*松野千冬*
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俺には大好きな先輩がいる。
一つ上の先輩、苗字名前先輩。
たまたま廊下ですれ違ったとき、この人が俗に言う”運命の人”だと思った。そう、一目惚れ、というやつだ。
そして驚くことに、名前先輩は俺のバイト先のペットショップで働いていたのだ。
本当に運命の人だと思った。
「先輩」
「……なに?」
バイトを終えた先輩に声をかけると、先輩はぶっきらぼうに応える。
俺はそんな先輩のぶっきらぼうな態度すらも好きで好きでたまらない。
「このあと、空いてますか」
「ごめん、用事あるから」
このようなやり取りも、何度もした。ちなみに先輩は一度も俺の誘いに乗ってくれたことはない。
先輩は手早く帰り支度を済ませ、ペットショップを後にする。
颯爽と歩いていく先輩に、俺は見惚れていた。
***
次の日。
たまたま下駄箱で先輩を見つけた。声をかけようとしたとき、先輩は何やら封筒を手に取っていた。俺は瞬時にその封筒がなんなのか理解した。
先輩はその封筒を手にしたまま、校舎の裏側へと歩いて行く。
俺は気付かれないように気を付けながら、その後をつけた。
校舎裏へ着くと、先輩と、男が一人。
――やっぱりそうか。
あの封筒は、先輩を呼び出すためのものだったのだ。
「苗字さん、俺と付き合ってくれないかな」
少し自信があるような表情で男は言う。が。
「ごめんなさい、好きな人がいるので」
先輩は即座に、キッパリと、断った。そして踵を返し、颯爽とその場を後にする。
いや待て。好きな人がいる……?そんなの今まで聞いたことがない。そんな気配すら感じたことはない。一体誰なんだ。
校舎裏で悶々と考えていると、角を曲がってきた先輩と目が合った。
「……盗み聞き?」
「えっ、あっ、そんなつもりは」
「ふぅん?」
先輩はそれだけ言って妖しく微笑む。
そんな微笑みに、心臓がドキリと跳ねた。
先輩が俺に微笑んだのは、これが初めてだった。
「じゃあ、私バイトあるから」
そう言って、先輩は校舎裏を後にした。
俺は高鳴る心臓を抑えながら、しばらくその場に立ち尽くしていた。
***
「……先輩、好きな人いるんスね」
先輩と店仕舞いをしながら、俺はその言葉を吐き出す。
先輩は作業していた手を止め、「やっぱり、聞いてたんじゃん」と返す。
「……っ、誰、なんスか」
こんなことを聞いても、いつものようにぶっきらぼうに適当な返しをされるだけだとわかっていても、俺は聞かずにはいられなかった。
「なんでそんなこと聞くの?」
ああ、やっぱり。
予想通り、先輩はぶっきらぼうに返す。そんな先輩がいつもは愛おしいと感じていたのに、今は苛立ちを覚える。
――今ここには、先輩と俺しかいない。
俺は先輩の腕を掴むと、無理やり机の上に組み伏せた。
「なにす――」
「先輩が悪いんスよ」
驚いた表情をしている先輩。そんな表情、今まで見たことがない。
自分の中でなにかドロリ、とした黒い感情が込み上げてくるのを感じた。
――俺のものにならないならいっそ、無理やりでも。
俺は先輩の手を片手で固定しながら、スカートをたくしあげる。
「やめっ、嫌!!」
先輩の口から、今まで聞いたことのない声が出る。
いつもの余裕のある口調はどこへやら。あれだけ大人びて見えていた先輩が、今はただの少女に見える。
そんな風にしているのが自分なのだと考えると、ひどく興奮した。
「暴れると痛いッスよ」
先輩の耳元で熱っぽく囁く。すると先輩の身体はビクリ、と跳ねた。
「耳、弱いんスね」
「そんなことなっ、ぁっ」
先輩の耳朶を甘噛みすると、小さく声が漏れる。
ああ、本当に、たまらない。
俺は耳を舌で弄りながら、空いた手で先輩のショーツの上から割れ目をなぞる。そこは少しだけ湿り気をおびていた。
「耳だけで濡れるって、相当ッスね……」
「ぅぁ……っ、なん、で、こんなっ」
なんで?
そんなの、決まっている。
「先輩が他の男のものになるのが嫌だから」
そう言って俺は先輩のショーツを剥ぎ取り、まだ十分に解れていないそこに自身のものを挿いれこんだ。
「ぃっ、痛い!やだ、嫌、やめてッ」
涙目でそう訴える先輩をよそに、俺は後ろから腰を打ち付ける。先輩の中はとてもキツくて、温かくて、気持ちがいい。
何度か律動をすると、だんだんと中は解れていき、店内には卑猥な水音と腰を打ち付ける音が響く。
「あっ、は、ぁっ、松野、くんっ」
「千冬って呼んでください。名前さん」
先輩の口から甘い嬌声が出る度、俺の気持ちは昂って。
ああ、あの先輩が、今は俺のものになっている。
そう考えれば考えるほど、俺の中のドロリとした感情が大きくなっていく。
俺はどんどん腰の律動を早め、先輩の奥を突き続ける。
「せんぱ、い、出る……っ、中に出しますね……!」
「!?」
先輩は目を見開いて何かを言おうとしたが、俺はそんなのお構いなしにゴツン、と一番深い場所を突き、そこに自身の欲を吐き出す。が、まだ足りない。
「先輩……、名前先輩……っ、好きです、誰にもわたしたくない……っ」
「あっ、あぅっ、ひぐっ……、うぁっ、あっ」
俺の声は届いていないのか、先輩は嗚咽と嬌声を漏らすだけ。
でも、それでもいい。だって今、先輩は俺のものなのだから。
俺は腰の律動を再開し、容赦なく先輩に打ち付ける。その度に先輩は嬌声を上げ、俺のものを締め付ける。
「ち、ふゆ……っ」
突然呼ばれた名前に、俺の腰の律動は止まった。
「私、だって……、君が好きだったのに……っ、なんでこんなことするの……?」
「……は?」
ドロリとした感情が、一気に引いていく。
先輩が、俺を好き?そんなバカな。だって、あんなに俺に興味がないといった態度だったのに?
「こんな状況で嘘吐かないでくださいよ」
そう、嘘に決まっている。
今の状況をどうにかするための、嘘。
「嘘じゃな……ッ、んあっ!」
俺は停止していた腰の律動を再開した。
先ほどよりも乱暴に先輩に腰を打ち付ける。
「んぅっ、あっ、あぁぁ!」
先輩の身体がビクン、と跳ねたと同時に、俺はもう一度先輩の中に白濁とした欲を吐き出した――――。
***
数日後。
先輩はペットショップのバイトを辞めていて、学校で見かける回数も少なくなっていた。
たまに見かけると、やはり先輩は綺麗で、凛としていて。
あのとき先輩が俺に言った「好き」という言葉の真偽は、結局分からず仕舞いだった。
なんてことをしてしまったんだろう、と、俺は毎日後悔に苛まれていた。
一番大好きな先輩に、あんなことをしてしまった自分を思い切り殴ってやりたい。
「千冬」
下駄箱で項垂れている俺の名前を、凛とした声が呼ぶ。
その声の主は、姿を見ずともわかった。
名前先輩だ。
「校舎裏で待ってる」
そう言い残して、先輩は颯爽と消えていった。
***
本当は呼び出しに応じるつもりはなかった。
だけど、やっぱり俺はまだ先輩のことが好きで。
せめてあの日のことを謝ろうと、校舎裏へ向かう。いや、謝って済む話ではないことはわかっている。
先輩の姿が見えたとき、俺の鼓動が一気に早くなる。早く、早く謝らなければ。
俺の姿に気付いた先輩は、早足で近付いてくる。
「先輩、俺……」
パシン、と、乾いた音が響く。
あまりにも突然のことに、俺は一瞬何をされたのか理解できなかったが、頬の痛みで平手打ちをされたことを認識する。
「これでチャラにしてあげる」
真剣な表情で先輩は言う。
チャラにする?一体何を?まさかあの日のことか?
「いや、チャラ……って」
「千冬」
凛とした声で、俺の名前を呼ぶ先輩。
「あの日のことは、これでチャラ。あんなことは無かった。いい?」
「……はい」
目を伏せて、小さく返事をする。叩かれた頬がジンジンと痛む。喧嘩で殴られたときよりも痛いかもしれない。
「じゃあ、俺はこれで」
俺は踵を返し、校舎裏を後にしようとする。
そんな俺の手を先輩は掴み、引き留めた。
「なん、すか」
「好きだよ、千冬」
俺の目をまっすぐに見て、先輩は言った。
でも俺はその言葉を理解できず、立ちすくむ。
あんな酷いことをしたのに、好き?いや、意味がわからない。
「千冬は?」
混乱する俺をよそに、先輩は問いかける。
放課後の喧噪の中、俺と先輩の間だけは静寂に包まれているように思った。
「好き、です」
嘘なんて、吐けなかった。
何度も諦めようとしたけれど、やはり諦められなくて。
だから先輩から呼び出されたとき、今日、この場で終わりにしようとしたのに。
だけど、俺はどうしようもなく、先輩が好きだった。
「大好きッス」
「そう」
先輩はそれだけ言って、微笑んだ。
「じゃあ、これからもよろしくね、千冬」
そう言って、先輩は放課後の喧噪の中へと消えていった。
俺のものになってよ
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