*場地圭介*
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同じクラスで同じ団地に住んでいる場地圭介は、頭が悪い。
一度最後まで教室に残って勉強している圭介のノートを見たが、ひどいものだった。これは勉強と言えるのか、と頭を抱えるくらいに。
その日から、私は毎週日曜日に圭介の家で勉強会をすることにした。
勉強会と言っても、私がほとんど圭介に教えているのである意味塾と言ってもいい。
今日は数学の勉強をしていたのだけれど、私も数学はひどく苦手な為、参考書を片手に四苦八苦しながら教えていた。
「数学なんて将来絶対使わないっての……」
勉強会が終わった後、私は参考書に突っ伏していた。
疲労困憊、といった私の目の前に麦茶の入ったコップが置かれる。
「ありがと」
「俺の方こそありがとな!」
ニカッ、と笑う圭介を見て、こいつはちゃんと理解したのだろうかと心配になる。
はぁ、と溜息をつきながら麦茶を飲み干し、参考書やらノートやらを片付け、帰り支度を済ませる。
「じゃあ私帰るね」
「もう帰んのかよ。ペヤング食ってけよ」
「いやもうペヤングは飽きました……」
毎週ペヤングを食べさせられてるとさすがに飽きる。
「じ、じゃあ、これ持ってけ」
そう言うと、圭介は私に向かって何かを投げる。
「何これ。猫のぬいぐるみ?」
「……おう」
「いきなりどうしたの」
「いつもの礼だよ!お前、そういうの好きだろ」
ぬいぐるみが好きだなんていつ言っただろう。いや確かに好きだし、猫は一番好きだ。
「……あ、もしかしてキーホルダー」
「……」
圭介は顔を赤くしてそっぽを向いたまま、小さく頷いた。
私の鞄や筆箱には猫のキーホルダーが付いている。まさかそんな細かいところを見ているなんて。
なんだか嬉しくなった私は、そのぬいぐるみを抱き締めて「ありがとう」とはにかんだ。
自室のベッドで圭介から貰ったぬいぐるみを眺めていると、ぬいぐるみの後ろにファスナーがついていることに気付いた。
「なんだろ、これ」
ゆっくりとファスナーを下ろすと、中にはなにやら紙が入っていた。
え、なにこれこわっ、とか思いながら、ゆっくりと紙を取り出す。
紙には「名前へ」と書かれていた。この字はいかにも圭介だ。間違いない。
丁寧に折られた紙を開くと、どうやらそれは手紙のようだった。
「……え」
たったの二行しかない手紙。
だけどその内容は衝撃的なもので、私の顔は一気に赤くなり、気付いたら圭介の家に向かっていた。
「お、おばさんっ」
「あら名前ちゃん。どうしたの?」
「圭介いますか……!」
「いるわよ。ちょっと待っててね、呼んでくるから」
インターホン越しに圭介のお母さんが圭介を呼ぶ声が聞こえる。
するとすぐに圭介が家から出てきた。
「どうした、名前」
「て、手紙、読んだ……」
「……」
「……」
お互い顔を赤くしたまま沈黙する。
「……あれ、作ったの、三ツ谷くんでしょ」
「なっ、なんでわかったんだよ」
「こんな仕掛けできるのなんて、三ツ谷くんくらいだもん」
もらったぬいぐるみの背中にあるファスナーを圭介に見せる。
そしてそのぬいぐるみを私は強く抱き締め、圭介の目を見つめる。
「わ、私も、好き!」
「……」
ポカン、としている圭介を見て、もしや私は何か間違ったのだろうかと思い、一気に血の気が引いていく。
「いや、あの、ええっと、あの手紙の内容、もしかして勘違い?だったかな……?あ、あはは……やだなー……恥ずかしいな……」
完全にやらかした。もう終わった。穴があったら入りたい。
そんな考えが駆け巡り、涙が出そうになる。
「ごめん……帰るね」
私は踵を返し、自分の家へ帰ろうとした。
「おい待て!」
「……っ」
圭介の声に一瞬足が止まるが、すぐに歩き出す。
が、思い切り腕を引かれ、私は圭介に後ろから抱きしめられた。圭介の長い髪が、私の肩にかかる。
「け、圭介」
「”いつもサンキューな。好きだ、名前。”」
圭介は私の手にあった手紙の内容を読み上げる。
そして私を自分の方へ向かせると、真っ赤だけれど真剣な顔で「返事聞かせてくれ」と言う。
今度は私がポカンとしてしまったが、すぐに顔をぬいぐるみで隠し、目元だけ覗かせて圭介をまっすぐに見据える。
「私も、好き……」
そう答えた瞬間、圭介に強く抱き締められた。
私は嬉しさで胸をいっぱいにしながら、次はもっとしっかり自分の名前の書き方を教えようと誓うのだった。
場地くんは字が汚い。
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