風見パパになる
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「お昼ご飯、何か食べたい物あるかな?」
「あむろさん…」
「ん?」
「安室さんの、りょうり」
安室さんは私の頭を撫でて、それじゃあ行こうか、と車を発進した。
正直、店の料理は信用ならない。
何を盛られるか分からないからだ。
厨房が見えない店は論外だからな。
それなら害の無い安室さんの作った料理が良い。
てっきり私はポアロの厨房を借りて作る物だと思った。
誰が想像しただろうか。
まさか安室さんのセーフハウスに連れて来られるなんて。
「良いこで待っててね」
「ん」
椅子に座って安室さんから貰ったイルカのぬいぐるみを抱き締めた。
うーん、料理が完成するまで暇だ。
辺りをきょろきょろと見渡していると降谷さんが私用に買ったコップや箸やらと、生活用品がまだ残っている。
まだあったのか。てっきりゴミ箱に捨てたのかと思った。
しばらく経つと目の前にオムライスが置かれた。匂いだけで美味しいって分かる。
ぬいぐるみをいったん手放して、スプーンを手に取った。
「スプーン大きいのしかなくてごめんね。食べられるかな?」
「ん、大丈夫。
…いただきます」
「いただきます。
どうぞ、めしあがれ」
スプーンで掬って口に運んだ。
卵はふわとろ。
味は薄過ぎず濃すぎず、ちょうど良い味付けだ。
「おいしい」
「よかった。
お口にあったみたいだね」
安室さんは私の顔を何度も見ながら、自分の分のオムライスを口に運ぶ。
安室さんはくすっと笑ったので私は小首を傾げて、どうしたのと訊いた。
口元に米が一粒ついていると言って安室さんは指で優しく拭った。
「ご飯粒ついてるよ。
気付かないくらい、夢中だったのかな?
それともスプーンが大きくて食べづらいかな?」
私が持っていたスプーンを安室さんは取ってスプーンに一口分のせると、そのまま私の口元へ運ぶ。
「あーん」
「ん、」
大人しく運ばれた物を食べると再度あーんをしてきた。
えっ、これ食べ終わるまでやるつもりなの?
安室さんも食べなよと促すが、後で食べると言って私が食べ終わるまでずっと繰り返し食べさせられた。
「…ごちそうさまでした」
「はい、ごちそうさまでした。
僕は残りを食べるてるから、なまえちゃんお皿を台所に置いてきてくれるかな?」
「ん、分かった」
お皿を置き、安室さんのいる部屋に戻って来て、椅子に座ってイルカのぬいぐるみを抱き締める。
やることがないので安室さんの顔をじっと見た。
やはり以前と比べると少し痩せたような気がする。
目の下のクマはなまえとして初めて会った時よりか薄くはなっている。
「ごちそうさまでした。
お皿洗って来るから待っててね」
「ん…」
安室さんが台所へ行くとスマホの電話が鳴った。
風見からだ。
通話ボタンをタッチして耳に当てた。
「もしもしパパ?」
『今休憩中で、なまえは何をしているんだろうと思って電話をかけました』
今どこにいると訊かれたので、安室さんのお家だよと答える。
『えっ、降谷さんの!?
どうしてそうなったんですか!
まさか名字さんについて根掘り葉掘り問いただしているんじゃ……』
「ただオムライスを食べただけだよ」
風見は安堵して、それじゃあ続きは家で、と言ったら気配を消して私の背後に安室さんが立っていた。
「誰と電話しているのかな?」
「パパだよ」
「なまえちゃんのパパか…。
電話越しでもいいから挨拶をしたいな。ダメ?」
「ん、分かった」
ここで拒んだら疑われると思い、大人しくスマホを渡す。
ありがとうと受け取ってスマホを耳に当てた。
安室さんは私から見て背後を向けているため、表情は伺えない。
「こんにちは、安室透と申します。
この度はなまえちゃんと遊んでもらい…………。
ああ、そんなに謝らないでください。
こちらこそ貴方に謝る件がありまして…。
水族館へ遊びに行った時、なまえちゃんが悪い人に捕まってしまい、大変怖い思いをさせてしまって………ええ、なまえちゃんは勇敢に悪い人に立ち向かって…パパに似て正義感が強い人なのかな?
将来なまえちゃんは公安に所属されるくらい優秀な子ですよ、ふふっ」
風見…声色でバレてるぞ。
せめて声変えて電話しろよ。
次会った時、絶対降谷さんになまえの事訊かれるな。
安室さんは一言二言話してから、私にスマホを返してきた。
「はい、返すね。
そういえばなまえちゃんの名字訊いてなかったね。なんていうんだい?」
「かざみだよ」
「かざみ…へえ、風見か。
なまえちゃんのパパに会ったら、また改めて挨拶するね」
にこりと笑った顔は、まるでバーボンのようだった。
探られているぞ風見。
うまくごまかしてくれよ、と私は願う事しかできない。