて来て、ざらついた舌で口元をぺろりと舐めた。
降谷さんのごくん、と飲み込む音が静かな部屋のせいで際立つ。
「ごちそうさま」
こういうことを素でやってしまう降谷さんは恐ろしい人だと思う。
きっと色んな人を落としているんだろうなぁ、とぼんやり思った。