*三ツ谷隆*
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私は彼氏の三ツ谷くんの部屋でファッション雑誌を見ていた。三ツ谷くんはと言うと、妹さんたちのためにぬいぐるみを塗っている。
「名前お姉ちゃん!遊ぼ―!」
三ツ谷くんの妹のマナちゃんが私の服の袖を引っ張る。私は笑顔で「いいよ」と答え、読んでいた雑誌を鞄にしまう。
そして私とマナちゃんとルナちゃんは、公園へと向かった。
***
帰宅した私は着替えを始める。無地のロングスカートを脱ぎかけたところで、姿見に映る自分を見る。
そこには地味な自分の姿。中学生の格好とは到底思えない。
それでも、私はこういう服しか似合わないのだ。あの雑誌に載っているような可愛い服なんて、絶対に似合わない。
クローゼットの中にもそんな地味な服ばかりが入っている。
本当は私だって、可愛い服が着たい。だけどどうしても勇気が出ないのだ。似合わなかったらどうしよう、という不安があった。
「……あれ?」
鞄の中を片付けようとして、違和感を感じる。
雑誌がないのだ。
三ツ谷くんの家に置いてきたのか、と思うが、私は確かに鞄に入れたはずだ。
私は不思議に思いながらも、鞄に入れた気になっていただけで、三ツ谷くんの家に置いてきてしまったのだろう、と思い込んだ。それに、あの雑誌に載っている服はきっとマナちゃんとルナちゃんに似合うはずだ。子供服ではないが、三ツ谷くんなら似たような服を作れるだろう。
***
「採寸?」
「そう。名前くらいの背格好の女子の服とか作ってみたくてさ」
「えっ、そんな難しいの作れるの!?」
「いや、だから練習」
私は練習台か!
そう心の中で思いながら、私は渋々了承した。
「動くなよー」
「う、うん」
採寸なんていつぶりだろうか。三ツ谷くんの手が身体のあちこちに触れる。そして胸を採寸しようとする三ツ谷くんを、「ちょっと待って!?」と制止する。
「胸まで測るの!?」
「そりゃそうだろ」
冷静に答える三ツ谷くんはまた採寸を始めようとする。
「いや、あの、胸はさすがに、いいんじゃないかな!?」
「だーめ」
そう言って三ツ谷くんは私の胸に腕を回し、採寸を始めた。
私はというと、あまりの恥ずかしさに硬直していた。
「はい、終わり」
「はい、ありがとうございました……」
なんだかすごく疲れた。三ツ谷君はいたって真面目だったのだから、私もそれに応えようとは思っていたが、まさか胸まで測られるとは。
まあでも、三ツ谷くんの役に立てたのなら、それは嬉しいことだ。
「私帰るけど、三ツ谷くんはどうする?」
「俺も帰るよ」
そう言って三ツ谷くんは帰り支度をする。
私はそれを待ちながら、なんで突然女物の服なんて作ろうと思ったんだろう、という疑問が浮かんだが、将来の為なのかもしれないと勝手に納得した。
「あ、俺手芸屋寄ってくから、先に帰ってて」
「わかった。洋服作り、頑張ってね!」
ごめんな、と言って三ツ谷くんは私の額に口付けを落とす。ほんと、こういうところずるいんだよなぁ。
私は軽く手を振り、帰路につく。一体どんな服を作るのだろう、と楽しみにしながら。
***
二週間後の土曜日。私は三ツ谷くんに呼ばれ、家にお邪魔していた。
マナちゃんとルナちゃんと遊んでいると、三ツ谷くんに呼ばれる。私は二人に「少し待っててね」と言って、三ツ谷くんのもとへ行く。
「どうしたの?」
「これ、着てみて」
そう言って三ツ谷くんは私に何かを手渡す。私は不思議に思いながら、それを広げてみると、それは白いフリルのついたロングスカートだった。
「え、これ、作ったやつ……?」
「おう」
「着てみて……って私が?」
「名前以外に誰がいるんだよ」
三ツ谷くんは微笑みながら、私を部屋に押し込む。
絶対こんな綺麗なスカート、私に似合うはずがないのに。
そう思って着るのを渋っていると、マナちゃんとルナちゃんがスカートを見て、目を輝かせていた。
「すごーい!これ名前お姉ちゃんが着るの!?」
「ねえねえ、早く着てみて!」
そう二人に言われてしまったら、もう着る以外の選択肢がない。
私がジーンズを脱ぐと、ルナちゃんが「ピンクだ!」と大きな声で私の下着の色を言った。
私はすぐに「しーっ!」と自分の口に人差し指を当てる。いや、もう今更遅いのだが。絶対三ツ谷くんに聞こえたに違いない。
「わぁ……」
三ツ谷くんの作った白いフリルスカートは、まるでウェディングドレスのような、でも派手すぎず、可愛すぎない、ともて大人っぽい服だった。
「着れたか?」
「あ、うん!」
私が返事をすると、三ツ谷くんが部屋に入ってくる。
「うん、やっぱ似合ってる」
三ツ谷くんはそう言って満足そうに微笑んだ。マナちゃんとルナちゃんも「綺麗!」「お嫁さんみたい!」と私の姿を見て言う。
「すごいね、三ツ谷くん。この服、練習で作ったとは思えないよ」
「練習じゃねぇよ」
「え?」
私がキョトン、としていると三ツ谷くんはもう一着服を渡してきた。
それは袖がふわりとした、淡いピンクのパフスリーブのトップスだった。
「これも着てみて」
「えっ、ちょっと待っ」
言い終える前に襖の扉が締められる。
これもまた、着る以外の選択肢はない。
私が今着ているトップスを脱ぐと、ルナちゃんがまた下着の色を叫ぼうとしたので、それは全力で阻止した。
「か、かわいい……」
襟と袖についているレースのフリルが可愛さを演出しているが、大人っぽさもあった。
スカート、トップスのどちらも完璧すぎる出来で、これを着る女の子はきっと綺麗なのだろう、と思ったところで私は何かがおかしいことに気付いた。
一体この服は、誰にあげるのだろうか。
私は勢いよく襖を開けると、驚いた顔をした三ツ谷くんがいた。
「これ、誰にあげるの?」
少し怒気のこもった声で言うが、三ツ谷くんは何も答えない。
世の中には、沈黙もまた答えなり、という言葉がある。
つまりそういうことか、と私は思い、泣きそうになる。
「え、ああ、わりぃ、見惚れてた」
「は?」
「誰にあげるって、名前に決まってんだろ?」
「え?」
そんなまさか。私にはこんな綺麗な服勿体ないし、そもそも似合うはずがない。
「いや、私には似合わないよ……」
「そんなことねぇよ。すっげー似合ってる。な?マナ、ルナ」
「似合ってる!」
「名前お姉ちゃん可愛いー!」
三人にそう言われると、さすがに照れるというものだ。
「名前、もっと自信持て。名前はスタイルもいいし、可愛いんだからさ」
「で、でも私……」
「でも、じゃねーの。ほら、もう夕方だし、送ってく」
***
帰り道、着慣れない服を着ているせいか、嬉しいような、恥ずかしいような、そんな気分だった。
そんな私を見ながら、三ツ谷くんは何度も「可愛い」「似合ってる」と言ってくるものだから、余計に恥ずかしい。
「ああ、そうだ。今後の参考に写真撮っていいか?」
「写真!?」
「うん。また服作りたいからさ」
そう言って三ツ谷くんは携帯を向ける。どうしたらいいのかわからず、棒立ちになっているとシャッター音が聞こえた。
「え、ちょっと今の撮ったの!?」
「おう」
「恥ずかしいから無理!消して!」
「だーめ」
三ツ谷くんは悪戯っぽく笑って、携帯を仕舞う。
なんとかして消してくれないか三ツ谷くんに言うが、今後の為なら仕方ない、と思い、写真を消させるのは諦めた。
***
自宅の姿見で、改めて三ツ谷くんから貰った服を見る。
本当に可愛いくて、まるでお店に売っているもののようだった。
ファッション雑誌に載っているような、憧れていた服を着れた私は、しばらく姿見の前から離れることができなかった。
あなたの写したわたしは
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