暁その他
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夜の闇で、蝋燭の灯りが熟したように思えた。
闇と薄明りの揺れる中、彼女の細腕が腰に回る。
白く浮かび上がる姿は神聖な様で在りながら、酷く欲に満ちていた。
密着する熱に浮かされるように、赤い唇が囁く。
「愛してる」
けれど密度ある言葉に想いは込められていない。
見つめる瞳にはどこか面白がっている色が揺れている。
挑発的な態度へ応えをくれてやらずに居ると、そのまま唇が落ちてきた。
元々応えなど期待していなかったのだろう。
僅かに気に障るが、それすら熱へと変わるようで、腹から高まってゆく。
しっとりとした口付けが交わされる間に、胸元が寛げられた。
されるがままでいる俺の首筋へと唇は降り、そこを嬲るように清香は顎を動かす。
手では己の首筋を晒すように襟を広げながら。
誘う柔肌を拒む理由もなく、項の香りを鼻腔に満たした。
前回会った夜とは違う香り。
熟した果実のように立ち上る香りは魅惑的な甘さだ。
「お前は、俺を安心させないな」
俺の知らぬ間に変わる香り。
全ての男を魅了できそうな色香に尚も身を浸しながら、そう口にする。
柔らかく含み笑いをこぼしながら、彼女の瞳は楽しげに細められる。
「あなた、お金に釣られて何処にでも行ってしまいそうだものね」
額に触れ、前髪から頬まで撫でた指が、だから、と続けた。
「私は、私にしかない武器であなたを逃がさないでおくの」
揺らめく燭台の炎が、扇情的に彼女の瞳の奥で揺れる。
生意気な奴と一蹴する事も出来ず。
誘惑する視線を瞬きすら惜しみ俺は見つめ返している。
相変わらず応えはくれてやらない。
それでも、お互いに口角は吊り上がる。
身体を重ねるような口付けが落ちてくる。
……ああ。唇が腫れた気がした。
END.