妹背の山越え
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「ご返状、確かに拝領いたしました。これにて罷り戻ります」
手渡した書簡を受け取った使番を労って、送り出す。
その背中が消えてから、全身の空気を吐き出した。
「あー……もうどうにでもなれじゃん……」
別にそこまで色恋に憧れを抱いてる訳でも無いし、結婚なんて勿論の事だ。
テマリは良い相手を見つけたし。
我愛羅は風影だしあんな性分だから。
よっぽど外交的に神がかった条件の人間か、心に決めた相手でないと受け付けないだろうし。
案の定突っぱねた、風の国の大名の娘との話。
お鉢が回ってくるのは俺の所。
かなり力のある大名の一人娘だというのだから、無碍にする訳にもいかない。
むしろ風影に話を断られたと面倒な事にならない事を祈るしかない。
召し抱えている忍を使わず使番をわざわざ寄越したのだ、相当気合いが入っている。
国内で揉めて里の立場が悪くなるくらいなら、俺のこの先の人生を捧げる方が安いもんだ。
流石に本音では歯ぎしりして泣きたい所だが。
箱入りで有名な大名の一人娘だなんて、どんな高飛車だろうか。
そりゃ俺の立場だから給料は相応の額だけども。
大名の娘なんて満足させられるだろうか……。
儚かったなぁ、俺の青春。
乾いた里の気候でも拭い去れぬ湿気をまといながら、とぼとぼと歩き出した。
嫁入りが、決まった。
いずれ家や国の為に、他国か国内の有力者に嫁ぐのだと分かってはいたけど。
嫁ぎ先が忍里になるとは思ってもみなかった。
お相手は、忍里の長である風影の兄とのこと。
いつも黒装束に身をつつみ、化粧をした鋭い目が印象的な、頭の切れる御仁だとか。
暗器として人形を使うとか。
話を聞く限りだと、なんだか恐ろしいのだけれど。
お父様が仰るなら、この婚姻で国の為になれるのは間違いないのだから。
おそらく悪い様には扱われないはず、多分……、きっと。
不安から胸の前で組んでいた手をさすり、ほぅっと息を吐く。
窓辺に近づいて、風に流れる砂を指でなぞった。
生まれてからこの方、この屋敷と領地以外は殆ど出た事がない。
その生活が、もうじき終わる。
怖いと感じるのと同時に、少しだけ、胸が期待に弾んだ。
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