*三途春千夜*
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それは突然訪れた。
商談を終えた俺は、歌舞伎町で暇を潰そうとしていたが、興味のない女に絡まれる度に毒づき、ここで暇を潰すのは間違いだったと後悔していた。
そんなとき、俺の目の前を女が横切って行った。
今まで俺に絡んできた派手な恰好の女ではない、この歌舞伎町にはそぐわない容姿の女。
仕事帰りだろうか。それとも就活終わりだろうか。
リクルートスーツに身を包んだ彼女は、駅の方へと早足で歩いて行く。
そんな彼女を、俺は無意識に追いかけていた。
彼女は西新宿で電車を降り、そのまま駅で誰かを待っている様子だった。
しばらくすると、疲れた顔だった彼女の顔が明るくなり、改札の方へと手を振る。
改札へと目を遣ると、そこにはスーツ姿の男がいた。彼女はその男と腕を組み、新宿の街へと消えていく。
俺は静かにその後をつけた。
その日から俺は梵天の力を使って彼女のことを調べ上げた。
名前は「苗字 名前」。会社員。西新宿五丁目のアパートに住んでいる。彼氏も同じく会社員。
何故ここまで彼女に固執したのかはわからない。
ただ、あの歌舞伎町で見た彼女――名前の姿は異様で、そこにいるどの女よりも俺を惹きつけた。
そして、俺はどうしても名前を自分のモノにしたくてたまらなくなっていた。
数日後。
名前とその彼氏のデートの後をつけ、彼氏と別れて名前が家に帰ったのを確認した後、俺は行動に出た。
暗がりの中を歩く男の後頭部を、用意していた鈍器で思いきり殴る。男は悲鳴をあげる間もなく、その場に倒れ込んだ。
俺は念には念を、と思い、男を車に積む。やはり男を担ぐのは気持ちが悪いものだ。
車をとある倉庫の前に止め、男を運び出す。
意識を失っている男に銃を突きつけ、俺は躊躇うことなく引き金を引いた。
その後の処理は全て部下に任せ、俺はすぐに彼女――名前の家へと向かう。気付けばもう日が昇っていた。
名前のアパートのインターホンを鳴らすと、なんということだろうか、名前が自ら扉を開けてきた。手間が省けるというものだ。
「あの、どちら様でしょうか……」
控えめに聞いてくるところも、少し不安気な瞳も、全てが愛おしい。
ああ、早く自分のモノにしたい。
「……あ、あのっ、ごめんなさい!」
そう言って名前は扉を閉めようとする。俺はそれを力づくで止め、半開きの扉から名前の家へと侵入する。
「きゃっ」
「しっしっしー」
思わず叫びそうになっている名前の口を塞ぐ。名前の柔らかな唇の感触が手から伝わってくる。
「騒ぐな騒ぐな。せっかくお迎えにきてやったんだからよォ」
そう言って俺は、素早く名前の口に睡眠薬を放り込み、無理やり飲み込ませた。
名前の為に用意したマンションの一室。
その部屋にあるベッドに、名前を寝かせる。
俺は壊れ物を扱うようにそっと名前の髪を撫でた。
やっと手に入れた。俺だけの女。俺だけの名前。
これからどうしようか。薬漬けにしようか。俺無しではいられない身体にしようか。いっそ壊してしまおうか。
この感情は一体なんと言うのだろう。恋だろうか。愛だろうか。なんでもいい。もう名前は俺のモノなのだから。
名前の規則的な寝息を聞きながら、俺はこれから始まる名前との生活に思い耽っていた。
鳥籠
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