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守りたいひと

このところ、源氏としての仕事の方が忙しく梶原邸にあまり来れていなかった。九郎と共に幾日かぶりに訪ねれば、すぐに怨霊退治に行こうということになった。
皆が庭に集合し出したところで、「脚が痛いから今日は休ませてくれ」と申し出てきたのは景時だ。「どうしたの兄上」と、朔が目を丸くした。

「朝、庭を歩いてたら転んじゃってさ〜……。倒れたとこにちょうど石があって、それが刺さって」
「もう……。気をつけてもらわないと困るわ、兄上は八葉なんだから」
「ごめんごめん。すぐ治しちゃうからさ……今日はちょっと、勘弁してよ。ね」

困ったように笑いながら、左脚の太腿をさする景時。弁慶はそれを何気なく眺めながら、心の内では心配で堪らなかった。歩くのがつらいほどに痛い、ということはそれなりに深い傷であろう。ならば薬師の心得のある自分が然るべき手当てをした方が、確実にいい。

「あの」

言うと、景時を含めて皆の視線がこちらに集まった。

「それなら、僕も今日はここに残りましょうか。傷が痛いなら、手当てをした方がいいと思うんです」
「え……あ、あー……確かに、そうだけど」

何やら景時の目が、泳ぎ出す。

「けどいいの? なんだか悪いな」
「僕は構いませんよ。ちょうど、血止めや痛み止めの薬はこの間作ったばかりですし」
「そ……そっか。でもほら、君が抜けると八葉が三人も欠けることになっちゃうよ。望美ちゃんを守る人は、多い方がいいと思うけど」

ちらり、景時が望美へ視線を送る。

「私のことは気にしないでください。今日は景時さんと弁慶さんの分まで、頑張りますから」
「ん……そお? そうかぁ……」
「兄上。遠慮のし過ぎも失礼よ。弁慶殿が言ってくださってるんだから、お言葉に甘えさせてもらってはどう」
「……」

完全に困った顔で、景時が弁慶の方を見てきた。それへ弁慶は、にっこりと微笑みを返す。

「……分かったよ」

暫しの間の後、景時が言った。

「そうだよね。ごめんね弁慶。また迷惑かけることになるけど」
「いえいえ。僕だって君に色々世話になってます。お互い様ですよ」
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