風見side

「ね、風見。
今日のお風呂楽しみにしててね」

「…？はい」


食事も食べ終わり、俺は食器を洗っていると、名字さんがとても嬉しそうに話しかけてきた。

楽しみとは何だろうと想像する。
新しい匂い付きの石鹸だしたのか？
それとも新しいシャンプーを買ったのか…どれも違う気がするな。
脱衣所で自分の服と下着を脱いでから、名字さんの衣服を脱がしてお風呂場の戸を開ける。

浴槽を見ると柚子が一つ浮かんでいた。これは柚子湯、というやつか。


「風見から貰ったお小遣いで買って、たまにはどうかなって思ったんだけど…」

「すごく嬉しいです！」


お小遣いを俺のために…。
マフラーの時といい、俺を喜ばせる天才だ。

お互いの頭と身体を洗って、名字さんを抱き上げて浴槽に入る。


「どう？」

「良い匂いですね」

「柚子は身体が暖まるのと、リラックス効果、風邪予防とかあるんだ」

「へえ…」


俺が一人だったら柚子浮かべてないだろうな。
寒くなってきて、名字さんが気をきかせて買って来た柚子…最高だ。


「風見、お仕事お疲れ様。
いつも私に尽くしてくれて…ありがと」


名字さんが可愛い事を言うもんだから、抱きしめている腕に少し力を入れる。
さらに密着すれば名字さんは両手で柚子を持って赤くなった顔を隠して。
俺は隠れきれていない頬に優しく唇を触れる。


「ばか…っ。
風見のせいで私、のぼせちゃうよ」

「自分はとっくに、貴方にのぼせてますよ」