*佐野万次郎*
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高層ビルにある一室。私とマイキーはその部屋にぽつん、と置かれたソファに座り、煌びやかに瞬く夜景を眺めていた。
マイキーの目は虚ろで、まともに寝ていないのか、隈ができている。
あの頃――東卍にいた頃の面影はもはやなかった。
それでも私はマイキーを愛している。どんなことがあっても、私の気持ちが変わることはない。
「名前」
「なに?」
突然マイキーに名前を呼ばれる。私は思わず顔を綻ばせる。
「俺がもし、梵天を捨てて逃げたら、どうする?」
そんな問いに、私はキョトン、とするが、すぐにマイキーの肩に頭を預け、眼下に広がる夜景を見ながら答える。
「どこまでもついていくよ。例えそこが地獄でも」
そう言ったきり、私たちの間には沈黙が訪れる。
でも、その沈黙すら、私にとっては心地よかった。私はマイキーと一緒に居られれば、それでいい。
***
最近のマイキーは少し様子がおかしかった。
今まで手なんて握ったりしたことなどなかったのに、最近は私と二人きりになると手を握るようになった。
「マイキー、最近どうしたの……?何かあった?」
「……」
マイキーは答えない。私はそれ以上は何も聞かないことにした。きっと話したくない事情があるのだろう。
しばらくソファに座っていると、部屋をノックする音が聞こえた。マイキーが「入れ」と言うと、三途さんが真剣な顔で部屋に入ってきた。
「マイキー、見つけたぜ、あいつ」
「そうか」
そう言って、マイキーはソファから立ち上がる。
「待って、マイキー。どこに行くの……?」
私はマイキーの腕を掴んで、不安気に言う。何故か、マイキーがいなくなってしまうような、そんな予感がした。
「大丈夫、すぐに戻るから」
ニコ、と笑うマイキー。彼が笑うときは、つらいときだ。
「や、やだ!私も連れていって……!」
「ダメだ」
「私言ったじゃない!どこまでもついていくって……!」
涙目で訴える私に、マイキーは軽い口付けを落とす。それが余計に悲しくて、不安で。でもきっと、マイキーは行ってしまうのだろう。私はマイキーの腕を離し、「絶対に帰ってきてね」と笑顔で送り届けた。
***
とあるボウリング場の廃墟。そこにマイキーと三途さんは入っていった。
どうしてもマイキーが心配だった私は、二人の後をつけていた。多分、三途さんは気付いている。が、気にも留めずにボウリング場でとある人の頭に銃を突き付けていた。
その相手は、花垣武道――タケミっちだった。
「いい未来だろ?」
マイキーが語りかける。
しばらく二人のやり取りが続いたあと、銃声が聞こえた。
――マイキーが、タケミっちを撃ったのだ。それも、三発。
悲鳴を上げそうになるのを必死に堪える。
マイキーにとってタケミっちは大切な存在だったはずだ。なのに、なんで。どうして。
「ここで全部終わらせる」
マイキーがその場を立ち去る。嫌な予感がした。
私はすぐにマイキーの後を追う。屋上へ向かうマイキーを止めたくて、声を出そうとするが、先ほどの光景が邪魔をして、声が出ない。
「まい、きー……!」
屋上に辿り着いたとき、マイキーは今にも飛び降りそうだった。
そのとき、マイキーは私を見て、ニコ、と笑った。
なんでここにいるんだ、とか、そんなことなんて聞かず、ただ、笑ったのだ。
「いくぞオマエら!!!!」
「マイキー!!」
マイキーの身体が落ちていく。
私は恐怖なんて感じることなく、マイキーの後を追うように飛び降りた。
必死に手を伸ばす。
その手はマイキーを腕を掴み、そして、私はマイキーを抱きかかえた。
ねえ、マイキー。
もし生まれ変われたら、また一緒にみんなで笑いあいたいね。
今度はみんなと一緒に幸せになりたいね。
そしたら、結婚式を挙げて、みんなと――――
ドシャッ
闇夜へ堕ちる
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