木ノ葉短編
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「シノ」
「ん?」
「シノシノシーノ」
「? 何だ」
ある日、私はシノと2人で彼の部屋にいた。
俗に言う、部屋デートだ。
まあ実際私はのんびり屋だし、シノも活動的な方ではない。
したがって、部屋でゆっくりしているだけなのだけども。
そんな中急に名前を連呼すると、彼は首を傾げた。
そのまま、私の意図分からずこっちを向く。
期待した答えが返ってこなかった私は、やはり伝わらないか、と苦笑した。
ほら、バカップルといえば、定番じゃないか。
「清香。名前呼んでよ、シノ」
シノはやっと分かったようにああ、と呟くと、どうした清香、と言い直してくれた。
他の人なら面倒臭がるような我侭もちゃんと聞いてくれる。
こういうシノの優しさが好き。
名前を呼ばれたのが嬉しくて、存外照れ臭くて、笑う。
「ちょっと、シノの声が聞きたかったの。私、シノの声好きだよ」
「俺の声、か?」
不思議そうに口元に手をやるシノに、頷いてみせる。
「シノって、好きなところばっかりだけど、声は特に好きだよ。
普段の声は落ち着いてて耳に心地良いし、戦う時には迫力のある声出すでしょ。
あの声なんか、普段とのギャップもあって、格好いい。
やっぱり素敵な声だよ、シノは」
ね、と彼を見れば、不動の石となっていた。
照れているのか、シノ。
男性に対する感想としては失礼かもしれないが、可愛い。
彼への愛しさを噛みしめていると、唐突にシノが口を開いた。
「清香」
「何、シノ」
「俺は、清香の声が好きだ」
不意の打ち返しに、今度はこっちが固まる。
「え、私の声?」
ああ、と答えながらさっきまで読んでいた本を置き、シノが立ち上がった。
そのまま私の隣に座り、サングラス越しにじっと見つめてくる。
どき、と心臓が小さく跳ねた。
「なぜなら、清香の声は優しい。どこか落ち着いていて、聞くと安心できる。
屈託なく笑う、明るい声も好きだ。もちろん、任務時の凛とした声も」
「し、シノ、」
いつもより格段におしゃべりなシノに少し焦っていると、シノがサングラスを外した。
切れ長のラインに縁取られた琥珀色の熱が、瞬間、綺麗に姿を現す。
思わず息を呑んだ私の髪を、シノが瞳を細めて撫ぜた。
「お前のすべてが、愛おしくてたまらない」
「シノ」
普段言葉が少ない代わり、大事な点ははっきり言うよな、シノは。
顔に熱が集中していくのを感じ、少し顔を伏せる。
しかし、すぐシノにあごを持ち上げられて、また琥珀色と絡まった。
「清香。顔を伏せるな。なぜならその顔は、オレだけが見られる特権を持っている」
床にだって見せたくないと言うシノに、半ば呆れながらも、愛しいという感情が後から後から溢れてくる。
でも、やはり顔を見られるのは恥ずかしく、思い切ってシノの胸に身を寄せた。
少し驚いた後、シノの腕が背中に回されたのを感じ、口を開いた。
シノ、とくぐもった声でシノを呼ぶ。
「なんだ、清香」
「愛してる。シノ」
「オレもだ」
「たまには、こんなのもいいね」
「ああ。俺も丁度今、そう思っていた」
二人で笑った後、またどちらからともなく、好き、と言った。
ごっこなんてせずとも、私達は立派にバカップルだったらしい。
甘い時間は、今日はまだこれから続きそうだ。
END.