Walk side by side.
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何故、彼女なのだろう。
彼女の隣に立つのは、俺ではないのに。
答えの無い疑問の中、ただ一つだけ分かる事がある。
俺はもう、彼女から目が離せないという事だ。
何故なら、俺は――。
ぐっ、と拳を握った。
視線の先の彼女は、今日もとびきりに輝いている。
彼女の周囲は、いつだって明るくて、空気もふわりと心地良い。
近くに寄れば、俺もその一部になれている様な気がする。
けれど、一歩外れれば思い知らされるのだ。
そことは掛け離れている、己の内で煮え詰まる、濁った暗さに。
自己嫌悪の沼にずぶずぶと浸かりながら、彼女に背を向けて廊下を進む。
と、道の先に元気の良い同期の姿が見えた。
彼女の方も、気付くと俺に手を振って駆け寄る。
「あ、シノ!ちょっと今夜、飲みに付き合いなさいよ」
「いの。何度も言うが、俺は……」
「断る選択肢はナシ!
清香も来るんだから。あんたも来なさい」
思わず言葉を飲むと、ぐいっと腕を掴んで引っ張られ、身を屈めた。
「というか、今日は彼氏絡みの事で清香を慰める会だから。チャンスよ!」
「どういう事だ?何が……」
「詳しく聞くのは本人からね。わざわざ声掛けてあげたんだから、感謝しなさいよ〜」
何が何だか分からないまま、詳しい場所と時間だけを一方的に告げられる。
そして、嵐の様に去ってしまった。
彼女を見送って、立ち尽くす。
いのは、俺の清香への気持ちを知っている。
以前、同期の集まりがあった時に、急に言い当てられたのだ。
いの曰く、バレバレだったそうだが。
幸い清香は気付いていないらしく、複雑ながらほっとした思い出だ。
その時には、清香には付き合い始めたばかりの恋人が居たのだから。
それ以来、いのには半ば強引に恋愛相談をする事になった。
実際、横恋慕の相談なぞ中々人に出来る物ではないので、感謝はしている。
少しお節介だが、そこが彼女の良い所だ。
そういった経緯から、今日も声を掛けてくれたのだろう。
清香に何かあって、力になれるというのなら、是非そうしたい。
彼女が、俺に振り向く事は無いと分かっていても。
いのの言う通り、もし。
もしもそれで、少しでも彼女が俺の方を向いてくれるのなら。
これ以上望む物など無いのだが。
捨てられない期待をポケットに突っ込み、少し大股で歩き出す。
帰って彼女に会う支度をする為に。
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