風見パパになる
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食器を洗っていると、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
こんな朝早くから訪ねて来る奴はアイツしかいない。
風見が玄関へ向かうのを確認して、濡れている手をタオルで拭いた。
私も玄関へ向かえば、やはりというべきか安室透がいた。
「パパ…安室さんきたの?」
「ええ…。
なまえを貸して欲しいと頼まれて……」
「おはようなまえちゃん」
風見パパの足にしがみついて、おはようと小さな声で返す。
キッと睨み付ければ、眉尻を下げて頬を掻いた。
「なまえちゃんと争う気はないよ。
…なまえちゃん、ごめんなさい。昨日のはちゃんと処分した。
だから今日は、僕と一緒にお出掛けして欲しくて」
「おでかけ…?」
「なまえちゃんにあげるプレゼント、買いに行きたいな」
物のプレゼントなんていらねえよ。
私にとって、パパと二人きりの時間が最高のプレゼントなんだよ。だからさっさと帰ってくれ。
…と、口にださない私はえらいと思う。
小さく頷けば安室さんは私の頭を優しく撫でて、私がクツをはくと安室さんが外に出るので後を追う。
RX7の車に乗ってシートベルトを締めた。
行き先を訊いたら、少し遠出になるとしか教えてくれない。
安室さんは話しかけて来ないので、外の景色をずっと眺めていた。
大きな建物の駐車場に車を停めて、シートベルトを外して外に出ると、安室さんは私の手を優しく握る。
「色々考えて…なまえちゃんに腕時計をプレゼントしようと思って」
「とけい……」
「好きな色、柄を選んでね」
店に着いたらケースに入った腕時計を見せるために、私を抱き上げる。
…どう見ても値段のゼロが多すぎる
子供にプレゼントする物じゃないだろ
しかもサイズだって全く合わない
「ゆっくり選んでいいよ」
適当に選んで安室さんを満足させよう、なんて思ってケースの中に入った腕時計を眺める。
「…あっ」
「気に入ったのがあったかな?」
降谷さんの瞳と同じ色の腕時計が目にとまった。シンプルで使いやすそうだ。
値段を見ると…他のより高い。ダメだな。
二番目に安い腕時計をコレと指差して、さっさと帰るか。
「…コレ」
「だめ。
うそついたら、だめ」
「えっ」
「なまえちゃんが欲しいのはコレでしょ」
安室さんが指差したのは、降谷さんと同じ瞳の色の腕時計。
どうして分かったんだ…。
安室さんをじっと見れば、コレだけ他の腕時計より数秒長く見ていたから、だそうだ。
安室さんは店員を呼んで、コレくださいと頼んでケースから出してもらう。
会計はカード払い。
腕時計の入った袋を受け取り、安室さんは私の手を握って歩きだす。
「行きたい場所があるんだ」
「…?」
「大切な人から教えてもらった、特別な場所」
再び車に乗りこんで安室さんは発車させた。
どこへ向かっているのだろう。
外の景色を眺めていると、だんだんと馴染みのある景色に変わっていく。
着いたと車を停めた場所は元の姿の私が、ここの景色が好きなんだ、と降谷さんに言った場所だ。
地面は芝、柵の向こうには景色が一望できる。人が全く寄りつかない、そんな場所。
「キミとここへ来たかった」
「どうして…?」
「キミが僕の大切な人と、同じ顔をしているからさ」
安室さんは膝をついて私と同じ目線ぐらいになると、頬をするりと撫でた。
思わず後ずさりをすると「俺から逃げるな」降谷さんの口調で、腰をぐっと捕まれて身動きがとれなくなる。
「安室さん…?」
「今は安室さんじゃない。
お前なら分かるだろう……名字」
降谷さんに見つめられて、腰を捕まれて、逃げることができない。
……動揺したらだめだ。
少しでも降谷さんが私の仕草に違和感をもったら、問い詰められる。
「何いってるの。
私、なまえだよ」
「しらばっくれるな。
昨日の俺への攻撃で確信した。
一度目の水族館では半信半疑だったが、昨日の動きをできるのは名字しか居ない。
憶測にすぎないが…こうじゃないか。
名字は追われていたが、ベルモットと名字は仲が良い。
そこでだ、誰よりも早く名字を発見したベルモットは怪しげなクスリを名字に飲ませて幼児化させ、名字は風見の家に居候している」
うわぁ…当たってる
だけど、ここで肯定する私じゃない。
子供の姿になってまで降谷さんに虐められる、なんて嫌だからな。
「名字…それ、ママの名字」
「………は?」
「ママ、パパと一夜のやままちの子供、言ってた。
けど、もうママ、いない。だから、パパに引き取られた」
ごめんごめん本当にごめん風見。
変な設定付け加えちゃったよ。
アイス一週間我慢するから、許して欲しい。
心の中で謝っていると、降谷さんは掴んでいた腰を離した。
「…恋愛経験ゼロの名字に甘い言葉を吹き込んで、風見はヤるだけヤって、名字を捨てたのか……!?」
「パパ、なまえ、可愛がってくれてる。
安室さん、お顔、こわい…」
「あぁ…ごめんねなまえちゃん、恐がらせたね」
「安室さん、ベル…だぁれ?」
「なまえちゃん、さっきのは忘れてくれるかな?
どうやら勘違いしていたみたいだ」
小さく頷けば頭をぽんぽんしてきたので、どうやら誤魔化せたか?
「…帰ろうか」
「ん…」
降谷さんから安室さんに戻って、私の手を握って車へ戻る。
何となく握り返せば、安室さんは目を細めて口角が上がる。
「そうそう、プレゼントした腕時計…。
キミが大人になった時につけて欲しいな」
気が向いたらつけるとは口にだして言わない。
「前話した、素敵な女性、いなかったら、つける……」
「それまで大切に持っていてね」
小指を立ててこちらへ向ける。
私も安室さんに小指を向ければ、きゅっと指を絡めた。
「指切りげんまんウソついたら針千本飲ませたくないから…。
約束破ったら、キミの唇もらおうかな」
「きもちわるい」