*三ツ谷隆*
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最近三ツ谷くんの様子がおかしい。
私にはじめて服を作ってくれた日から、一緒にいられる時間が減ったのだ。
部活が終わったであろう時間に部室へ行くと、「今日は一緒に帰れない」と言われてしまうし、家に遊びに行こうとすると、「用事があるから」と断られる始末。
一度浮気を疑ったが、三ツ谷くんに限ってそれは絶対にないと断言できる。
ではなぜなのか。
その答えは実はもう出ている。
「名前、これ。作ったから着てみて」
「また作ったの!?」
そう、三ツ谷くんは私の為にずっと服を作ってくれていたのだ。
ただ、その頻度が最近多くて、私は三ツ谷くんがちゃんと寝ているのかとか、ちゃんとご飯を食べているのかとか、色々と心配になってしまう。
「三ツ谷くん、無理してない……?」
「なんで?俺、名前の服作るの好きだし、何も無理してねぇよ」
いやそういう問題ではない。
私は小さく溜息をつくと、「今日もまだ部室にいるつもり?」と聞く。すると三ツ谷くんは少し考えた後、「今日は帰るよ」と返した。
「今度のデートさ、それ着てきてよ」
帰り道、唐突に三ツ谷くんに言われる。私が頷くと、三ツ谷君は満足そうに微笑んだ。
***
家に帰り、自室のクローゼットを開ける。
そこには三ツ谷くんの作ってくれた服が何着も入っていた。どれも可愛いし、何より三ツ谷くんが私のために作ってくれたことが嬉しい。が、さすがに怖くなってきた。こんな短期間でなんでこんなに作ってくれるのだろう。そりゃ普段の私は地味な服ばかりだけれど。
そんなことを思いながら、今日もらった服を着てみる。
「まさかのオフショルダー……」
今回の服は、薄い水色のオフショルダーワンピースだった。胸下にリボンがついていて、全体的にふんわりとしている。
こういう服のデザインはどこから出てきているのか毎回謎だ。しかし自分で言うのもアレだが、どの服も不思議なことに私に似合っているのだ。
「可愛いけど、肩の露出がなぁ……」
私は少しだけ悩んだ後、ワンピースを脱ぎ、クローゼットへとしまった。
***
デート当日。
私は三ツ谷くんから貰ったオフショルダーのワンピースではなく、以前自分で買った無地のフリルワンピースを着てきていた。
「あれ、この間あげた服じゃねぇの?」
「あ、うん。ちょっと肩が出てるのが恥ずかしくて……」
「ふぅん」
その日、三ツ谷くんはいたって普段通りだったのだが、どこか不機嫌そうな空気を漂わせていた。
私は何かしてしまったのかと不安になったが、結局何も言えないまま帰宅した。
帰宅後、私は部屋着を取り出す為にクローゼットを開ける。
なんだかどんどん三ツ谷くんの作った服に浸食されていっている気がしてならない。
たまには自分好みの服を選んで買ってみたい、と思うが、唯一買ったのが今日着ていったワンピース一着のみ。でもこのままずっと三ツ谷くんに服を作ってもらうのはいけないような気がする。
私は携帯を取り出し、三ツ谷くんへメールを送った。
しばらくして、家のインターホンが鳴った。
両親は買い物からまだ帰ってきていないため、私が対応するしかない。
読んでいた漫画を床に置き、小走りで玄関へ向かう。
「はい」
少しだけ扉を開けて相手を伺うと、そこには三ツ谷くんがいた。
なんで、とか、どうして、とかそんなことを考える前に、何故か”逃げなければ”という思考が働いた。
私は急いで扉を閉めようとするが、三ツ谷くんが足でそれを制止する。そして無理やり扉を開け、家の中へと入ってきた。
「み、三ツ谷くん……?」
「これ、どーいうこと?」
三ツ谷くんは笑顔で私が先ほど送ったメールを見せてくる。
顔は笑っているが、内心は絶対に怒っている。
「もう服は作らないでって、なんで?」
「それは……、私もちゃんと自分で……」
「そんなことしなくていいよ」
三ツ谷くんがゆっくりと私を抱き寄せる。そして私の背中を撫でるようにして触る。
「名前の好みも、サイズも、全部俺が一番わかってるんだからさ。だから俺が作ったもの以外着る必要ねーんだよ」
口調は優しいが、私は不気味で仕方がなかった。一体三ツ谷くんは何を言っているんだろうか。いや、理解はできるが、私だって自分の意志というものがある。自分で選べず、与えられるだけなんて、そんなことは望んでいない。
私は無理やり三ツ谷くんの腕から離れる。
「確かに私、三ツ谷くんから服を貰うまではずっと地味な服ばかりだったし、それしか似合わないって思ってたけど、三ツ谷くんから服を貰ったおかげで自信が出たし、可愛い服着てもいいんだって思えた!だからすごい感謝してるよ?でも、ずっと三ツ谷くんの作った服ばかり着るのは……私、できないよ……」
そう言い切ると、三ツ谷くんは一瞬驚いた顔をした後、「そんなことか」と笑った。
「名前は俺の作った服以外は似合わねーよ。どんなブランドの服着ても、俺の作った服が一番似合う。マナとルナも言ってたぜ?俺の作った服を着てる名前が一番綺麗で可愛いって。それに、俺名前の服を作ってるときがどんなときよりも一番楽しくて、幸せなんだ。だからこれからも作っていたいんだ」
ああ、もう、何を言っても無駄なのかもしれない。
きっと三ツ谷くんの意志は変えられない。私が変わるしかない。
「わかった……」
「うん、それならよかった」
三ツ谷くんは満面の笑みで言うと、今度は強く私を抱き締めた。
私はただただ虚空を見つめていた。
あなたを纏う
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