風見パパになる
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今日は小学校でパン教室が開かれる日。
子供達にパンの作り方を教えてくれる人は安室さんと榎本梓。
まあパン教室っていっても、パン生地練って好きな形にするだけだが…。
「なまえちゃん」
「なに?」
「コナン君じゃなく僕を選んでくれてありがとう。とっても嬉しいよ」
「安室さん、選んでない」
「照れ隠しかな?」
「ちがう」
本当はコナン君にキャンプに誘われたが断った。
私がキャンプの話をしたら風見がカップラーメンで食事を済ませる、なんて言ったのが理由の一つ。
もう一つは…私が風見と離れたくないから。
決して安室さんを選んだ訳じゃない。
安室さんじゃなくて風見を選んだの。
「なまえちゃんはどんな形のパンにするのかな?」
「ワンちゃん」
「出来上がったら僕にパンをちょうだい」
「やだ。パパ、あげるの」
「パンをくれたら、僕のお家で美味しいフルーツをごちそうするよ」
「フルーツ…」
美味しいフルーツって何だろう。
すごく気になるけど、このパンは風見にプレゼントしたいからな…。
やっぱりパンは安室さんにあげることはできない、と伝えればパン生地をもう一つ渡された。
「そう言うと思ってね、生地を余分に持ってきたんだ。
これで僕の分も作ってくれる?」
「それなら…」
「ありがとう」
パンの形はハートがいいな。なんて言ってきたが無視。
安室さんは半球の形でじゅうぶんだ。
パンの形を整えて焼いて完成。
完成した物は袋に入れて持って帰って良いらしい。
「なまえちゃん、残った材料をポアロに置いてから僕の家に向かうけどいいかな?」
「ん…。
トイレ、行く」
「じゃあ僕はなまえちゃんが用を足す姿を見てるよ」
「止めて。気持ち悪い。
下駄箱の前、待ってて」
手提げ袋にパンを入れて、スケボーと手提げ袋を安室さんに渡してからトイレに向かう。
用を済まして、下駄箱で靴を履き替え安室さんの元に行こうとしたが、どこにも居なかった。
「(…いない。おかしいな)」
下駄箱に戻って見ると、安室さんが履いていたスリッパは返却されている。
それなら愛車の前で待ってるのかなと思い駐車場に行ったが、戻った様子は無かった。
もしかしてどっかに隠れて風見の分のパンを食べてる?
いやいや、安室さんがそんな事するはずないよな…。
まあ風見に電話して安室さんと連絡とってもらえばいいか。
数コールすれば風見と連絡が繋がった。
安室さんが居ない事を伝えれば、安室さんに電話をかけてくれると言ったので折り返し電話を待とう。
「(早くフルーツ食べたい…。
ん、風見から電話だ)」
『もしもし、なまえ?』
「パパ、安室さんは?」
『かけたのですが繋がらず…。
電波の届かない場所にいる、と』
「ありがと。
…ねえ、学校に来てくれる?」
『ええ、構いませんが』
校門前で待っていると、数分で駆けつけてくれた。
私をひょいと抱き上げた風見の頬にキスしたら、風見も私の頬にキスしてくれて嬉しくなっちゃう。
本当はもっとして欲しいけど歯止めがきかなくなりそうだから、家に帰ってからおねだりしよう。
「パパ、倉庫に向かって」
「倉庫?なぜです?」
「あそこに地下に続く扉があるの。
何かしらの理由で倉庫の地下に入った安室さんは、さっきの地震で物が崩れてきて扉が開かなくなった……」
「ああ、それで電話が繋がらなかったのですね」
「予想だけどね」
倉庫に来てみれば物が散乱している。
やっぱりさっきの地震で倒れたのか。
風見は私を地面に降ろすと、倒れている物を次々と退かしていく。
「これで良いですか?」
「ん、ありがと。
地面にある扉、開けてくれる?」
「はい。
それでは開けますね…」
風見が扉を持ち上げて開けて中を覗いて見れば、安室さんと同じクラスの二人がろうそくを囲むようにして座っていた。やっぱり出られなくなっていたのか。
二人はようやっと出られて嬉しそうだ。
坂本たくまが風見と私にお礼を言った後、東尾マリアはこんなことを言いだした。
「安室さんが言ったとおり風見さんが見つけてくれた!ありがとう!」
…もしかして、安室さんに試された?
よく考えれば、スマホを電波の届く場所まで放り投げればメールで助けを呼ぶことができる。安室さんが思いつかない訳がない。
二人が去って、ろうそくの火を消した安室さんは階段を昇って、預けていたスケボーと手提げ袋を返してもらった。
中身を確認したら、風見の分はちゃんと残っている。
さすがの安室さんでも人の分は食べなかったらしい。
「大丈夫、風見の分は食べてないよ」
「…ん」
「それにしてもすごいなあ。
よく僕が閉じ込められてるって分かったね。
ねえなまえちゃん。普通さ、風見じゃなくて校舎に残ってる先生に助けを呼んだ方が早いよね。
どうして風見を呼んだのかな?」
「パパが安室さん、見つけたの。
電話で安室さん、いないの話した。
そしたらパパ、来てくれた」
スケボーを地面に置いて、隠れるように風見の足にしがみついたら抱き上げて頭を撫でてくれた。
風見の胸板に顔を埋めれば、風見の匂いがいっぱいで口元がゆるんでしまう。
ああ、早くパンと引き換えにフルーツが欲しいな。
持ち帰って良いなら風見と一緒に食べたい…。
「そんな訳ないだろ。
風見は推理して人探しなんてできない。
ウソをついてまでキミが見つけた事を隠し通す理由は━━キミが名字だからだ」
…声が完全に降谷さんになってる。
まあ確かに、風見は推理ゲームよりソシャゲを好むけど。
けど人探しなんてできないは言い過ぎでしょ。風見がかわいそう。
それにしても、どうやってこの場を乗りきるか…。
公安の情報を流した裏切り者は特定できたし、もういっそうの事話す?
いやいや。もし本当の事を話して、何で風見とのキスがよくて僕とのキスがダメなんだ。何て言いかねない。
風見とのキスを禁止されたらどうしよう。
「…あのね」
「やっと話す気になったか」
風見の肩を軽くとんとんと叩けば、安室さんと向き合うように抱えなおしてくれた。
いくら考えてもダメだ…もうウソと本当の事を混ぜて話そう。
「安室さん見つけたの、私」
「やっぱりか」
「ウソついたのは…。
本当のこと知ったら、安室さん、けーべつする、思った」
「僕が軽蔑するわけないだろう」
「本当の理由、それはね…。
一人じゃ先生、話しかけられない。
けどパパなら、話せる。来てくれる。
パパ、私の大好きなキス、して欲しかったの。
パパとのキス、大好き。パパ以外、キスしたくないの」
安室さんは、がくんっと膝から崩れ落ちて、手で顔をおおってる。
なんだこの犯人を追い詰めたようなワンシーンは。
「キミの口から、そんな言葉を聞きたくなかった…っ」
「そう…。
安室さん、フルーツちょうだい」