明日は，部活がない休日ということで海斗の部屋で二人でゆっくりと過ごしていた。


「海斗くん，何の本読んでるの？」


先程までスマホのゲームをやっていた彼女が本を読んでいた海斗に話かけてきた。


「現代文の授業でやった『こころ』を読んでる」


「あぁ，夏目漱石のだよね？あのお話すごく長いよね～」


「長いと登場人物の心情が変化していくのが分かって面白ぇんだよ」


普段は，近寄り難い雰囲気を出している海斗が本のことになると熱く語り始めるその姿が可愛く思えた。


「本のことになると熱くなるよね。海斗君のそういうところいいと思うよ」


「…そうかよ」


頬を赤く染めて視線を逸らしながら話す海斗。さらに彼女は彼に問いかけるために話を続けた。


「そういえば，夏目漱石ってI love you を月が綺麗ですねって訳したことで有名だよね」


「…お前は，そういうことだけはしっかりと覚えているんだな」


「だって月が綺麗ですよって普通訳さないでしょ？ロマンチックじゃん！」


頬が緩みうっとりとする彼女を見て彼は呆れた表情でため息を零した。そして彼女は海斗にある質問をした。


「…海斗君だったら I love you をどうやって訳す？」


「はぁ！？いきなり何だよ！？」


「恋人として海斗君がI love youをどう訳すのか知りたいの！」


「マジかよ…」


彼女は真っ直ぐに彼を見つめながらお願いをしてきた。

しばらくして海斗は少しため息をついてから呟いた。


「…一回しか言わねえからな」


「…えっ？」


すると彼女の腕を掴んで自分の方に引き寄せた後耳元に唇を寄せて囁いた。


「俺の傍から離れるなよ」


「…海斗君！」


彼の男らしい言葉を聞く度にどんどん貴方の虜になっていくのだった。


〇 小野木海斗の I love you の訳し方
＝「俺の傍から離れるなよ」