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お願いキスして10題

「ーーーえっ、うわっ!?」

急に体重をかけてきた彼を支えきれずに、仰向けに倒れこんだ。
ヒノエと二人並んでベッドに腰掛けながら、何をするでもなくぼうっとしていただけなのに。
一体何だというのだ。特に甘い雰囲気になっていたわけでもないし、何よりまだ昼間だ。まさか、今からというわけではあるまいな……、

「……なあ、この世界の、これ……ベッド、ってさ」

こちらを見下ろして、ヒノエが唐突に言った。

「柔らかくて、いいよな」
「あ、ああ………」

本当に、どうしたのだろう。
確かに自分もそう思うことは事実だが、今言うことか? 彼は一体、何が言いたいのだろう。
動揺しながらも、ヒノエの言葉を待った。

「今みたいなことしても、痛くないし」
「……ああ」
「………なあ敦盛、手繋ごう」
「て、手を?」
「そう。顔の横ぐらい…オレに手の平が見えるように、手出して」
「え、ええと」

急にそのようなことを言われても、戸惑ってしまう。あたふたとしていると、こうだよとヒノエが手を取ってきて、自分の言ったように導いた。
そして、布団の上へついていた自分の手を私の手の平へ重ねて、指を絡めるように握った。彼がそのときに肘を曲げたものだから、ぐっと顔が近づく。

「…………」

そして、もっと顔が近づいた。唇が重なる。私の手を握る彼の手に、少し力が入ったのが分かった。それに応えて、こちらも先ほどよりは強く彼の手を握る。

「………」

唇が離れた。手を解かれて身体も離れたので、身を起こした。
……何だったんだ、今のは。

「ヒノエ、その……いきなり、どうしたのだ」
「んー、いやさ」

ヒノエが上体を完全に起こして座り方を変える。きし、とベッドが音を立てた。

「手繋ぎたいって気持ちと、お前に口づけしたいって気持ちが一気に起こったから……今いっぺんにやるには、ああするのが一番かなって」

嫌だったらごめん、と言う彼に、嫌ではないが、と返した。
そうしたら彼はにっと笑って、

「じゃあ、またやってもいいってことだね」

……と。
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