風見パパになる番外編
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十二月七日。
降谷さんの親友の命日だがいつも通り仕事をしてる。
有給休暇使って墓参り行っても良いと思うけどな。
私なんて必ず休んで墓にいるアイツらに話しかけに行くのに。
「名字」
「ん?」
「お昼、一緒に食べないか」
降谷さんの手には二人分の弁当箱。
返事をして後を着いていくと駐車場にやって来て、降谷さんは愛車の運転席に座ったので私は助手席に座った。
受け取った弁当箱のふたを開けると、降谷さんにしては彩りのバランスが悪いおかず。白米の上には肉がびっしり敷かれている。
いただきますをして、まず初めにウインナーを食べた。
…熱がちゃんと通ってなくて生焼けだ。指摘するかどうか悩んでると、降谷さんも同じ事を思ったのか眉間が一瞬寄った。
「今日の弁当は失敗だな」
「生焼けだもん」
「このおかずは親友の好きな食べ物を詰め込んだんだ。彩りも悪いだろう?」
「うん」
「正直だな。
図々しい喋り方をするのは名字だけだよ」
「そりゃあ相手は降谷さんだから」
「そうか。まあ俺も名字だからこうやって誘って食事しているんだが」
今日も名字が生きてて良かったよ。
降谷さんはそう言って肉と白米を食べた。
生きてて良かった…か。
墓参りには行かないが降谷さんは親友の事を思っているのか。
「墓参り行かないの?」
「名字は十二月に必ず行ってるな」
「そりゃあね」
にしても車の中は寒いな。温かい飲み物持ってくれば良かった。
数分で弁当を完食して、仕事に戻るかと立ち上がろうとしたら降谷さんに手首を掴まれた。
「名字は…」
「うん?」
「名字だけは居なくならないでくれ」
「NOCってバレたら自殺するよ」
「お前…!」
「降谷さんに迷惑かけたくないし。
それに私は…降谷さんみたいに日本大好きって訳じゃない。
幼なじみのアイツが警察目指したから私も目指しただけ。アイツが居ない世界なんてぶっちゃけどうなったって良いし。
まあ奴だけはこの手で葬りたいけど」
空になった弁当箱を降谷さんの膝に置いて車内を出た。
今日も仕事で帰れないだろうなあ。手持ちに飴しか持ってないから風見にチョコレート分けてもらおう。
仕事に戻ろうと急ぎ足でいたら降谷さんに背後から肩を掴まれた。
「俺の気持ちはどうなるんだ」
「はあ?」
「俺は迷惑かけられたって良い。
一人残されるくらいなら名字と一緒に逝ったって構わない」
「えっ、何?
気でも狂ったの?」
「俺は…お前の事が「名字さん!」
「あっ、風見だ」
コンビニ袋を持って嬉しそうな顔して駆け足で来た。
降谷さんは風見と正反対で不機嫌そうに顔をしかめてる。
「聞いてください!
ついさっきコンビニで期間限定のチョコレートを入手しまして…貴方の分も買いました!」
「良くやった風見!」
「風見…仕事が片付いていないのに、のんきにチョコレートか」
風見に今すぐ食べましょうと手渡されたチョコをさっそく開封して一口かじった。
酒が少し入ってるな。うん、美味しい。
「このチョコレート美味しいですね!なんて言うか…上品っぽいです」
「確かに」
降谷さんが私のチョコレートをじっと見てくる。
なんだかんだ言って降谷さんも食べたいのか。素直じゃないなあ。
降谷さんの唇にチョコレートを当てれば、口を開けてぱくりと食べた。
「この味は…」
「酒が入ってる。スコッチ」
「スコッチ、か…」
やべえ、スコッチはNGワードだ。
ごめんと謝れば私に笑顔を向けてから頭を小突いてきた。謝らなければ良かったな。
「まあけど…」
「ん?」
「お前がいて、部下がいて、僕は幸せ者だな」
親友の命日なのに降谷さんの口元が上がってる。毎年この日だけはしかめ面になるのに。
明日は雨か雪か槍が降るのかな。降谷さんの機嫌が良いなんて絶対良くない何かが起こるだろ。
「風見」
「はい」
「明日は上空と背後に気をつけて」
「はい…?」