風見パパになる
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今日は親睦を深めるために一年生全員で遠足に行く日。
まあ遠足って行ってもバスで行ける距離だ。
正直、外遊びなんてしたくない。
家に引きこもっていたい。
木陰で持ってきた本を読んでいたら、担任の小林に皆と遊びなさいと言われ木陰から追い出されたので、本をリュックに入れてため息を吐く。
「(遊べって何して遊ぶの。
ブランコも滑り台もジャングルジムも、この年になってやろうと思わないし。
走り回るのだって、よけいな体力を使うだけだ)」
「なまえちゃん」
「なに?」
「サッカーの相手、良いか?」
「ん…」
サッカーボールを持ったコナン君に誘われたので着いて行った。
気遣ってくれたのか。それとも一人でリフティングは飽きたのだろうか。
「皆は?」
「誘ったんだけど断られちまって。
一人でボール蹴ってたら、先生に友達と遊べって言われて…」
「そう…」
少年探偵団は隣のクラスの子達と一緒に遊んでいる。
コミュニケーション能力凄いなと感心してしまう。
私なんて小学生の時、幼なじみのアイツ以外と遊んだこと無いし。
「そういえばなまえちゃんってサッカーどれくらいできるんだ?」コナン君はそう言ってボールを投げてきたので、その場でリフティングをする。
久しぶりにやったけど、上手くできるもんだな。
ヘディングでコナン君にボールを渡せば、両手でキャッチして瞳を輝かせている。
「スッゲーな!
動きに無駄がなくて、キレイだったぜ!」
「そう…ありがと」
「なまえちゃんが上手いって知ってたら、学校帰りに誘ったのにな」
「たまになら、やる」
「帰ったらまた二人で遊ぼうな」
「ん…」
しばらくコナン君とボールパスをしていると、遠くの方に黒のポルシェが見えた。
ナンバーを確認すると、いつもジンが乗っている車だ。
車から降りたジンはポケットに手を入れてこちらに向かって来る。
「…………」
「なまえちゃん?」
「トイレ」
「一人だと危ないから俺も着いてくよ」
「平気」
むしろコナン君が危険な目に遭うだろ。
ジンに撃たれるかもしれないんだから。
きっと、前にベルモットに会った時に私の存在がバレたのだろう。
まあさすがのジンでもこんな場所で私を殺さないだろう。
「━━よぉ、会いたかったぜ。
今はなまえ…だったな」
「…ジン」
来いと言われて、大人しく後を着いて行く。
大通りに出ると自販機の前で立ち止まりポケットから小銭を出した。
「どれだ」
「一番上のジュースが良い」
自販機に小銭を入れたジンにジュースを手渡されたのでお礼を言う。
もらったジュースを飲むと、隣に立ってるジンがおかしそうに笑っている。
「なに?」と訊けば頭を乱暴に撫でられ、満足したらぱっと手を離してくれた。
ぐちゃぐちゃになった髪を整えるために、ジュースをいったんあずけた。
「(てっきり撃たれるか組織に連れて行かれるかと思ったけど……あれ?)」
「ほらよ」
「ありがと。
今日はどうして会いに来たの?」
「お前、バーボンに探られてるな」
返されたジュースを飲みながら話を聞いた。
どうやら最近バーボンの様子がおかしいと思い、キャンティにライフルを借りて、スコープ越しで私の存在を認識したらしい。
どうして私だと分かったのかと訊いたら、変な食べ物でも食べて骨が溶けたんだろ、と言ってる。
「ジンに私の存在がバレたのバーボンのせいじゃん」
「そのおかげで俺はお前に会えた。
安心しろ。このことは上に報告しねぇ。
もしバーボンに組織に連行されそうになったら、俺がバーボンを殺ってやる」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「お前の事を気に入ってるからだ」
ウソだと思ってたが、ベルモットが言ってた事は事実だったんだ。
気に入られるような事した覚えないけど、お礼を言っておこう。
空になったジュースの缶をゴミ箱に捨てると、ジンは車の方へ歩きだした。
「じゃあな」
「うん、じゃあね」
ジンの車を見送って、私も皆のいる場所に戻ろうと歩きだしたら、白のRX7が目の前で止まった。
グレーのスーツに身を包んだ降谷さんは何やら慌てた様子で車から降りて、私の元へ駆け寄って来た。
降谷さん仕事は?
まさか仮病をつかって一人ドライブ?
なんて思っていたが、どうやら違ったらしい。
「名字!!」
「…?」
「変な食べ物食わされたり、変な薬を飲まされたりしたらすぐに吐き出せ!」
「ジュース、飲んだ…?」
「何で飲むんだバカッ!」
今すぐ吐き出させてやると言って口の中に指を突っ込むから、指をがぶりと噛んだ。
それでも指を奥へ奥へと突っ込んでくるもんだから、懐から警棒を取り出して振り下ろす。
「危ないな…。
名字を思っての行為なのに。今すぐ警棒を差し出せ」
「なまえだもん。
お兄さん、ジュース、もらっただけ」
「じゃあなまえちゃん、あのお兄さんは悪い人だから今すぐジュースを吐き出そうね」
「安室さん、しつこい。
そこの自販機、買ってもらった」
これ以上言ってくるならパパ呼んでやる。
スマホを取り出して電話をしようとしたら手首を捕まれて、警察は呼ばないで欲しいと首を横に振った。安室さんは何言ってんだ?
まあいいや。安室さんを放ってコナン君のいる場所に向かおう。
背を向けて歩きだそうとしたら背後から抱き上げられる。
離して欲しいと足をバタバタしたが、そのまま車の助手席に座らされ、シートベルトを締められた。
運転席に座った安室さんは車を発進させ、私は遠足を無断早退させられた。
「もう心配させるようなことしないで。
キミのパパがお仕事終わるまで、僕の家で一緒にいること。分かった?」
「やだ」
「やだじゃない。
お前がこの世からいなくなったら俺は━━」
私が死んでも降谷さんは悲しまないと思ってた。
ああ同期が死んだな。
嫌いな女がこの世から消えたな。
そんな風に思ってた。
だけど……。
「お前の後を追って死ぬよ」
初めに風見が言ってた。
降谷さんの目の下のクマも凄く、食事もあまりとっていないって。
前に一緒に料理を作った時も、今のお仕事が終わったら会いに行こうかな、と言ってた。
降谷さんは私の事……
「死んでも、着いてくの。
ストーカー。度を越してる」
「はっ…?」
死んだ先も私に嫌がらせをしたいのか。なんて奴だ。
やっぱり風見に連絡して来てもらおう。
ポケットからスマホを取り出せば、ひょいと奪われて、安室さんの右ズボンのポケットにつっこまれた。
「あのな…俺はストーカーじゃない。
お前の事が好きなだけなんだ」
「幼女、好き…。
ストーカー、変態、犯罪者予備軍…?」
「幼女好きじゃなくて、俺はお前が好きだと何度言えば分かるんだ」
「安室さん、怒ってる?怖い……」
「今さら子どものフリしたって…」
「ふぇっ…パパぁ…」
安室さんがあまりにもしつこいからウソ泣きをする。
これで安室さんも口も手もだしてこないだろうと思ったら頭を小突かれた。
どんだけ私の事が嫌いなんだ…!
さらにびいびい泣いて、困らせてやろうと思ったら頭をひっぱたかれた。
こうなったら車の窓から飛び降りて風見の元に向かおう。
シートベルトを外して窓を開け、身を乗り出したら、身体をぐいっと引っ張られて無理矢理座らされた。
「ふえーん!
パパっ、パパぁ!!」
「はぁ…分かったよ。
だから走行中に危ない事はしないで。
風見のいる場所に連れて行くから」
奪われたスマホを私の膝の上にのせた安室さんは、無言で車を走らせた。
着いた場所は公安警察。
泣いてる私の手を引っぱって、ずかずかと中に入って行く。もう自分が公安って隠す気ないじゃん。
「なまえ!?」
デスクで仕事をしていた風見が席から立ち上がり私を抱き上げる。
胸板にぴたりと顔をくっつけると、頭を優しく撫でてくれた。
ああ…また風見の服を涙でびちょびちょにしてしまった。後で謝らないと。
「よしよし、いい子ですね。
あの人に何されたんですか?」
「あたま、たたかれた…」
「叩いてない。少し小突いただけだ」
「なまえに暴力を振るったのは事実でしょう。
なまえの治療をするので早退させていただきます」
「このやりかけの仕事はどうするつもりだ」
「なまえをこんな目に合わせた貴方が代わりにやるべきでしょう。
うちの娘を虐める時間があるなら、雑務をやってください」
降谷さんが雑務をやってる時に、私は風見にたくさん可愛がってもらえるんだ。最高じゃないか。
あまりにも嬉しくて風見の胸板に頭を擦り付ける。
「ああそれと…。
なまえの傷が癒えるまで、絶対に近寄らないでくださいね」
それから家に帰り、頭にたくさんキスしてもらって、最高に幸せな時間を過ごした。