小竹の笛ぞ愛しき
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荒れ狂う禍を神とし祀りて鎮めるもの。
その術を持つ一族が、かつてこの地を覆った蟲神の怒りを鎮めた。
以来、祀りを続けて民と神との間を取り持ち生きている。
人と自然とが、共に生きるために。
私の身の丈の5倍はあろうか。
羽を擦り合わせて低い音を出し、巨大な顎をガチガチとかち合わせる、蟲神。
大変怒り狂っておられる。
ふぅっと息を吐いて、篠笛を口に当てた。
なんとか鎮まってくれると良いが。
静かに息を吹き込み、音を伸ばしていく。
羽の音に合わせて細く震わせながら、緩やかに優しく奏でる。
暫くはただ怒りのまま動いていた羽の動きが、ふいに少し緩んだ。
誘うように、笛の音を続ける。
やがて、応えるように羽の音は高く美しい音になり、空気が震え、近くの葉から露が散った。
笛の音と羽の音は暫し重なりあった後、徐々に静かにほどけていった。
昼の光を遮るほどの怒りは鎮まったようで、あたりにはいつもと変わらぬ祠と山中の景色があった。
鳥や虫の声が戻ってくる。
怒りを収めた蟲神は、木漏れ日に透けるように消えていった。
その姿が消える刹那、花の蜜のような香りが頬を撫でた。
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