砂の里短編
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『もしもし?』
声を聴いた瞬間、ホッとした。
カンクロウの声。
大好きな声。
『どうした?清香?』
「あ、うん。ちょっと声聴きたくなった、だけ」
安心して少しぼおっとしてしまった。
ははは、とカンクロウが笑う。
何よといえば、いやオレも同じこと考えてた所だったからって。
「……キザ」
『いや、ホントじゃん!』
「うっそだあ。年中傀儡とごはんのことで頭いっぱいのくせに」
『……のな、』
オレを何だと思ってんだというような声を出すカンクロウが面白くて、クスクス笑う。
本当は、カンクロウも同じことを考えててくれて嬉しい。
だって寂しかったから。
でもカンクロウみたいにそう言えない自分が悔しい。
恥ずかしいから、いつも茶化す。私の悪いクセ。
「あ。任務、どうだった?上忍さんはお仕事結構大変でしょ。怪我してない?」
大丈夫だというカンクロウに、あ、また傷作ったな、と思う。
こういうときのカンクロウは素直じゃないから。
最近上忍になった彼は、ちょっと忙しい。
弟の我愛羅が風影になったせいか、Aランクの難しい任務がよく入ってる。
忍なんだからしょうがないけど、会うたび生傷が増えてるのは、やっぱり心配。
まったく少しは自分の体のことにも気を配って欲しい。
傀儡のテクニックに磨きをかけることに余念がないのはいいけど。
そのうちホントに体壊すよ。
……って。
カンクロウのことだけで毎日どれだけ心配事が増えてることか。
おかげで夜電話しちゃうほど寂しがり屋になっちゃうし。
「そこんとこ、分かってんの本当に……もう!」
『「はっ?」』
気付かず口に出てしまった言葉に、慌てて口元を手で覆う。
あれ、でもちょっと待って。
いま、電話からだけじゃなくておかしな方向からも声がしなかった?
「――!!」
後ろの方を振り返ると、ニヤッと得意げな顔をして携帯を持ったカンクロウがいた。
「うぃああああああっ!?」
「ククッもっと色気ある声出せよ」
「な、な、なんでカンクロっ」
「会いに来てやったんじゃん」
ぷつんと電話を切って、よっこらせと私のいるベッドの上に胡坐をかくカンクロウ。
ぷ。オジサンみたい……じゃなくて!
ちょっと待ってよ!
夜に乙女の部屋に押しかけてきて、来てやったってなんなの。
どう考えてもおかしいよ。
「寂しかったんだろ?」
ポンと頭に手を置いて言われ、弾けるように顔を上げる。
どうして、わかったの?
声聞けば分かるじゃん、と笑う彼になんだか泣きそうになった。
「な、なによ。カンクロウがそうだったんじゃないのっ?」
泣きそうなのがばれないよう、ふいっと顔を背けて言う。
カンクロウばっかり全部分ってずるいから、絶対泣いてなんかやんない。
でもその直後、カンクロウが照れながらまあなと答えるから驚いた。
「ククッ素直じゃねえのはお互い様じゃん」
ああ、悔しいな。私たぶんずっとカンクロウには敵わない。
でも……きっと素直じゃない私にはそれで丁度良いんだ。
笑いながら抱きしめてくるカンクロウに、ばあーか!と抱きつく。
「んなっばかってなんじゃん!」
「ばーかばーか!大好きだばーか!」
ばーか、とまた言ってから……寂しかった、と呟く。
カンクロウはため息を吐くと、まったく可愛くて素直じゃないお姫様じゃん、と強く抱きしめてくれた。
「カンクロウ、もうちょっとここいてよ」
「お姫様の頼みならしょうがねえな。わかったじゃん」
なんて。
いつもなら意地悪なくらい頼みなんて聞いてくれないくせに。
こんなときは優しいカンクロウ。
ふっと目を閉じて、感覚全てをカンクロウでいっぱいにした。
カンクロウのにおい。深い呼吸。
全部全部、愛してる。
このまま時間なんて止まればいいのに。
私がもっともっと素直になれるまで。
ちゃんと好きって言えるまで。
もう少ししたら、素直になるから。
誤魔化さず瞳を見て好きって言うから。
それまでもう少し、ここにいてよ。
END.
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