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変装用の服一式を身に着け、街を歩く。
これをまた着るとは思ってなかったけど。
いや、期待してたのかな。
最近、自分で自分の気持ちが分からない。
ふとガラスに写った自分の顔もいつもとは別人で、鼻につく化粧臭さと相まって、眉をしかめた。
「あ、シ……っとと。おーい、お待たせー」
待ち合わせ場所に居たイケメン野郎に声を掛ける。
名前を呼べないのが結構面倒くさい。
琥珀の瞳を露にしている奴は壁に背を預けていたが、こちらに気付くとゆるく手を振った。
まあ、絵になりますこと。
おかげですれ違った女の子達に羨ましげな視線を投げられた。
「ごめん、待ったでしょ。暑い中申し訳ない」
「いや、そんなに待ってはいない。それよりも……その服、まだあったんだな」
「え。あぁ、うん。そりゃあるよ」
「服装、の事が実は気になっていた。何故なら、あの時はその考えなく頼んでしまっていた」
「え、もしかして捨ててるとでも思ってたの? やだな、あんたに買って貰った服捨てる訳ないでしょ」
「そう、か」
「そりゃそうだよ。それとも何、まさかあんたまだ私がそんな薄情者に見える訳?」
「いっいや、そんな事はない!」
ホントかー? と下から覗き込むと少しは耐えて見返してきたが、やがて気まずそうに視線をそらされる。
全く、相変わらず面白い奴。
笑いがこみ上げて来て、くつくつ笑う。
すると、つられてか、シノも仕方なさそうに笑いを洩らした。
「さて、行くか」
「ん。そだね」
差し出された手を自然に握る。
少しかさついた手のひらは割と大きくて。
初めて繋いだ時はやっぱり男の子なんだな位にしか思わなかったけど。
今は――
「……っ」
この想いを顔に出さない様にするので精一杯だ。
覚悟はしてたけど。
嬉しいけど素直に喜べない、喜んじゃいけないって、結構キツいな。
「よっし、それじゃ出発進行ー!」
「あ、おい、引っ張るな……!」
だから、さっさと遊ぶ楽しさで誤魔化してしまおう。
この嬉しさも、恋心も。
――今日で最後だ。
じゅうに。