抒情歌
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清香は毎晩俺の名前を呼んだ。
呼び出された俺は、清香の前に現れ、真っ直ぐに向けられる感情を食い、腹を満たした。
「カンクロウ、大きくなったねぇ」
「清香のお陰じゃん」
始めは子猫程度だった俺は、今では大型猫の成猫くらいの大きさになっている。
この夢に対しても、以前は清香の想いだけが反映されていたが、今では俺の手を加える事も容易くなってきた。
トンっと足元を叩けば、一面彼女の好きな色の花で埋められた花畑にだってできる。
彼女の魂の一部を持っているし、彼女の夢の中で彼女の想いに触れていれば、大抵の事は知る事が出来た。
「わあ!カンクロウがやったの?すごい!」
「まぁな。これくらいなら簡単な事じゃん」
「わー!ふふっ、カンクロウ大好き!」
はしゃいで転げまわる清香に気を良くしながら、地面に横たわる。
俺の性質は本来、夢を作り変え悪夢を見せたり誘惑をするものだが。
こうして向けられる清香の瑞々しい味は中々美味なので、このまま彼女を喜ばせる夢を見せている。
好きなだけ花を摘んで満足したのか、清香は戻ってくると俺に寄りかかって花を見せびらかしてきた。
いっぱいあるなと頭を尾で撫でれば、嬉しそうに笑い声を上げる。
「カンクロウにもお手々があればなー、一緒にお花摘めるのに」
「ん?人の形になればいいのか?」
なれるの?と驚く顔に、頷いてから立ち上がる。
くるりと回ると、俺の姿は人の形に変化した。
一応清香の好む形を取り入れつつ、俺と分かるように耳と尻尾は残したままにしたが。
「どうじゃん?」
「わー……!すごい!カンクロウかっこいいね!」
感嘆すると、清香はよじよじと俺に登ってくる。
おんぶしてと言うので背中に担ぐと、耳を触ったり髪を触ったりともの珍しそうにしている。
そして不意に、ぎゅうと首に抱きついてきた。
「ふふ!決めた!私カンクロウと結婚する!」
思わず吹き出した。
こいつは本当に、突然何を言い出すか分からない。
「おかあさん、言ってたもん!結婚は幸せにしてくれる人とするのよって」
お花も出してくれるし、ネコ可愛いし、かっこいいし、カンクロウがいい!
そう言って、手に持った花をずいと差し出される。
それには、清香の魂の大部分が込められていた。
ごくり、と喉が鳴る。
しかし、これを受け取るなら、相応の代償が俺にも必要になる。
同等の魂の対価が。
「おい……本当に良いんじゃん?」
「うん!」
人間の魂を取りこめば、俺は確かに力をもっと増幅させられる。
ただし、それはこの魂を媒介にした物になるため、俺もこの魂からもっと離れられなくなる。
所謂、地縛霊みたいなものだ。
しかし、それでも俺みたいな低級な夢魔に、それは魅力的過ぎた。
そして俺は、その花を、受け取ってしまった。
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