風見パパになる
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ついに土曜日がやって来た。
風見は早朝から仕事で家を出て行き。
もう少しで約束の時間だと思いエントランスの前で待っていると、白のRX-7がやって来た。
「おはようなまえちゃん。
待たせちゃったかな」
助手席を開けた安室さんの好意に甘え、乗り込んでシートベルトを締めた。
首を横に振ってからおはようと挨拶をする。
「今日はどこに行こうか。
なまえちゃんは、お魚さん好きかな?
それとも動物さんの方が好きかな?」
「おさかなさん」
「そっか、今日は水族館でたくさん楽しもうね」
「ん…」
会話をぽつぽつとしながらやって来た水族館。
駐車場に車を止めてチケットを買うために列に並ぶ。
今日はお休みの日だけど思ったより混んでいないね。
みんなパンダを見に行ったのかな。と安室さんは言った。
まあ確かにパンダブームだからな。水族館で正解だったのかも知れない。
私たちの順番になって、安室さんは大人と子供のチケットを一枚ずつ買った。
チケット代を払おうとしたら、僕に奢らせて、と財布すら出させてもらえなかったのでお礼を言う。
「ありがとう」
「どういたしまして。
はぐれないように、お手て繋ごうね」
「…ん」
手を優しく繋いで私の歩くペースに合わせてくれる。うん、子供になれてるな。
全部を見て廻る効率の良いルートは、なんてパンフレットを見てぶつぶつ呟いている。
「…おさかないっぱい」
「うん、きれいだね」
よくもまあこんなに魚を集めたものだな。
餌代もバカにならないだろう。水槽の掃除も面倒くさそうだ。
ああそうだ、今日の晩御飯は焼き魚にしようかな。
それと味噌汁とだし巻き玉子…あと一品は野菜室にある物で適当に作るか。
なんて口にだして言えないから、キラキラだねと言った。
しばらく見てから次の場所に向かった。
水槽がトンネル型になっていて、ふわふわとグラゲが漂っている。
ライトアップもされて、クラゲがよりいっそう綺麗に見えるように引き立てられている。
そう、上ばかり見ていて油断していたのが悪かったんだ。
「動くな!
一歩でも動いたらこのガキを殺す!!」
安室さんと繋いでた手を無理矢理引き離されて、拳銃を持った男に抱えられ、こめかみに銃を当てられた。
こんなガキを人質にとってどうするんだか…。
コイツ以外に銃を持った奴が二人。一人はやせ形、もう一人は太った奴。
小さくなったとはいえ、公安がこんな奴に銃を突き付けられるとはな…。
奴らは近くにいたスタッフに金を用意しろと催促する。警察を呼んだ時点でこのガキの頭に風穴を開けるなんて言っている。
「安心しろ…。
金を受け取ってこのガキを殺したら、金髪パパもあの世に連れて行ってやるからよ……」
パパじゃないし。
どのみち殺されるの前提かよ。
安室さんは私を人質にとられて思うように動けない。
コイツ一人はどうにかできるが、子供の力でもう二人は相手にできるかどうか…。
考えても仕方ない。
どうせ殺すって言っているんだから、やれるだけやってみよう。
「やだやだ死にたくないよぉ!」
「暴れるなガキ!」
じたばたと暴れる振りをして、二つ持っていたうちの警棒を安室さんの方に放り投げた。その警棒は電流が流れる改造した物だ。
安室さんは上手い具合にキャッチして、目を見開く。
異図が分かったのか、ふっと笑って安室さんは私を見つめた。
どうやらタイミングを合わせてくれるらしい。
私は警棒で相手の腕目掛けて振り降ろす。
怯んだ相手の腕からするりと抜けだして、太った奴の方へ走りだした。
二人は焦って撃って来て、その隙に安室さんはやせ形の奴の背後をとって、首もとに警棒を当てた。
膝から崩れ落ちるのを確認して、太った奴の拳銃目掛けて警棒を投げつけた。
拳銃を弾かれた太った奴の隙をついて、安室さんは首もとに警棒を当てる。
どうやら三人共気絶したようだ。
びいびい泣いて安室さんの元へ駆け寄る。
安室さんは私を抱き上げて、よしよしと頭を撫でた。
「こわかったよぉ…!」
「頑張ったね、えらいえらい。
もう怖い人いないから安心してね」
私が投げた警棒を拾って、返すねと二つともバックの中に詰め込んで。
しばらくしたら警察がやって来て事情聴取をされた。
といっても、私は安室さんの胸板に顔を埋めて泣いてただけだけど。
「あの、そろそろ良いですか?」
「すみません。
ご協力ありがとうございます」
椅子から立って安室さんはどこかへ向かう。
ガサッと何かを手にとって、ありがとうございましたと声が聞こえる。
顔をあげてごらんと言われるがままにすれば目の前に大きなイルカのぬいぐるみ。
「なまえちゃんにプレゼント。
また僕とお出かけしてくれるかな?」
「ん…イルカさんありがとう。大事にする」
「どういたしまして」
精一杯の笑顔を向けたら、安室さんはふわりと微笑んだ。