木ノ葉短編
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「うーん、うめえっ」
目の前に並んだ飯を一口、口に運んで、俺は上機嫌に言った。
ここの飯はうまいと評判で、しかも安いとの事で来てみたが、どうやら当たりだな、こりゃ。
「うん、おいしいね」と向かいに座ったヒナタも満足そうに飯をほおばる。
現在、俺達紅班のメンバー3人は、ささやかながら任務の打ち上げとして飯屋に食事に来ていた。
先日の大掛かりな任務の後、綱手様が骨休みにと少しばかり休みをくれる事になったので、
それならのんびり食事でもしようという意見により、今に至る。
今回は綱手様の過去が絡んだ事件だったからか、報酬もいつもより色がついて出た。
これならいい忍具を買っても足は出ない。
もう一つくらい無理をすればいいものが買えなくもねぇけど……。
腹が減っては戦はできぬ。
俺達成長期だから!
自分へのご褒美も兼ねて、飯を選ぶことにした。
「ま、今回は俺達も結構活躍したし、少しくらい贅沢したってバチは当たらねえよな!」
「うん。これで力をつけて、また修行すれば、大丈夫だよ」
「……」
「ん? どうしたんだよシノ。食わねえのか?」
「シノくん?」
チラと隣を見れば、シノの器からは料理が減ってねぇのに気づいた。
コップの中の水から、箸の位置まで、運ばれた時から変わってない。
腹が痛いって訳でもなさそうだし……。
と、そこまで考えてから気づいた。
シノから溢れ出す無言の威圧感に。
それで瞬間悟った。
これは完璧拗ねてる!
え、何かしたか? 何かあったか? 俺は必死に原因を探してみた。
が、何も思い当たらない。
ヤバい。
こうなったらシノはなかなか機嫌が治らねえ。
「シ、シノ。なんか俺、お前にしたか?」
「……俺はそんなに影が薄いか?」
「いや、そんなことねぇよ! って、ん?」
なんか、これ前にもどっかで――。
ハッと気づいたヒナタが、遠慮がちにシノを覗きこむ。
「シノくん、ひょっとして、この間の任務のこと、気にしてる?」
ヒナタに言われて言われてあっと思い出す。
この間の任務。
シノが伏兵になって上手い具合に敵を倒した。
までは良かったものの、その時シノが言ったセリフ。
「俺はそんなに影が薄いか!」
……。
駄目だ。
拗ねてる度合いがいつもの比じゃねぇ。
これは俺達が何を言っても無理だ。
せめて今ここにアイツがいてくれりゃあ……。
ヒナタと2人心の中で頭を抱える。
そして諦めてシノの機嫌を何とかしようと顔を上げた、その時。
「あれ、シノ?」
救 世 主!!
「清香」
シノも、落ちてきた声に、威圧感を少しやわらげ、顔を上げた。
清香は、人なつっこい笑みを浮かべたまま「皆打ち上げ?」とこっちに歩いてくる。
ナイスタイミングッ!
すっげぇ。俺今なら神様信じるぜ。
ヒナタも清香が来たことで安心したのか、少しホッとした顔をしていた。
「よおっ清香! 久しぶりだなぁ、今一人か?」
「一人なら、一緒に食べない?」
「え、いいの? ならお邪魔させてもらおうかなあ」
いやいやもうお邪魔どころか、大歓迎だぜっ!
心の中で万歳をしながら、ヒナタの隣、シノの向かいの席に清香を招く。
清香は席に座ると、すぐにシノの様子がおかしい事に気付いてくれた。
「あれ。シノ、何か元気ない?」
「……」
「ちょっと、前の任務のことで、ね」
「シノが、俺はそんなに影が薄いか? ってな」
任務? とヒナタの言葉に首を傾げる清香に、俺が付け足す。
それが気に食わなかったのか、シノはふいっと下を向いた。
それに内心ため息をこぼしていると、清香が口を開いた。
「そうかなあ? 私からすると全然影薄くないよ。だって私の頭の中、ほとんどシノが占めてるからね」
「清香……」
清香の言葉に、シノがぱっと顔を上げる。
オイ待て何だよこの空気。
照れ笑いしてる清香に、ほんのり頬を赤くしてるシノ。
つーかシノがあんまり機嫌が悪いもんで忘れてた。
こいつら史上稀に見るバカップルだった。
ピンク色が溢れてる。ハートマークが邪魔だ!
ぺしぺしと飛び交うハートを跳ね飛ばしてから、ヒナタに目配せする。
ヒナタが頷いたのを確認して、それを合図に2人で立ち上がった。
「清香ちゃん、シノくん、ちょっと私達用事があるから、先に帰るね」
「あ、お前らゆっくりしてていいからな! てかゆっくりしてけよ、じゃっ」
清香とシノに早口でそう伝えると、さっさと席から退散する。
あーもう全く、これだからバカップルは。
ったく、しょうがねぇよな。
レジに行き、支払いを2人分済ませる。
ま、お幸せにだな、とヒナタと2人、笑ってこっそり店を出た。
END.