シンデレラ
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「すまない。待たせたか」
「あ、油女さん!こんにちは」
待ち合わせ場所に行くと、先に着いていた彼女が笑顔で迎えてくれた。
「店は予約してあるので。じゃ、行きましょう」
案内する彼女と連れ立って歩く。
他愛もない会話をしつつ歩きながら、内ではまだ戸惑いがゆれていた。
彼女から連絡があったのは、合コンがあった翌日の事だ。
合コンがあった日は無事に帰りついたという連絡があり、安堵して返事を返した。
それで、関係も終わりと思っていたのだが。
油女さんにお礼がしたいので、都合の良い日にまた食事に誘わせて下さい、と彼女からお誘いがあったのだ。
断る理由もなく、トントン拍子に話も決まり。
今日、こうして2人で食事に来ている。
「今日はありがとうございます。ふふっ、この前もですけど」
「こちらこそ。誘ってくれて感謝している」
「油女さんのお陰で、あの日無事に帰れたので。どうしてもお礼がしたかったんです」
「あの日?何かあったか?」
首を傾げる。
思い当たる節がない。
そんな俺を見て、彼女は解散した後の事を話し始めた。
あの日、解散した後。
彼女は泥酔した友人を送ったあと、一人で帰路についていた。
そこで酔っ払いの男性複数に絡まれ、叫ぼうとした時。
虫が、彼らの手にわらわらと張り付き男達は逃げて行ったらしい。
彼女もその場は何がなんだか分からず逃げ帰ったが、後から俺に思い当たったのだと。
「油女さんに連絡しても、無事に戻れて何よりだーとしか返信されないですし。普通、こういう時ってちょっと自慢したり恩を着せてくるのに」
ふふっと彼女は笑う。
「油女さんってそういう返事は他の子にもしてないんですか?」
「あ、ああ。そもそも、あの後に連絡が来たのはあなただけだった」
「ふふっ、油女さんって、謙虚で紳士的ですね」
「いやっ……そんな、俺は……」
確かにあの日は彼女達の安全が心配だったから、虫をコッソリつけておいた。
帰ってきた虫のチャクラが少し減っていた為、多少何かあったのだとは思っていたが。
無事に帰れたのならばそれで良いと思っていた。
なるほど、モテる男というのはこういう所から関係を作るチャンスを広げていくのか……。
そこで、はたと気付く。
それならば、こうして俺を誘ってくれている彼女の、意図は。
にっこりと端正な顔で彼女は笑っている。
「油女さん、私、油女さんの事もっと知りたいです。あの日、あまりお話出来なかったですし。今日は、沢山お話聞かせて下さいね。勿論、嫌でなければ」
「ああ。その、俺で、良ければ……」
正直、今までの人生の中で、女性からこんなに俺を異性と意識した態度を取られた事など一度もない。
思わずごくりとつばを飲んでたじろいでしまう。
しかし、彼女はそんな俺の様子を訝しむ素振りもなく、ただ普通に会話を重ねてくれた。
口に運ぶ料理の事や、休日の事など。
彼女と話していたらあっという間に時間が過ぎていく。
気付けば皿も全て空になっていた。
「ご馳走様、ですね。ああ、美味しかった!」
「本当に、あなたの聞いた評判通り、美味しい料理だった」
手を合わせ、満足に笑い合う。
美味しいと聞いて前々から気になっていた店なのだと、彼女は話していた。
「ふふっ、お口に合ったようで何よりです。油女さんのお話も聞けて楽しかった〜。忍の世界のお話も面白い!油女さんの説明が丁寧だったので、とっても分かりやすかったです」
「そ、そうか……。楽しめたなら、良かった。なぜなら、俺の話し方はあまり人を楽しませる物ではないからだ」
「お友達にそう言われたんですか?」
ああ、と頷くと、彼女はからからと笑った。
「あっはは。確かに、ちょっとまどろっこしいかもですね!」
でも、と彼女はまっすぐ俺を見つめて笑いかける。
「ちゃんと相手に伝えようって話し方だし、個性的で面白いし。私は好きですよ、油女さんの話し方」
笑われて一瞬ヘソを曲げそうになった心が、大きく跳ねた。
彼女のやわらかく澄んだ瞳に、囚われて動けなくなる。
何か言わなければと口を開きかけて、けれど何も出ずにまごついていると、彼女がまた優しく笑った。
「油女さん、今日、ありがとうごさいました。とっても楽しかったです。よかったらまた、お食事とかお誘いしても良いですか?」
「あ、ああ。俺も、楽しかった」
「良かった!私、油女さんともっと仲良くなりたいです。また連絡しますね!」
「ああ。ありがとう……」
「はい!」
嬉しそうに笑う彼女がとても眩しくて。
とてつもない術を連続で食らったかのように、くらくらと頭が揺れる。
恥ずかしさなのか高揚なのか分からないが、叫びながら走り出したい衝動に駆られた。
その後は平静さを保つのに精一杯で、彼女を送って家に着いた頃には精根尽き果て、ベッドに頭から倒れ込んだ。
怒涛の勢いで、彼女と今日待ち合わせてから送り届けたまでの出来事が脳内を反芻する。
彼女の事で頭がいっぱいで、瞼の裏までチカチカする。
まるで彼女に脳を掴まれぐちゃぐちゃに揺さぶられているみたいだ。
それでも、ああ、ただ一つ分かるのは。
俺は、次また彼女に会うのを楽しみにしているという事だ。
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