砂の里短編
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水などここには一滴も無い。
植物はもちろん枯れ果て、土も乾いて、
あるのは砂ばかり。
もうどれくらい歩き続けているのだろう。
のどがかわいた、水をくれ。
そううわ言のように呟いても、応えるのは砂嵐以外なにもいない。
苦しい、もう倒れそうだ。
強い風にあおられてよろけながらも、おぼつかない足取りでただひたすらに進んでいく。
なぜ、こんなにもオレは歩いている?
一度は、歩を止めた。
なのに、なぜ、また?
激しい砂嵐が問いかけを消そうと、オレの歩みを止めて閉じ込めようと襲ってくる。
それを振り払ってまた苦しみながら一歩を踏み出す。
ああ、でも、そうだ。
もういっそのこと、倒れてしまってもいいんじゃないだろうか。
フラっと砂につまづいて転びそうになる。
もう、このまま……
そう思ったとき、誰かの腕がオレを支えた。
我愛羅さま……!
誰だ、この声は。
聞き覚えのある、声。
ぐい、とオレを支える腕を押して、顔を上げる。
すると、見覚えのある、大切だと思う人間の顔が、そこにあった。
ふわり、その笑顔が消え、一輪の白い花にかわる。
何だったか、この花は……。
『これは、なんだ?』
『ああ、これはガーベラという花なんですよ!ぜひ、我愛羅さまにお見せしたくて』
『ガー、ベラ?』
『はいっ!花言葉は……』
「……希望」
きゅ、とつぶさないよう気をつけながら花を握った。
それを目の前に近づけ、そっと祈るように目を閉じる。
胸の奥があたたかい。
口元がやわらかく弧を描いた。
歩こう。
まだ歩ける。
瞳を開くと同時に、オレは足を前に出した。
白い花を手に、再びオレは歩き出す。
大丈夫だ、もう止まることは無い。
希望をくれる存在がここに、オレの傍に在る。
砂嵐が弱まってきたことに気付いて顔を上げたとき、
嵐にも負けぬほど強く、
オレに手を振るお前が見えた。
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