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雪中の君

時が、止まったようであった。
弁慶は景時の銃を取り上げたまま、景時は唖然として弁慶を見つめたままの格好で固まっている。
数瞬後、景時の目から顎へ伝った涙がぽつりと彼の太腿へ落ちて、弁慶は我に帰った。

「馬鹿なことはよしてください」

努めて静かに言った後、取り上げた銃を持ったまま戸を閉めに行く。銃を戸の下(もと)へ置いて、景時の前へ戻った。

「……どうして……」
「なんだか、嫌な予感がしたんです。昼間には大丈夫と言っていた君ですが、どうしても信じられなくて……。僕の思い過ごしならそれでいいから、様子だけでも見に来ようと思ったんです」
「……」
「……やっぱり、大丈夫ではなかったんですね」
「…………」

景時の顔が、ぐしゃりと歪んだ。昨日と同じ。顔を覆って泣き出す彼の背を、身体全体で包むように抱く。今度は、彼の身体を温めるためではない。少しでも、彼を安心させるためである。
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