砂の里短編
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「うーん……もうちょっと、こっちかな……」
「こっちはペケだって。ぜったいここにマル描いた方が合うよ。なあ、カンクロウ」
「俺はグルグルがいいと思うじゃん」
「じゃあ、俺は第三の目を描こう」
(ん?何だ……)
意識が浮上してきて、初めに聞こえたのは、清香の声だった。
続いてテマリ、カンクロウ、我愛羅。
それぞれマルだのペケだの、こっちだのあっちだの、相談している。
(……カンクロウに絵でも習っているのか)
昔からよくつるんでいた四人は、最近ますます仲がいい。
我愛羅が、1人離れて風影になると言い出したときにはどうなることかと思ったが、
俺の心配などよそに、彼らはあっという間に我愛羅のサポート役に回って、彼を支える位置についた。
皆で手を取り合い、里を我愛羅が支え、我愛羅を彼らが支え。
そしてその彼らを支えるのは、これから出てくる若い者たち。
きっとそんな里にこれからはなっていくのだろう。
新しい世代が中心の、俺たち古い世代の心配など無用な里。
こいつらの心配をしなくてもいいというのは、嬉しくもあり、寂しくもある。
(俺も、そろそろ気にしすぎるのをやめるべき、か)
「清香。私がお手本として、ここにマル描いてやるよ。貸してみな」
「ちょ、ずるいじゃん!次は俺だって」
「引っ込んでな、下っぱ!」
「騒ぐな。目が描けない」
「先にテマリが描いて、次にカンクロウが描けばいいよ」
「ちえっ……」
清香が間に入って、2人をなだめる。
近頃は、こんな景色が多くなった。
間に入ることもなく、ただ成り行きを見ていた昔に比べると、清香も随分と成長したものだ。
元々観察眼もある。
この分だと、将来はいい相談役になるだろう。
(……あ)
そうだ、そういえば俺は、報告書をあらためている最中だったんじゃないか。
最近夜に眠れていないせいか、急に眠気が襲ってきて……。
(いかん、早く起きて終わらせ……!)
きゅっ、きゅきゅきゅーーーー。
きゅきゅっ、きゅるきゅるーーー。
何かの先端が、頬と額に当てられ、滑った。
――グルグル、マル、ペケ、第三の目。
そしてこの独特のにおい。
瞬間、はっきりと自分に今起きていることを悟った。
「っお、お前たち!何をしているっ!!」
「わっ!にげろおおおおおおおーーー!!!」
ガバッと身体を起こすと同時に、ペンを放ってバタバタとドアから逃げていく。
蜘蛛の子を散らすような勢いに、はあ、とため息をついて立ち上がった。
うたた寝をした椅子の足元に落ちていたペンを拾う。
――油性。
後ろの窓を見れば、額に目があり、頬にグルグル、目の周りに大きなマルがある自分の顔が見えた。
(俺はまだまだ、あいつらのしつけ役を引退できんようだな……)
とりあえずこの落書きをどうやって消そうかと、俺は再びため息を吐いた。
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