風見パパになる番外編
名前
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「あっ、セーターが…」
ビリッと破ける音がした。
風見のセーターの袖を見ると、穴が開いている。
まだ買ったばっかりで三回しか着ていないなかったはずだ。
「今そこで引っかけて、セーターが破けてしまって…もったいないけど捨てますね」
セーターを脱いでゴミ箱に捨てようとしたので待ってと止める。
「縫うから貸して」
「縫うって言ったって、縫い目が見えて穴が開いていたのが分かるんじゃないんですか?」
「大丈夫」
ソーイングセットを持って来るとセーターを渡される。
風見は縫う姿を見たいらしく、見やすいように私を膝の上に座らせて壁に寄りかかった。
まず初めに、糸を二本取りして玉結びをする。
次に、内側から針を刺し手前に針を出した。
「で、この次は…。
縫い始めの糸が出た所から手前の真下に針を刺して、セーターの中を通って0、三センチ先に針を出すの。
まあ、簡単に言えばカタカナのコをイメージして縫ってる感じ」
「へえ…」
「縫い終わったら…糸、引っ張ってみる?」
「えっ、良いんですか?」
「ゆっくり引っ張ってね」
糸をゆっくり引っ張ると、縫い目が見えなくなってキレイにくっつくと、すごい…と風見の口からこぼれる。
まあ、説明しても風見は裁縫できなさそうだなぁ。針で指を指しそうなイメージしかわかない。
「最後に針を真ん中に刺して玉結びね。
玉結びした糸を下に回して、玉結びの真横に針を刺す。
後は二ミリくらい先に針を出して、玉結びが隠れるように強めに糸を引っ張って完成。
ちなみにこの縫い方は、はしごまつり、っていうの。
さっきみたいに破けたら、いつでも縫うから言ってね」
「いつでも…か」
ハサミで余った糸を切って、後片づけを始める。
ソーイングセットのフタを閉めると、風見は腕を回して私を優しく抱き締めた。
「名前。
ずっと俺のそばにいてくれ」
さっきより少しだけ回している腕に力が入って。
耳元で囁くように言われて、体温が上昇する。
しかも名前を呼び捨て、ため口。
いつもの風見じゃないみたいで、いきなりだし、どうしていいか分からない。
「俺は料理も裁縫もできない。
できることなんてせいぜいゴミ捨て、トイレ掃除、高い場所にある物を取ることぐらいだ。
そうと解っていても、名前を手離す気は無い。俺から名前が離れて欲しくないんだ」
「いきなり、どうしたの…?」
「裕也って、呼んでくれないのか」
「ゆ、ゆうや」
私の顔が見えるように抱き上げて正面向きにされる。
風見との距離は一センチにも満たないくらい近い。
恥ずかしくて目をそらそうとしたら、唇が触れそうなくらい近づいてきて。
「照れて俺の名前を呼んでいる姿、すごく可愛い」
「ち、ちかいよ」
「名前とキスしたい。
名前とそれ以上のこともしたい…良いよな」
…き、キス?
その言葉に疑問を感じた。
いつもの風見だったら接吻って言うはずだ。
ちょっと待って、今まで私は何して…!?
「マフラーだ!!」
思い出して叫べば視界が暗転して、ゆっくりと瞬きをすれば、膝の上には完成したマフラーが。
…そうだ、思い出した。
風見のためにってマフラーを編んで。
完成して気が抜けて、そのまま寝てしまったんだ。
窓の外を見てみると、もう真っ暗。
そろそろ風見が帰って来る時間だ。
マフラーをキレイに折り畳んで紙袋に入れると玄関からガチャンと音がする。
「ただいま帰りました」
「おかえり風見!」
玄関に行ってみれば、風見は笑顔を向けてくれた。
こんな純粋な笑顔を見るとすごく眩しい。
いやらしい夢を見ていたなんて…本人には絶対言えない。
「名字さん」
「うん?」
「実は貴女に渡したい物があって…。
喜んでくれると良いんですけど…。
両手だしてもらえますか?」