コナンside

「はあぁぁぁ…」

「どうしたの安室さん」

「なまえちゃん不足なんだ…」

「会いに行けば？」

「なまえちゃんのパパに禁止されてね…」


どうやら安室さんは遠足の日になまえちゃんの頭を小突いて、傷が癒えるまで近寄るなと言われたらしい。


「何でなまえちゃんを叩くの…。
好きなら安否を気遣うでしょ」

「つい手がでてしまうんだ」

「いや、ついじゃ済まされないでしょ」


安室さんは一般人より力が強いんだから。
いくら加減してもなまえちゃんは子どもなんだから泣くに決まってんだろ。


「安室さん…またなまえちゃんをいじめたんですか」


お客さんに料理をだして戻って来た梓さんは、眉間にシワを寄せて安室さんを軽蔑するような目を向けている。


「これじゃあなまえちゃんがかわいそうだよ。
なまえちゃんのお父さんが安室さんを訴えてもしらないからね」


安室さんを少し脅してやろうと言ってみたら、梓さんがトドメを刺す言葉を放った。


「あっ。そういえば数日前、なまえちゃんの父親を名乗る人が安室さんのシフトを教えて欲しいと言ってましたよ。
安室さんがシフトの日になまえちゃんがポアロに寄らないよう言ったんじゃないんですか？」

「えっ…」

「自分の溺愛してる我が子が大人にいじめられたら、黙ってるわけ無いですもんね！」


がくんっと膝から崩れ落ちた安室さんは、なまえちゃんの名前をブツブツと呟いてる。
梓さんは「立って仕事してください」と言って肩を揺すっている。いや、こうなったの梓さんのせいだよ。

こうなった安室さんを復活させるにはなまえちゃんを呼ぶしかない。
けどなまえちゃんは安室さんに会うなって親に言われてるだろうし…。


「(まあ一応電話をしてみるか…)
もしもし？」

『どうしたの？
さっき、バイバイした』

「安室さんに会ってくれねえか？
なまえちゃん不足でおかしくなっちまってよ…」

『だめ。パパ、安室さん会うな、言われた』

「そこを何とか…。
あっそうだ、電話で話すのはどうだ？」

『だめ、言われてない』

「そっか…！ありがとな！」


なまえちゃんと電話できるよと安室さんにスマホを貸すと、安室さんは気持ち悪いくらいなまえちゃんに好きだ好きだと言ってる。
これをずっと聞かされているなまえちゃんがかわいそうだ。

安室さんが一方的にスマホ越しに話してる間、梓さんは頑張って一人で仕事をしてる。
約三十分後、安室さんが俺にお礼を言ってスマホを返してくれた。
何か嬉しい言葉でも言われたの？と訊いたらデートの約束をしたらしい。


「今夜なまえちゃんがね、愛のこもった手料理を僕に食べさせてくれるって」


それってなまえちゃんのお父さんも絶対いるだろ。
デートだなんて勝手に舞い上がって、本当にこの人は公安なのか。
俺は安室さんの機嫌を損ねないよう、良かったねと言った。