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あれから暫く。
すっかり琥珀色の噂は小さくなった。
一時期、炎上する様に一部の女子が嘆いていたが、人の噂も七十五日。
あっさりと別の噂に塗り替えられた。
さすがは女子高生といった所か。
変わり身の早さには舌を巻くしかない。
さて、成功を収め、その後の経過も順調なヤツの作戦。
客観的に見てとても良い現状。
でも。
「あー、もう。でもとか思っちゃう辺りが問題だよ」
机の上で頭を抱える。
ついに、この時は来てしまったのだ。
もうアイツは自由に動ける。
恋人役は、もうお払い箱だ。
昨夜から何度も思い返す昨日の出来事が、また頭を過る。
昨日、アイツの家から帰る時、シノは唐突に謝って来た。
今まで付き合わせて悪かった、俺の都合で振り回してすまなかった、と。
「もう2人で恋人の振りをして出掛ける事はしない。だから、安心してくれ」
「――」
あそこで、私は何を言えば良かったんだろう。
胸に開けられた風穴を、琥珀色の虚無を、何と言えば塞げたんだろう。
それでも、今が壊れるのが怖くて。
私は、茶化して笑って、目を瞑った。
「あははは! ホントねー。予想外に上手くいっちゃってさ、何の心配も要らないし」
驚いた後、ほっと眉と目尻を下げたアイツに何だかイラついて、もやもやした。
今度来る時には手厚くもてなせ、とか言って、早々にその場を去った。
結局今後の関係縛ってるし、とか、いやでも友達まで止める訳じゃないから、とか。
ぐるぐる頭を回る自己嫌悪と言い訳を抱えたまま。
昨日の今日なのに、もう持て余している。
シノの方はそんなつもりも無くて、ただ、必死で助けを求めただけだ。
それなのに、私は割り切れてるつもりで、全く、今も割り切れてない。
こんな、ミイラ取りがミイラになるなんてのは。
シノにとって迷惑な話だ。
「っあー、もう、馬鹿」
らしくない。
何でも適当に済ませて生きてたのに、何で、こんな、一生懸命に悩んでるんだろう。
さっさと捨てろ、こんな想い。
思った所で消える訳もなく。
この前より強くなった胸の痛みに、少し唇を噛んだ。
ろく.