風見パパになる
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「じゃあ風見さん、また明日」
「ん…バイバイ哀ちゃん」
哀ちゃんと別れて工藤邸へ帰れば、沖矢昴の格好をした赤井秀一がタバコを吸っていた。
私の姿を見てタバコを灰皿で火を消して、吸いかけのタバコを捨てる。
「ただいま…もうタバコ吸わないの?」
「子供がいる前では吸わないさ」
意外だ。私に気をつかっているのか。
嫌みな奴だと思っていたけど良い奴…なのか?
降谷さんは親友を見殺しにされて、赤井秀一を恨んではいるが……。
「そういえば、沖矢昴の姿なんだな」
「ああ、そろそろキミが家出したことに気づいて、キミのパパが捜索する頃だろうと思ってな」
「それはないだろ。
ここに住み着いてかなり経っているんだそ?
何をいまさら……」
一応訊くが今日の夕飯は何がいい?
いつもは何でもいいと答えるが、珍しくチャーハンとスープが良いとリクエストした。
チャーハンはエビが入ったやつがいい。そんなことを言うがエビなんて無いぞ。私はエビのためにスーパーへ買いに言った。
チャーハンとスープを作って食べ終わり、使った食器を洗う。
いつもは風呂に入りに行く時間なのに、今日は大人しくソファに座っている。
今日の赤井秀一は一体どうしたのだろう。
洗い終えると赤井秀一は、こっちへ来い、と私に呼び掛ける。
大人しく近寄れば、身体を引き寄せられて赤井秀一の膝に乗せられた。
「子供体温だな」
「そりゃ子供の姿だからな」
「離れる前に、こうやってスキンシップをとるべきだったか」
「はあ…?」
「俺はキミの事は嫌いじゃない。
キミはどうだ?」
「別に嫌いじゃないよ。
こんな私を住まわしてくれてるし」
ピンポーンとチャイムがなった。
こんな時間に誰が来たんだ…。
赤井秀一は私を抱き上げて玄関へ向かう。
「こんばんは。
なまえちゃんを引き取りに来ました」
「こんばんは。なまえの父です。
なまえが大変お世話になりまして…。
ほら、なまえ。帰りましょう」
「この子の父親と、この間の宅配業者の方ですか…。
ここで立ち話も何ですので、リビングで会話しませんか?」
「いえ…会話は結構です。
なまえちゃんを返してもらいましょうかっ!」
安室さんはすばやく手を伸ばし、私を引き寄せて自分の手元に納めようとしたのだろう。
だがそれを素早く避けて「おっと、野蛮な人ですね」そんな事を言って余裕だったのか涼しい顔をする赤井秀一…ではなく沖矢昴。
私を抱えてリビングに向かう沖矢昴を見て安室さんは舌打ちをする。
「大人しく返せばいいもの…。
風見、僕達も後を追うぞ!」
「は、はい!」
バタバタと足音をたててこちらへ向かう二人。
風見はとりあえず安室さんの指示に従っている感じだ。
安室さんなんか避けられた事に腹がたったのか、瞳がバーボンモードになっている。
「まるで話を聞いてくれませんね」
「言葉巧みになまえちゃんを拐ったんだろう!」
安室さんはファイティングポーズをして、もうケンカする気は満々だ。
風見は安室さんを止めようと声をかけるが、うるさいと怒鳴られる。
「返してくれないのであれば…少々痛い目にあわすまでだ!」
安室さんは沖矢昴の顔めがけて何度も殴りかかるが、全て避ける沖矢昴。
まあ避けるか。
一回でも当たったら、変装だってばれるだろうからな。
「なまえちゃんを返せ!」
「返す前に会話をしましょうと言いましたが?
すぐ手をだす人になまえちゃんを任せられませんし」
「なまえちゃんには手を出してないだろう!」
「ふむ…。
では、これはどうですか」
沖矢昴は自分の顔の高さに、私を持ち上げる。
安室さんはそれに反応できず、そのまま拳を振りかざしてきた。
このまま私の顔面が殴られたら、顔が変形するだろ!
今の私は腕と手だけ自由に動かせる。
とっさに顔の前で腕をクロスさせて、安室さんの拳を受け止めた。
「っ…!(いってぇー!!!)」
「なまえ!!」
「なまえちゃん!!」
こいつ、それなりの力で殴りやがった!
公安だったら振りかざした拳を止めろよ!
安室さんの動きは完全に止まったが…どうするか。
とりあえずウソ泣きをしておこう。
「ふぇーん!
いたいよぉ!!」
「おやおや、泣いてしまいましたね…。
だから会話をと…言いましたのに。
風見さん、お子さんを返します」
「なまえっ、なまえ!」
風見は私を優しく抱きしめて、何度も謝罪した。
沖矢昴はどうぞお使いくださいと救急箱を風見に手渡した。
「こんなに赤く腫れ上がって…なまえ、ソファに座りましょう」
「ふぇっ…パパやだぁ!」
「嫌だ、じゃないでしょう…。
ケガを放置して悪化したらどうするんですか!」
「やだやだやだ!
殴ってきた安室さんも、人前だからって心配するフリをするパパもキライ!」
「なまえ…言うことを聞け!!」
初めて風見が私に向かって、タメ口を吐いて怒鳴った。
思わず肩がびくりとはねあがり、ウソ泣きの涙が引っ込んだ。
大人しくソファに座って処置を受けるが、謝る気は一切無いからな。
「あのね」
「…はい」
「パパに…迷惑かけないように、荷物を持ち出して、家出した」
「…はい」
「腕を組んで、彼女と歩いたの、見たの」
風見の目が一瞬だけ大きく見開いた。つまりは図星。
ふぅ、と息を吐いて風見はゆっくりと口を開く。
「分かりました。話します。
ですが…家に帰ってからにしましょう。
言っておきますが、自分はなまえの事をキライではありませんからね」
「………ん」
沖矢昴は私の荷物を風見に渡す。
受け取ったそれを片手で持ち上げて、もう片方は私の身体を持ち上げる。
先程から静止している安室さんの肩を叩けば、今にも泣きだすんじゃないかってくらい瞳が潤んで、ごめんと謝った。
「安室さん謝罪はもういいです。
今からなまえと家に帰るので…安室さんも帰りましょう」
お邪魔しましたと玄関を出れば工藤邸の前に風見の車が停まっている。
私は助手席に座らされて、安室さんは後部座席の真ん中に座った。
安室さんを家に送って、それから二人で住んでいた家に帰宅した。その間に会話は一言も無い。
久しぶりの家だ。
風見は私を椅子に座らせて、その後に自分も正面の椅子に座る。
「…まずは謝ります。
なまえが家にいないと気づいたのは今日です。すみません」
「彼女との時間が楽しかったから?」
「違います、彼女ではありません!
あの女性はハニートラップを仕掛けていた人で…」
「ハニートラップぅ?」
風見ハニートラップが下手くそなのに?
狙った獲物は逃がさないハニートラップ名人降谷がいるのに、あえての風見?
「あの女性は我々公安が追っていた組織の令嬢でして…。
初めは降谷さんが担当でした。
ですが降谷さんが女性に言われたんですよ…金髪男ムリ、って…」
「む、ムリって…!」
思わず笑ってしまった。
あの降谷さんでもムリって断られるんだ。
「降谷さんの代わりに、自分が慣れないハニートラップを仕掛けて女性に近づきました。
といっても腕を組まれただけです!
接吻とか、夜這いとかしてませんから!!」
「…風見、年寄りみたいな言い方だな」
うっと言葉を詰まらせて、ずれていないメガネを親指の腹を使ってかけ直す。
「じゃあ任務で忙しくて帰って来れなかったって?家に帰って来れないほどに?
一人で留守番くらいできるよ。
だけど、お風呂は一人で入れますよねって…風見が一緒に入ろうって言い出した事なのに?」
「も、申し訳ございません!!」
風見は頭をすごい勢いで下げ、テーブルに額をぶつけてゴンッとすごい音がした。
顔をあげれば額が赤くなっている。
私はテーブルに乗り上げて風見の額にそっと触れた。
「名字さん…?」
「私も、勝手に出ていって悪かった。
風見は私の事が邪魔で、風見は優しいから、言い出せなかったかと思った」
「そんな…邪魔だなんて思っていません。
貴女は自分にとって大切な人、ですから」
「大切…そうか、そうだな。
私も風見裕也が大切だよ」
赤くなっている額に触れるだけのキスをすれば、風見の顔が真っ赤になる。
ゆでダコみたいだな、と私が笑う。
風見は口元に手をあてて俯いてしまった。
「今のは…ズルいです。
なまえが可愛すぎて、直視できないじゃないですか…!」
「顔を真っ赤にしてる風見の方が可愛いよ」
ああ…。
やっぱり赤井秀一といるより、風見裕也といる方が居心地良いな。
しばらく会えなかったからパパと一緒にいたい、って言っても良いよな?