砂ノ里短編
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午前中、街にお出かけした日。
何気なくカンクロウに連絡をすると、時間がちょうど空いてるから、ランチに行こうという話になった。
待ち合わせ場所に行くと、カンクロウが遠目から手をあげてくれる。
「おまたせ!カンクロウ。どこに行こっか」
「よ、清香」
駆け寄って見上げると、穏やかに私を見下ろした目が、一瞬固まった。
不思議に思っていると、顎に指が添えられ、しげしげと顔を見つめられる。
視線が集まっているのは、唇。
「……このリップ、初めて見る色じゃん。どこで買ったんだ?」
「あ、ええと。この前、先輩から誕生日のお祝いにプレゼントされたやつ」
すっと、猫のような瞳が細くなる。
「ほ〜ぉ。例の仲良しな野郎か。やってくれるじゃん……」
新米時代から良くして貰ってる先輩で、カンクロウにもその話はしてある。
だから、彼もすぐにその人と思い至ったのだろう。
カンクロウが、こちらに手を差し出す。
「化粧ポーチ、出しな」
直す用に持ってるだろ?と催促される。
彼の気迫に気圧されつつ差し出すと、さっと取り上げられ、すぐに中身に目を走らせる。
そして、迷いなくそれをつまみ出し、自分の懐にしまい込んだ。
あっと言う間もなく、続いて携帯用のリムーバーが取り出される。
封を切ると、リムーバーに浸されたコットンを取り出し、顔を上向けられた。
「はい、綺麗にするじゃん」
丁寧に唇を拭われ、すっかり色が落とされる。
次にリップクリームを塗り、予備に入れていた別のリップを丁寧に乗せていく。
ちなみに、これは以前彼に貰ったものだ。
最後に指で少し整えられ、漸く、彼はふうっと顔を上げた。
ぽんっとポーチを返され、先ほどより気配の和らいだ彼をおずおずと見上げる。
あまりにテキパキと作業が進むので、何も口出し出来なかったが。
「えっと、カンクロウ、それ……?」
「処分。気に入った色だったか?なら同じの買ってやるじゃん。そっち使ってくれ」
ギラリと光る瞳に何も言えず、首をぶんぶんと振る。
贈られたから使っただけで、別段好きな色でもない。
先輩には申し訳ないが、一応は使ったのだし、それで許してほしい。
「あと、もしそいつにまた化粧品贈られたら、彼氏に言われたんで受け取れませんって断れよ。
女に化粧品贈るなんて、狙ってる以外にないからな」
くっとまた顎を上げられ、鼻先のつきそうな距離で忠告される。
頷くと、頬に小さくキスをされた。
「ま、一本無くなったからな。その分、新しいのを後で買いに行こうぜ」
似合うの見繕ってやるよ、とカンクロウに手を取られる。
楽しそうに笑う彼を見て、つられて笑ってしまう。
ちょっとの横暴も、愛されてる証だから。
その後、彼から贈られた色は、うっすらと紫の混ざった、可愛く上品なものだった。
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