風見パパになる
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朝、アラームの音で目覚めた。
隣を見ると一緒に寝ていた安室さんの姿が無い。
キッチンからこの部屋まで匂いがわずかにもれているから、朝食を作ってくれているのだろう。
洋服に着替えようとタンスの引き出しを開けようとして気づいた。
いつもわざと一ミリ開けてあるのに、きっちりと閉まっている。
…アイツ私が寝た後にタンスを開けたな。
よく見るとぬいぐるみと充電器の位置が違う。
「やっぱり…」
あのやろう。
私のスマホをいじりやがった。
まあけど、パスワードが分からなくて諦めたのだろう。
手袋でタッチした痕跡は残っているが、スクロールした痕跡は残っていない。
スマホの電源を入れてから、着替えと手洗いうがい、顔を洗ってリビングに行く。
「おはようなまえちゃん」
「おはよ…」
「調度良いタイミングだね。朝食できたよ」
「…ん」
元の姿の時、嫌がらせなのか降谷さんの家に招かれてセロリのフルコースを出されて辛かった…。
しばらくセロリを見たくなかったぐらいだ。
それに比べて今日は…。
玉子焼き、ほうれん草のおひたし、みそ汁、ご飯。
いかにも日本をこよなく愛する降谷さんの朝食って感じだな。
いただきますをして、初めにおひたしを箸で掴んだ。
「おいしい」
「だしは、冷蔵庫にあったやつを勝手に使らせてもらったよ」
なまえちゃんの口に合って良かったよ。安室さんは笑顔で言葉を続けて言った。
だしとは、大鍋で一度にドバっと一週間分ほど取っておいて、それを耐熱の冷水ポットに入れて…冷蔵庫に保存した物だ。
「昔、だしを飲んだヤツらがいてね。
その一人が名字で…麦茶だぞーって言って、僕が無理矢理飲ませて吐かせちゃったんだけど」
「へぇ」
「あの時は楽しかったなぁ…」
「楽しかったの?」
「うん、好きな子はいじめたくなるって言うでしょ?」
いやいや、降谷さん。
私のこと絶対に好きじゃないよね。毎回私の扱いひどかったじゃん。
「キミは好きな人いないのかな?
…例えば僕、とか」
「安室さん、大切な人。いじめない」
「僕もなまえちゃんが大切だよ」
降谷さんは大切な人だけど、私の一方通行っぽいからな。
前に大切な人と同じ顔してると言われたが、大切に扱われた事なんて無いし。
警察学校時代。
初対面の私に放った第一声、お前まな板だな、だぞ?
まあけど、腹立って即殴りかかったが。避けられたけど。
全て食べ終わったら安室さんは食器を下げて洗いに行った。
水を飲もうとイスから立ち上がり、冷蔵庫からペットボトルを取り出して、コップにミネラルウォーターを注いで飲んだ。
「水、飲む?」
「お願いしようかな」
「ん…」
私のコップでいいかと思い、注いで安室さんに渡す。
お礼を言われ、コップを受け取ったらイッキ飲みをした。
それにしても、風見はいつ帰って来るのだろう。安室さんに訊けば分かるかな。
安室さんが洗い終わって濡れた手をタオルで拭いていると、テーブルに置いていたスマホが震えた。
画面を見ると風見の電話番号十一ケタが表示されている。
仕事終わったのか?そう思いつつスマホを通話にして耳に当てた。
「パパ…?」
『あっ繋がった。
もしもーし、キミ風見さんの娘だよね』
「おじさん…だぁれ?」
『おじさんだなんて失礼だなぁ。
俺はまだ二十代だよ』
電話越しで聴こえるこの声は…。
確か公安の…新しく入ってきた風見の部下の声だな。
どうして風見のスマホからかけてきたんだ?
スマホをスピーカーにして安室さんに聴こえるようにする。会話も録音しておこう。
「パパは?」
『キミのパパは手錠で繋がってるよ』
「どうして?」
『キミのパパが見てはいけないのに見たからだよ』
手錠で繋がっている?
だったらどうやって風見の部下は電話しているんだ。
しかもそんなに声をだしていたら拘束した奴らに見つかって…。
違う、もしかして風見の部下は…。
「見た?なぁに?」
『俺と、悪い組織の人との会話』
公安の裏切者だ。
『今からいう場所に来てくれるよね』
「来なかったら…?」
『パパを殺す。
もちろん警察に電話したり、交番に行ったらだめだよ』
「…分かった」
『良い子だね、場所は』
相手は指定場所を言って来たが、私は遠くて一人でいけないと返した。
「私、お兄ちゃん、遊んでもらってる。
場所、送ってもらって良い?」
『そうだね……良いよ』
じゃあねと電話を切られたので、安室さんに送ってと頼んだ。
だけど首を横に振って私が行くのを反対する。
「なまえちゃんは家で大人しく待っているんだ」
「けど、パパが…」
「キミのパパは僕が必ず助ける」
「……分かった。約束」
「うん、約束するよ」
車のキーを貸してくれるかな?と言ったので、風見の部屋に置いてあるキーを安室さんに渡した。
「…安室さん」
「なんだい?」
「パパと安室さん…。
この家、帰って来てね」
「もちろん」
安室side
風見が拐われた。
もしもの時のために拳銃を持ってきて良かった。
俺はツバ付きの帽子をかぶって、車を走らせる。
近くのパーキングに停めて、車を降りる。
指定場所は廃ビルの屋上。
出入口には人がいない。建物の中に潜んでいるのか、それとも相手は一人なのか…。
気を引き締めて一階二階…順に階段を上ったが人の気配は感じない。
屋上へ続くドアノブをひねって扉を開ける。
そこには拘束された風見と…。
「あれ、娘は?」
「あの子は車に置いて来た」
「せっかく親子揃って殺そうとしたのにな…」
風見の頭に銃を突きつけている、風見の部下。
「人質を離せ」
「ダメだ。
せっかく風見さんの部下を演じてたのに、組織の情報を聞かれたからな」
「組織だと?」
「そう。
俺は公安に潜り混んだんだ。
組織に裏切り者がいないかどうか…。
そしたら裏切り者を一人見つけてね、名字っていう女」
そうか…コイツが名字を……。
今すぐ引き金を引いて殺してやりたい。
けどコイツを殺さず、生かして拘束すれば、組織の情報が手に入るが…。
「(俺が撃とうとすれば、コイツは俺より早く引き金を引く。
そうすると風見は確実に死ぬ…どうする)」
「娘に父親の死ぬ瞬間を見せられなかったのは残念だなあ。
さようなら、風見さ━━っ!?」
どっからか飛んできた弾丸が相手の持っていた拳銃に当たった。
相手の持っていた拳銃は弾き飛ばされて地面に転がる。
今がチャンスだと思い、俺は相手の懐に潜り込み鳩尾に拳を叩き込めば、相手は気を失った。
ポケットを漁って手錠のカギを手に取り、風見の手錠を開けてやる。
「ふぅ…怪我はないか風見」
「はい…降谷さん、申し訳ありません」
「構わない。それにしても、さっきの弾丸…」
この廃ビルの絶好の狙撃ポイントは700ヤード先のビルだったはず…。
そんな事ができるのは俺の知る限り二人しかいない。
一人は赤井。もう一人は…。
「(名字……)」