木ノ葉短編
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「あの、清香さんっ」
「なに、リー君」
喉元まで来ても言葉にならないそれ。
僕は幾度、飲み込めばいいんでしょう。
鏡に向かう貴女は、十分そのままで綺麗です。
紅を引いて満足そうに笑うのは、一体何を思ってですか。
ああ、その香水。
いい匂いかと昨日訊いたそれを、今日は振り撒いて歩くんですね。
いい匂いです、柔らかい。
でも、誰かの為なら、僕はそんな物は嫌いです。
僕はこんなに一生懸命なのに、貴女はこちらを見る事すら無い。
さすがの僕でも、恨み言の一つも吐きたくなります。
子供じみたこんな思いを、御せずにもて余すばかりで。
じりじりと身を焦がす思いに、いつか芯まで焼き尽くされそうだ。
カタリといつの間にか増えたバッグを肩に掛け、彼女は背を向ける。
慌てて玄関まで後を追い、そしてまた、口を開いた。
「清香さんっ」
「ん?」
漸く振り向いた彼女の瞳は、余りに大人で。
僕はやはり、一度口を閉ざすしかなくなる。
「……今日は、いつ頃帰りますか」
「んー、今日は遅くなるから。先に寝といて」
「いえ! 必ず起きて待っていますので。何かあったら、連絡を下さい。駆けつけます!」
驚いた後笑った彼女に、自分はどう見えているのか。
見栄をはる子供くらいにしか映ってないのかも知れません。
「じゃ、戸締まりよろしくね」
指先で軽く額を小突き、彼女はドアの外に消えていく。
彼女の腕を掴んで引き留めたいと伸ばした腕は、虚しく宙に浮き。
結局、そのまま鍵を回す。
今は、まだ子供でしかあれませんが。
いつか、貴女に幸せな居場所を渡したい。
そこで、飲み込んでいる言葉を伝えたいです。
必ず。
僕は、貴女に見合う男になってみせます。
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