砂の里短編
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あー……。
どうしてくれよう、この惨状。
目の前に広がるのは、練習用傀儡のバラバラ死体たち。
そして、恐る恐るこちらを振り返って笑う、俺の弟子。
はぁ、と思わず溜め息が出た。
「清香……。なぁにやってたんじゃん」
「ええっと……師匠の技を、やってみたいなーって……」
「俺、それをもうやって良いって言ったか?」
「駄目って言われてました……」
「清香〜……?」
「すみません!すぐに片付けますっ!」
ぴゅーっと人形を拾い集めにかかる後ろ姿に、ストップをかける。
どうせ集めるなら、練習を兼ねた方が良い。
チャクラ糸で一つ一つ集めるように言って、彼女の横に人形を入れる用の箱を置いた。
少し離れた場所で彼女の糸捌きを眺める。
正直筋は全く悪くないし、そろそろ大技の触りを教えても良い程度には育っている。
だが、彼女の糸は俺の糸と違って、細さや柔らかさが長所だ。
俺の技の様に強く人形を引き回そうとすると、どうしても絡まったり千切れたりして、無用な怪我をしかねない。
だから、彼女に合う軽い人形を今、内緒で作成している。
しかし、清香はどうしても俺の技を使いたいのか、隠れて練習しようとしたがる。
「清香、何か焦ってんのか?」
尋ねると、彼女は驚いてこちらを見たあと、バツが悪そうに俯いた。
口を重く開いて言うに、早く俺に追いつきたいのだと言う。
作業を再開しながら、彼女は続ける。
「私、カンクロウ師匠がずっと憧れで。弟子にしてもらえた時には、本当に嬉しくて」
でも、と細い糸が伸びる。
「私、師匠の弟子だって胸を張れる程に全然成長出来てないなーって。この前も、ちょっと言われて悔しくて」
それでつい、焦ってやっちゃいました、と眉を下げて笑う。
少し考えてから、俺は清香の隣に立った。
「俺は、お前を遅れてるなんて思ってねぇ。ちゃんと成長出来てるじゃん」
姿勢、チャクラ糸の練り方、操り方。
どんどん洗練されていっている。
「それも分からねぇ奴に弟子貶される筋合いはねぇよ。ってか、そもそも技に必要な物も分からねぇ奴の言う事、真に受けなくていいじゃん」
お前は、充分俺の自慢の弟子だからな。
見上げる清香の目を見て、にっと笑う。
大きな瞳が少し潤み、慌てて清香が顔を逸らす。
「あ、有難うございます!私、頑張ります!」
拳を握り込みながら今度は笑ってみせる彼女に、ホッと安心する。
と、同時に、視界の端で何か飛んでくるのが見えた。
小石の様な物が、俺にめがけて飛んでくる。
チャクラ糸ですぐに弾いた。
が、同時に清香も気づいて対処していた様で、彼女のチャクラ糸が俺の糸に絡まった。
慌ててつんのめった彼女を支えようとするも、彼女の糸に引かれて上手くいかず。
結果、地面に倒れて彼女を受け止める事になった。
チッと陰から舌打ちの音が聞こえ、気配が消える。
「だ、誰ですか!このっ……!」
応戦しようと糸を紡ぐ彼女を、背中を叩いて落ち着かせる。
襲撃者は、もう何処かへ消えている。大丈夫だろう。
それよりも。
この顔に覆っている、決して小ぶりでない柔らかな物を除けてほしい。
彼女はハッと気付くと、急いで身を起こして俺に謝った。
正直役得だと思ったが、流石に胸にしまっておく。
「それにしても、誰が……!」
「あー……お前にイチャモンつけてきた奴、男か?」
「えっ、ハイ。同期で、いっつも嫌な事言ってくるんです!」
ぷんっと頬を膨らませる。
なるほどじゃん、と頷く。
大方、俺が隣に居て嬉しそうにしてる姿が気に食わない、拗らせ野郎だろう。
正々堂々と伝えれば良いものを。
まぁ、譲ってやるつもりは1ミリも無ぇけど。
「糸が細いのに体は太いとか、絡まり毛玉とか!もう……あっ、でも」
ぷりぷり怒っていた清香が、閃いた様に絡まったチャクラ糸を掲げて眺める。
「これ、房中術に持ち込める切っ掛けには良さそうかも……」
ザアッと一瞬で血が逆上る感覚がして、絡まった糸を引き、彼女を地面に転がして被さる。
何事かと巻き上がった砂を手で払いながら、彼女が俺を見上げた。
「わぷっ……わ、あの、師匠?」
「へぇ?俺以外の男、誘って落とすつもりなんじゃん?」
「えっ!?いや、任務で、もしあればの……っ」
くいっと顎に手を添えて軽く持ち上げ、その唇を親指でなぞる。
「んぅ、ししょ……」
「シィー。……なぁ、こういう時は、何て呼ぶんだった?」
「か……、カンクロ、」
「ん。合格じゃん」
唇を合わせて、そっと食む。
緊張が少し解れた頃に、舌で唇をなぞって、開いた隙間からそろりと口内を撫でて絡ませた。
堪能した後に、下唇を軽く噛んでから、顔を離す。
軽く息が上がり上気した彼女の潤んだ瞳を見つめ、口角を上げる。
「今日の夜はお手並み拝見だな?」
「あ、その……うぅ」
「色香で惑わされるの、楽しみにしてるぜ」
するりと頬を撫でてから、彼女の上から退く。
彼女に手を差し出して引き起こしてから、そのまま抱き締めた。
首筋の髪をサラリと梳いてから、耳元に囁く。
「夜、絶対に会いに行くじゃん。ベッドでイイ子に待っとけよ」
「ひゃいっ……」
赤く染まった耳元にそっと口付けて、体を離した。
「じゃ、俺残りの仕事あるから。また後でな」
今日やる予定のメニュー、ちゃんとやっとけよー、と軽く手を振る。
遠目にも分かるほど茹で上がっている彼女からは、上擦った返事が返ってきた。
それにくつくつと笑いながら、執務室へ向かう俺の足どりは軽やかだ。
さて、今夜はどうしてもらおうか。
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