砂の里短編
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お題:日常シーン10題
『真夜中の公園』
by確かに恋だった
そっと、地面を蹴ってみる。
小さく鎖が鳴った。
1人きりでいる公園には、音がよく響き渡る。
それが余計に胸を刺す事を知りながら、ここに来ずにいられなかった。
地面を見つめていた眼を閉じる。
ここで、この時間でないと駄目なのだ。
眠る事も出来ない自分が、夢を見るには。
昼間の光を思い浮かべる。
この場所も、その時間には賑やかだ。
自分と同じ位の子は沢山いて、元気に駆ける。
そこに、自分も――
手を伸ばしかけた時、本当に人の声がして、目を開く。
夢から引き剥がされ、一瞬焦点が定まらずにいたが、目を擦ると、見えた。
女の子。
多分、自分より年下だろう。
すすり上げながら、小さな手で目元を拭っている。
好奇心と期待と恐怖と不安で、暫く葛藤した後。
僕は、一歩踏み出した。
女の子の近くまで行き、口を開く。
「あ、あの、どうしたの……?」
絞り出した声は大分震えていた。
それが効を奏したのか、女の子は目を丸くして泣き止む。
だが、そのまま動きはない。
沈黙が続きそうな気配に、焦りながら言葉を募らせる。
「僕、我愛羅。君、どこか、痛いの?」
首は横に振られた。
髪止めの飾りが硬い音を立てる。
「お母さんに、おこられたの。お外、出された」
「そうなの……」
自分は外に出された事はないけど。
夜叉丸に叱られた後、独り、部屋で居たたまれない思いをする事はある。
それと似たようなものだろうか。
「ごめんなさい、したいね」
「うん。ごめんなさいしたい」
ぽつりと呟いた言葉に、女の子は袖を掴んで俯く。
そして、おもむろに顔を上げたと思うと、僕の服を掴んだ。
初めて他人から触れられた事に驚く。
たじろぐよりも早く、不安に揺れた瞳が目に入った。
「ね、我愛羅。いっしょ居てくれる?」
「う、うん。ごめんなさい出来るまで、一緒にいるよ」
夜叉丸なら、きっとこうしてくれる。
不安がほどけるように、きっと。
記憶の中の夜叉丸を手本にしながら、女の子の隣に座る。
すると、安心したように女の子は笑った。
同じ思いを他人と共有できたのは、あれが初めてだった。
「彼女には悪いが、本当に嬉しかったのを覚えている」
あれから会う事もなかったが、きっと何処かで元気にしているのだろう。
話し終え、過去に行っていた意識を引き戻す。
仕事が一段落つき、息抜きに茶を飲みながら、秘書と話していた。
確か、公園の話から飛んだんだったか。
茶を飲んでから、つまらない話をしてしまったと反省する。
然り気無く彼女に視線を移し、そのまま固まった。
「ど、どうした?」
いつも真面目で、あまりふざけもしない彼女が、えもいわれぬ顔をしている。
心なしか、顔も赤く見える。
「そ、それ、私です」
震えながら放たれた言葉に、目を見開く。
「髪止め、赤い苺でしたよね?」
「あ、ああ。確かに」
恥ずかしい、と顔を覆う彼女に、こちらも頬が赤くなる。
一緒にいた礼にと渡された固い苺は、実は、今もこの机にあるのだ。
それを告げたら、彼女はどんな反応をするだろうか。
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『真夜中の公園』
by確かに恋だった
そっと、地面を蹴ってみる。
小さく鎖が鳴った。
1人きりでいる公園には、音がよく響き渡る。
それが余計に胸を刺す事を知りながら、ここに来ずにいられなかった。
地面を見つめていた眼を閉じる。
ここで、この時間でないと駄目なのだ。
眠る事も出来ない自分が、夢を見るには。
昼間の光を思い浮かべる。
この場所も、その時間には賑やかだ。
自分と同じ位の子は沢山いて、元気に駆ける。
そこに、自分も――
手を伸ばしかけた時、本当に人の声がして、目を開く。
夢から引き剥がされ、一瞬焦点が定まらずにいたが、目を擦ると、見えた。
女の子。
多分、自分より年下だろう。
すすり上げながら、小さな手で目元を拭っている。
好奇心と期待と恐怖と不安で、暫く葛藤した後。
僕は、一歩踏み出した。
女の子の近くまで行き、口を開く。
「あ、あの、どうしたの……?」
絞り出した声は大分震えていた。
それが効を奏したのか、女の子は目を丸くして泣き止む。
だが、そのまま動きはない。
沈黙が続きそうな気配に、焦りながら言葉を募らせる。
「僕、我愛羅。君、どこか、痛いの?」
首は横に振られた。
髪止めの飾りが硬い音を立てる。
「お母さんに、おこられたの。お外、出された」
「そうなの……」
自分は外に出された事はないけど。
夜叉丸に叱られた後、独り、部屋で居たたまれない思いをする事はある。
それと似たようなものだろうか。
「ごめんなさい、したいね」
「うん。ごめんなさいしたい」
ぽつりと呟いた言葉に、女の子は袖を掴んで俯く。
そして、おもむろに顔を上げたと思うと、僕の服を掴んだ。
初めて他人から触れられた事に驚く。
たじろぐよりも早く、不安に揺れた瞳が目に入った。
「ね、我愛羅。いっしょ居てくれる?」
「う、うん。ごめんなさい出来るまで、一緒にいるよ」
夜叉丸なら、きっとこうしてくれる。
不安がほどけるように、きっと。
記憶の中の夜叉丸を手本にしながら、女の子の隣に座る。
すると、安心したように女の子は笑った。
同じ思いを他人と共有できたのは、あれが初めてだった。
「彼女には悪いが、本当に嬉しかったのを覚えている」
あれから会う事もなかったが、きっと何処かで元気にしているのだろう。
話し終え、過去に行っていた意識を引き戻す。
仕事が一段落つき、息抜きに茶を飲みながら、秘書と話していた。
確か、公園の話から飛んだんだったか。
茶を飲んでから、つまらない話をしてしまったと反省する。
然り気無く彼女に視線を移し、そのまま固まった。
「ど、どうした?」
いつも真面目で、あまりふざけもしない彼女が、えもいわれぬ顔をしている。
心なしか、顔も赤く見える。
「そ、それ、私です」
震えながら放たれた言葉に、目を見開く。
「髪止め、赤い苺でしたよね?」
「あ、ああ。確かに」
恥ずかしい、と顔を覆う彼女に、こちらも頬が赤くなる。
一緒にいた礼にと渡された固い苺は、実は、今もこの机にあるのだ。
それを告げたら、彼女はどんな反応をするだろうか。
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