風見パパになる番外編
名前
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これは
松田陣平が生きていた頃の出来事だ。
「名前、一緒に出掛けるか」
「陣平と二人きりで出掛けるの久しぶりだね!」
「いや、降谷もいる」
降谷さんがいると、また私に暴言吐いてくるからなあ。正直行きたくない。
なんで嫌われている人と出掛けなきゃいけないんだ。
陣平の一歩後ろに立っている降谷さんは「もちろん行くよな」と圧力かけてくる。
「名前」
「うん?」
「俺はお前と行きたい」
「陣平がそこまで言うなら…」
私が陣平のお願い断れる訳無いじゃん。
こくんと頷くと私の頭を撫でて、ありがとなって笑顔で言うから、嬉しくなる。
やっぱり陣平に頭を撫でられるの好きだなあ。
降谷side
ショッピングモールにやって来た僕ら。
松田がいなければ、こうやって名字と出掛ける事はできなかっただろう。
今日の目的は僕に惚れてもらう…ではなく。
マイナスの高感度をどれだけ上げられるかだ。
「まずは…食べるか。
名前、何が良い?」
「どんぶりの気分」
「どんぶりって…。
お前、女子がリクエストする食べ物じゃないだろ」
「じゃあ降谷さんは違う店で食べれば良いじゃん。陣平は?」
「名前と同じ店が良い」
しまった…。
また名字の機嫌が悪くなった。
思った事を口にだしてしまうのが僕の悪い癖だ。
頭ではダメだと分かっているんだが…つい言ってしまう。
名字は松田と手を繋いで店に向かうので、僕は一歩後ろで二人を追いかけた。
「美味しかったね」
「やっぱ牛丼はいつ食べてもウマイよな」
厨房が見えない店は嫌だと言ってた名字は、松田と一緒だと隣の席に座って食べていた。
やっぱり長年一緒にいる絆か何かがあるからだろう。
さすがの僕でも二人の仲を引き裂いて、なんて事はできない。
二人の仲は恋人では無いと分かっているが、やっぱり羨ましいのが事実。
僕も名字といつか仲良くなれたら…。
「わりい名前、ちょっとトイレ行ってくる。
ちゃんと降谷と一緒にいろよ」
「分かった」
ひらひらと片手を振る松田を見送って思った。
そういえば松田、一時間前トイレに入ったよな…。
「…陣平遅いね。大便かなあ」
「さあな」
あれからいくら待っても戻ってくる気配がまるで無い。
ベンチに座って待ちくたびれた名字は、ヒマだヒマだと足をぶらぶらし始めた。
痺れを切らした名字は「トイレに乗り込んでやる」そう言ってベンチから立ち上がった時、携帯が鳴った。
「陣平からだ…。
もしもし?トイレ長いよ」
『あー悪い、ちょっと見たいコーナーがあって…二人でそこらへん見て廻ってくれ』
「えっ、ちょっと待っ」
『じゃあ、また後でな』
「……うそでしょ」
名字は顔を青ざめて再びベンチに座り俯いてしまった。
僕を嫌ってる名字と、どうやって接するか…。
好感度を上げると意気込んでいたが、いきなり二人きりは困る。
心の準備というものができていない。
どうしたもんかと悩んでいると俺の携帯にメールが受信された。
差出人は松田。本文は、奪えるモンなら奪ってみろ。
「(俺が名字の事好きだから、わざわざ二人きりに…ずいぶんと余裕じゃないか)」
「…ねえ。
陣平いないしバラけて行動しようか」
「はあ?」
「陣平が二人でいろって言ったけど、降谷さんは私の事嫌ってるから一緒にいたくないでしょ」
ベンチから立ち上がって離れて行こうとする名字の手を慌てて掴めばきょとんとしている。
「あー、えーっとだな…。
迷子になると困るから手を繋ぐか」
「降谷さんが迷子になるの?」
「松田とは手を繋ぐのに僕はダメなのか」
少しだけ手に力をこめれば僕の顔を見て、くすりと笑った。
ああもう。笑われたってかまわないよ。
名字といられるなら何だって良いさ。
「ふふっ、降谷さん可愛い。
良いよ、一緒にまわろうね」