風見パパになる
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久しぶりに風見のために朝食を作ろうと思ったが、一緒に寝ていたはずの風見が居なくなっている。
布団に手をついてみると、まだほんの少し温かい。
トイレでも行ったのか?そう思い、寝室の扉を開けると部屋中が焦げた臭いがする。
「くっさ!
何なんだこの臭い…」
臭いの元をたどってみると、台所で風見が悪戦苦闘していた。
風見に声をかけるとびくりと肩が震え、ゆっくりと振り返る。
「…風見」
「すみません!
朝食を作ろうとしたら焦がしました!」
「そんなにお腹、空いてたの」
「いえ…痛めた名字さんのために、自分が、と」
「で、焦がしたの」
とりあえず換気しよう。
窓を開ければ焦げた臭いが部屋から逃げていく。
風見が私を思って行動したのは嬉しいから怒れないなぁ…。
「風見、できない事は一人で無理にやらなくて良いよ」
「すみません…」
「何のために私がいると思ってるの。
……二人で一緒に作れば良いでしょ」
「っ、はい!」
とりあえず手洗いうがいと顔洗ってくるから。風見に言って用を済ませ、再び台所にやって来た。
風見が焼いた何かは真っ黒で、食べられそうにないので燃えるゴミ箱に捨てた。
冷蔵庫を開けて見ると期限が切れそうな卵と牛乳。小麦粉。それと調味料くらいしかない。
「うーん、ホットケーキなら作れるけど…。
朝から甘いもの食べられる?」
「平気ですよ」
「じゃあ決まり。
そこの戸棚に入ってる、ベーキングパウダー、砂糖とって」
ボウルに小麦粉とベーキングパウダー、砂糖を混ぜ合わせる。
混ぜ終わったら、牛乳と卵を入れてまた混ぜる。
「混ぜたから生地をバターをひいたフライパンに流して」
「こう、ですか…?」
「そうそう。
で、弱火で三分くらい。
その後ひっくり返して」
自分にできるでしょうか…。
不安そうな言葉をする風見に、成功したらほっぺにチューしたあげるよパパ。そう言えば風見の目付きが変わった。
深呼吸をしてから風見は生地をひっくり返した。
崩れずちゃんとひっくり返して焼き加減もバッチリだ。
一度成功して調子がでたのか、二枚目三枚目四枚目もキレイに焼けた。
「できました!」
「うんうん、上手に焼けたね。
パパにごほうびだよ」
しゃがんだ風見のほっぺに唇を軽く押し付けて離れると、私を抱き締めた。
「なまえ、可愛すぎですよ…!
今度は自分からなまえにしてもいいですか?」
「いいよ」
「では、失礼しますね…」
一旦、私を離して深呼吸する。
逃がさないかのように私の腰をがっちり掴んで、ゆっくり風見の顔が近づいてくる。
唇が触れるまであと数センチ。
もう少しってところでピンポーンと玄関のチャイムが鳴ったので、風見は私から離れて玄関へ向かった。
後を追うと玄関には安室さんがいる。
「昨日の事でお話がありまして…。
立ち話では長くなりそうなので、部屋に入れてもらえますよね」
「…はい?」
「部屋に入れろ」
風見の了承を得ずに勝手に入って行く安室さん。横暴すぎる。
イスに座った安室さんの正面に風見は私を膝の上に乗せて座った。
昨日の事があるので、もちろん怯えるフリを忘れない。
「…今日はなまえちゃんに謝りに来ました。
本当に、ごめんなさい」
思わず演技を忘れそうになる。
警察学校時代、私の事を鼻で笑った降谷さんが私の目の前で頭を下げた。
私が今見た光景を疑いたくなるレベルだ。
「それで、一晩中考えたんです。
一度ならず二度までもなまえちゃんを傷つけて、どうやって許しをもらえるか」
「はぁ…」
「ねぇ、なまえちゃん。
大きくなったら……僕と結婚しよう」
「…はあぁぁ!?
だめです!何言ってんですか!
なまえは誰にもあげませんよ!!」
…ついに降谷さんの頭おかしくなったのか。
一晩中考えて、どうやって結婚にたどりつくんだ。
というより以前も結婚がどうとか言われて断ったぞ。
「第一、なまえは結婚しません。させません」
「年老いたら、なまえちゃんが一人で死んでしまうでしょう」
「貴方の方が確実に早く逝くでしょう」
「僕、二百歳まで生きるので」
「何言っているのですか。
死ぬに決まっているでしょう」
…安室さんと風見パパの口論が終わらない。いつになったら終わるんだ。
パンケーキ冷え冷えになっちゃうよ。
風見パパの袖を引っ張って言えば、咳払いを一つする。
「なまえは絶対にあげません。
ですが、なまえには安室さんを構ってあげるよう言いますので、どうぞお引き取り下さい。
それともなまえに安室さんに近づかないように言っておきますか?」
おお…風見パパが安室さんに対して好戦的だ。
後で降谷さんに小言言われても知らないぞ。
けど、降谷さん、安室さんでもコイツとだけは結婚したくないから風見パパの言葉はありがたい。
何故なら、今まで過ごしてきた中で降谷さんとの良い思い出がないからだ。
誕生日プレゼントの時だって、降谷さんが手作りプレゼント寄越せって言われて渡した物だから。
「分かりました…。
なまえちゃんに近づけないと僕は困るので、今まで通りお願いします」
「分かりました…。
いいですか?なまえ、安室さんに何かされたら言ってくださいね」
「……ん」
風見がよしよしと頭を撫でるので、小さく頷いた。
安室さんは、ほっと息を吐いてイスから立ち上がり、お邪魔しましたと玄関へ向かう。
風見は安室さんを見送るために後を追った。
抱き抱えられた私を見て安室さんは振り返り…。
「例えなまえちゃんが僕をキライになっても…。
僕にとって特別ななまえちゃんだよ」
熱のこもった瞳で私を見つめて顔を近づけてくる。
全身に鳥肌がたった私は思わず痛めていない手で握りこぶしをつくって、安室さんの顔面に拳を突き出して殴った。
安室さんは少しよろめき、殴られて赤くなった鼻を手でおさえて、口元が笑ってる……!?
「パパ、安室さん、気持ち悪い。
殴られて、喜んでる」
「安室さん…早く帰ってください」